第二十八話 魔神の鎧・後
本文はあってもなくても変わらない内容と言う駄文。
あとがきが本文と言ってもいい内容です。
「冗談じゃないわ! 信じられない! 何考えてるのよ、馬鹿なの? 死ぬの? そのまま天国行っちゃって、アタシ達を見守ってくれちゃったりするの!?」
リンにこっぴどく怒られた。
やはりというか、狙ったのだから当然と言うか、俺が死ぬんじゃないかと思ったらしい。
「心配してくれてありがとな」
「ーーッ!! 解ってない! アンタ何にも解ってないでしょ! アンタが死んだら、アタシの友達が泣くじゃない! その友達に頼まれてるんだから、当たり前でしょ!」
「何? お前は泣いてくれないの?」
「アタシは泣かない」
「酷いな」「酷い女ですよ」
何故かシュウがあわせて来た。何か思い当たる節でもあるのだろうか。
「アンタ等、本当に女心が解ってない。……レーンがアンタ達と一緒に居たら、なんて言うかな」
「安心しろ。その時はその時、お前のように粗忽に扱わないぞ」
「アンタなんかこの瓦礫に埋まって死ねば良かったんだぁ!!」
どうやらリンの俺達への好感度はあまり高くないようだ。
リンがひどく暴れたらしく、シュウの顔には引っ掻き傷と歯形が付いていた。
引っ掻き傷はともかくとして、顔に歯形が付いているのは何と言うか、羨ま——けしからん。リンも可愛いタイプの女の子だ。シュウの顔に歯形、ってことは——ねえ。
俺が必死で戦ってる間に、何をやっているのだこの弟子は。
まあ、シュウもシュウで戦っていたようだけど。逃げろと言った俺の命令と、戻れと五月蝿いリンの命令の間で。
で結局、『摩天楼』が崩壊するのを見た後、急いで戻って来た。倒壊に巻き込まれないように逃げろと言ったのが解ったようだ。探しに行く手間が省けて良かった。
「……で、これどうするつもりよ?」
呆れたようなリンの言葉が指し示すのは、『摩天楼』の瓦礫。高さ三千メートルの塔の残骸。
勢いで作ったが、改めて見てみると、凄く邪魔だな。
「いや、どうしようもない。魔神伝説の記念にこのままにしておこう。邪魔にもならないだろ?」
「そりゃまあ、そうだけど……」
街道は地盤沈下、木々は倒れ、地震でもあったような(実際『摩天楼』が倒壊した時はかなり揺れただろう)状態だ。だが、元々通行する者もいないのだ。あってないような道、良いじゃない。
「だけどそれじゃ、どうやって先に進むのよ?」
「……俺が無事な道まで空飛んで行くか」
「は?」
「師匠! また新しい魔法創ったんですか!?」
新しいのかどうかは知らないが(恐らく戦乱時代には存在していたんじゃないかと思う)、どうやら空を飛ぶ魔法とやらは知られていないらしい。
「まあな。ちょっと休んで体力回復したら出発するから、それまでに荷物まとめといてくれ。二人を抱えて飛ぶから」
何故だか歓喜の声を上げる二人を尻目に、俺は鎧の残骸を見に行く。
魔神伝説、そう呼ばれるだけあって、魔王の契約者の俺よりもより『魔法』を理解していたのだろう。俺にはエネルギーを吸収する『魔法』などは思いつかなかった。
砕けた鎧の破片を拾い上げるが、鎧に触れた時に感じたあの虚脱感は無く、どうやらもはやただの物質に戻ったようだ。
……魔王が言いたかった事がわかった。
ああ、なんていうか本当、『創造魔法』はチートだよ。これだけの力を与えられたら、無血で戦争終わらせられなかったら俺が無能みたいじゃないか。
魔王の語った本当の『魔法』。
それは、『魔の法則』だ。
例えばシリーズに置ける超常現象の概要。
《スキル》、《魔術》etc
未知のエネルギー要素、マナの存在を仮定し、それを使用したエネルギー保存則が適用される現象。
例えば、火をおこしたり、雷を生み出したり、風を生み出す現象。
《『魔法』》、《能力》etc
マナの存在を仮定しようと、エネルギー保存則以前にこの世のいかなる法則にも捕われず、独自の法則にのみ縛られる現象。
例えば、相手の容姿をコピーする、絶対服従の命令を下す現象。
ただし、魔法は大域的な意味で用いられる。
そのため、魔術と『魔法』が混在している。