第十七話 決断は銃声と共に
魔法と科学の対立、それは単なる比喩でしかなかった。
二つの国が戦争になる理由は、魔法が妬ましいという事ではなかった。
むしろギルバート帝国は人体実験をしてまで、魔力が無い人間にも魔法を使えるようにしようとしていた。
魔力は生まれた瞬間からその有無が決められており、努力でどうにかなるものでは無いと言う。だから、細胞レベルでの問題と判断し、人体実験を行なった。
魔法を使えるようになれるなら、と人々は協力する訳だ。
その成果は知らないが、とにかく魔法は両国で認められているのだ。
ならば、戦争は、何故起こるのか。
それは——。
☆ ☆ ☆
「ナイン……」
深夜、俺の目の前には一人の少年が居る。背後にはアイラが、部下を引き連れて銃を構えて立っている。
場所は街中の袋小路。少年の背後には絶壁。
昼間、国境付近をうろついてた少年は、見回りをしていた軍人に怪しまれ、問いつめようとした所逃走。現在、俺達に追いつめられている。
そして俺は、選択を迫られている。
「ナイン殿、お決めくだされ。我々はあなたをこの国の人間として正式に迎えたい。だから、その薄汚い魔族を! 我らが敵を血祭りに上げてください!」
俺の目の前にいる少年は魔族。
この国は、魔族を嫌悪していた。
それが、二つの国が戦争になろうという理由。
ラザウェル王国は魔族と共存しているが、ギルバート帝国はそれを許さない。
人種差別ではなく、種族差別。魔族は人ではなく、魔物だと。共存すべき生き物ではないと。
俺は問われている。
ここでこいつを殺さなければ、俺は背後から撃たれ、完全にギルバート帝国の敵となるだろう。
ここでこいつを殺せば、俺はこの国の味方となって魔族討滅に加担する事になるだろう。
だが、それでいいのか?
魔族と人間の違いなど、耳が尖っていて不思議な力を放っているか、その程度のものだ。
ウサギや地竜を殺し、それでも人だけは殺さないと俺は言った。
だから俺に問われているのは、こういう事だ。
魔族は人であるのか?
……答えは、決まっている。
俺は右手に銃を創造し、それを握る。
少年の顔は強張り、膝は震えている。死ぬのは怖いんだろう。
引き金は、酷く重く感じた。
いずれにしろ、人は死ぬ。
種族差別が根源では、戦争なんて止めようも無い。
そろそろ俺も割り切らねばならないのだ。
銃声。
もう、決めた事だ。今更引き返せない。
準備万端ではないが、それでもいい。
少年の頭が弾け、その体は倒れた。
「お嬢様、これでよろしいんですか?」
「…………ええ。よくやってくれたわ、ナイン」
その声を聞き、アイラの部下はほっと溜息を吐き、銃を下ろす。
幕が開いた。
アイラの泣きそうな顔が、印象的だった。
下準備くらいは整っているようだ。
この調子だといつまで経っても作者の書きたい部分に辿り着けないので、ストーリーのスピードアップ。
急展開すぎるかもしれませんが、時間が空いた時に付け足して行こうと思いますので、あらかじめご了承ください。
感想、意見、指摘お待ちしております。