第一回朝飯争奪戦
清々しい朝。差し込む日差し。焼けたトーストにジャムをのせて俺の朝が始まる。
「いい匂いぃ~」
パンの匂いにつられて茶髪の居候が布団から顔を出す。
「おはよう美月。俺は学校だから後30分したら出かけるよ」美月を一人でこの部屋に置いていくのは正直嫌だが学校をサボるわけにはいかない。
「…あれ?私の朝ご飯は?」
当然用意してない。
「幽霊も腹が減るのか?」
パンをかじりながら問う。
「私は幽霊じゃないって言ってるでしょ!今度言ったらぶっ飛ばすわよ!」
右手の拳を胸のまえで握りしめてにらみつけてくる。
「…わかったよ…お前の分も焼いてやるからちょっとまて。」そういってパンを取りに行くがさっき焼いたパンでこの家にあるパンは最後だった。
「すまん。パンがもうなくなっちゃったみたいだから今日は我慢してくれ」
俺がそう言うと美月が無言で近づき俺のパンに手を伸ばす。
しかしそうはさせない。美月の腕を掴みパンを守る。
「俺の朝飯になにをする気だ?」
「これは私のよ。あんたが我慢なさい。」
「なら、公平にじゃんけんで決めようじゃないか…」
「…いいわよ。勝負してあげる」
朝ごはん争奪じゃんけん一本勝負がはじまる。
じゃんけん。それはなにかを決める際、一般的によく使われる勝負である。
かかったな…俺はここのところ3ヶ月ジャンケンに関して無敗。社会の厳しさってやつをこの小娘に教えてやる。
「最初はグーッ!ジャン・ケン・ポン!」
美月はグー。流星はパーを出した。
「はっはー!俺の勝ちだな。俺にジャンケンで勝とうなんて100年早…」
勝ち誇る俺の左頬に衝撃がはしる。
美月の出したグーが軌道を変え流星の頬に見事な一撃をかます。
流星の体は綺麗な円を描きながら宙を舞った。
「勝負の最中に油断するなんてよくないわね!ジャンケンは命懸けよ!」
そういって美月は俺の食べかけのパンをかじる。
そんなジャンケン聞いたことねぇよ。
こうして俺の朝飯は理不尽にも奪われたのだった。