第十二話 間のお話
次のストーリーを書くための、間のお話。
リースが騎士団に入る事を承諾し、それで話は終わりとなった。
レーンとキースが先に外へと出る。
「それと……最後に一言良いですか?」
と、少年が不意にリンを呼び止めた。
「何?」
一番あの三人の中で、リンが適当だったのだろう。
少年は笑みを浮かべ囁くように言った。
「彼女は俺の家族も同様。彼女が傷つけば、どうなるか解るだろ?」
そう言って少年は、ピッと指を大理石の床へと向ける。
瞬間、大理石の床が削れた。
そして、少年が床に触れれば、それは元通り。
「あ、あはははは。解ってる解ってる」
リンは、自分が引きつった笑みを浮かべている事に気付きながら、レーン達の元へ焦ったように駆けつけた。
「じゃあリース。達者でな」
「…………」
リースは無言で少年に頭を下げ、そして三人の元へと駆けて行く。
少年は笑みを絶やさず四人を見送る。
レーンは怯えたリンに囁くように言った。
リースに聞こえないように。
「彼の言葉には、彼女が彼の人質と成り得ると言う意味も有るんですよ?」
瞬間、リンは理解した。
彼女が無事騎士でいる限り、彼はこの国に対して敵意は無い。
彼女が騎士としていれば、奴隷から騎士となった事で、この国の奴隷達の希望となる。
もしそんな彼女を快く思わない者が彼女を襲えば、彼は躊躇無く敵意をむき出しにする。
だから、私達に彼女を守れと。
俺を敵に回したくなければ、この子を守れと。
(本当にこの国を試してるのね。何様のつもりよ……ったく)
「でも、そこまでして旅に出る必要って何? 一所に留まりすぎた、ってどういう意味?」
「……………」
リンは首を傾げ、それにはレーンも答えられなかった。
「……ナイン」
リースはその理由を知っていたが、答えなかった。
☆ ☆ ☆
俺は平和が好きだ。
争わずに済むのなら、争わない結末をなるべく選ぶ。
……そのとき理性があればの話だが。
かっとなっていたりした時は、その保証は出来ない。
俺がこの世界に来てすぐ、俺は地竜を殺している。
そのとき、俺は自分の手に余る力を手に入れたと思った。
『創造魔法』は、空気中のマナから魔法を創るのと、物質を分解して新たな物を創り出す二種類が有る。
正直、怖かった。
俺は人を簡単に殺す力を手に入れたのだ。
だから一週間も森に籠っていたのだ。
間違っても人を殺さないように、魔法の力加減を理解するために。
ギルバート帝国が戦争をしようというのなら、俺はそれを止めたい。
ある騎士のように言えば、『自分は内側から変えてみせる!』という事だ。
凄く失敗しそうな話である。
俺自身も、失敗すると思っている。
そんなに世の中甘くはない。
戦争が起こってくれた方が、天下統一を目指す俺としては楽だ。
なんとかして勝ち残った国の頂点になり、それで両方の国民に支持されるようになればソレで終わりだからだ。
そのためには、いかにも勝ちそうなギルバート帝国を一度は見ておく必要が有る。
俺の想い描く国でなかったその時は、潰させてもらうだけだ。
ラザウェル王国には少々知り合いを増やしすぎた感が有る。
誰かのためになら、俺だって戦えるだろう。
誰も殺す気はないが。
甘いと言われようと、俺はそれを貫く。
浴場の方はグレンが店長をしておけば、争い事にはなるまい。
医療室は『創造魔法』で治癒魔法の魔石を創っておき、フーに渡しておいた。
最悪、瞬間移動で戻ってくれば良い。
俺はグレンもフーも、この国の人を良く知らない。
信じていい者かどうかわからない。
だから、試しているのかもしれない。
いや、違うか。
俺はこの国の人を信じてみたいだけか。
色々すいません。
なんか適当な気がします。
次からちゃんと書きます。