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第二十四話 夢と現実の狭間

残酷描写あり。



 それは、本当に一瞬の出来事だった。



「ほら、ここなら星がよく見えるでしょ? だから私はここが好きなの」


 彼女はそう言って俺に笑みを向け、俺はそれに答えるように、夜空へと視線を向けた。

 町から少し離れた丘に有る展望台。曇りない夜空に星達が輝いていた。


「確かに星はよく見えるけど、それだけが理由なのか?」


「ええ。都会じゃ見られない景色でしょ? 都会では、街明かりが空気中の粒子に乱反射して空を明るくしてしまうから、あまり星空は見えないの」


「……へえ、物知りだな」


「まあ、田舎の空は空気が澄んでいて星がよく見えるってことよ」


「それで、君はどうしてこんな田舎に来たんだ?」


 何気なく気になっていた事を訊いてみると、彼女は俯きしばし考えて、多少の照れを見せて答えた。


「……最期に綺麗な星が見たかったから、かな?」


「……え?」


「冗談。そんな困ったような顔をしない。……さてと、遅くなっちゃうから帰ろう」


「……………そう、だな」



 俺は彼女の名前を知らない。何も知らない。

 きっと彼女は、俺でなくてもこんな風に話しかけただろう。

 たまたま、席が隣だったからこうなったのだ。

 俺以外の誰でも、彼女の取った行動は同じだろう。

 それでも、俺には特別だった。



 あの日、二人で見た夜空が、一瞬だが脳裏に甦った。



 そして俺は知った。

 世界は誰にも優しくなど無いと。

 神様は非情に非道だと。












 踏切。

 俺と彼女は、遮断機を間に向かい合っている。距離は十メートルにも満たない。

 だが、その距離は永遠に埋まりはしない。


「———————!!」


 俺の叫びは、警報機の音によってかき消される。

 彼女は泣いていた。

 そして、俺に向かって笑いながら何かを語る。



 だけど、それは、俺には聞こえない。



 聞こえない。どうしてそんな悲しそうな顔するんだよ。


 笑ってるのに、悲しそう。


 俺は、—————————。







 グ、シャ——————————————————————————————







 俺の目の前を、当然の如く列車が通過した。


 一瞬、全ての音が消えた。


 びちゃびちゃと、俺の身体に赤い液体と何かが降り掛かった。

 視界が真っ赤に染まる。顔に手を当てれば、べとべとした何かが手に張り付いた。

 

 それは、酷く温かかった。






 名前を知ったのは、新聞の広告だ。

 朝起きて、少女の名前と、二度と会えない事実を知った。

 もっと彼女を知りたいと思った。

 たったの一日だけど一緒にいて、楽しいと思えた。

 もっと星空を見ていたいとも思った。

 ただ、一緒にいるだけでも十分だと思った。




 だが、それすらも、世界は叶えてくれなかった。




 彼女の葬式に参列して、始めて人の死と向き合った。

 初めて知った新しい心の痛みに、体が震えるのを感じた。



 だが、涙は流れなかった。

 


 彼女が何故死んだのか、俺は調べて知った。

 あの頃が、生涯で一番努力した日々かもしれない。

 あまりにも理不尽過ぎて、納得出来なかったのだ。


 彼女は大手薬品会社の社長令嬢だった。

 だった。

 彼女の家は、後進国のアフリカなどに無償で技術支援をしていた。

 そして、技術を売って資源を得ようとしていた国から恨みを買った。

 彼女の両親はアフリカへの旅路で消息を断ち、未だ見つかっては居ない。

 身よりの無くなった彼女は、親戚の家へと移った。

 しかし、その移った親戚の家でも不慮の事故に遭い、彼女は一人になった。

 その後、親戚の家をたらい回しにされ、ここに行き着いた。

 そして、その間にも彼女の身近で何人も人が死んでいた。

 

 解ったのは、彼女は精神的に相当病んでいたと言う事。

 

 俺の怒りは、理不尽な国へと向かった。

 こんな国は間違っている、と。


 仕事に就いて、金を稼いで終わるような普通の人生を送りたくはなかった。

 けれどそれに具体性はまるで無く、どうしようかと考えていた。


 嫌な言い方になるが、彼女の死は渡りに船だった。


 俺の決意と理想が、そのゲームへの参加を可能にした。



 これはゲーム。



 理想を叶えるための、人生ゲーム。




問題の先送りばかりで、今の政治家は何がしたいのかよく分かりません。

私腹が肥やしたいなら社長でもやれば良い。

国民の税金を使わないでほしいです。


感想・指摘お待ちしております。

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