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第八話 調査の裏

長い割りにストーリーは一切進まないと言う体たらく。


 よし、これくらいで良いだろう。

 俺は湯に手を入れて湯加減を確かめ、頷く。

 恐らく四十一度くらい、適温だ。

 これでだいたい完成、長かった。



 俺の家にある風呂は、『創造魔法』で創った温水を張っただけの簡易な物だった。

 最初は温泉を掘ろうかとも思ったが、そんな都合良く見つかるとも思えなかったし、掘る道具も無かった。

 元の世界から地図を持ち来んで、それで温泉がある場所を掘れば見つかるとも思ったが、その場合深く掘らねばならぬだろう。


 正直面倒だった。


 と、そこで思いついたのが『魔石』と『創造魔法』。

 温水が創れる『創造魔法』ならば、温泉を創れると俺は考えた。

 温泉に含まれる成分を調べ、温水にそれを混ぜれば良いだけの簡単なお仕事だ。

 となると、必要なのがこの世界の温泉のサンプルだ。



   ☆ ☆ ☆



 『ルーアン盗賊団』とコンタクトを取った次の日の早朝。


 『ルーアン盗賊団』から聞いた情報と、異世界チートの音速を超える早さ、それに元の世界の正確な地図のおかげか、意外と簡単に天然の温泉は見つける事ができた。

 残念な事に地形はだいぶ変わっていたが、確かにその地図と情報通りの場所に天然の温泉が湧き出ていた。


 ついでに、これまた強そうな竜もいたが。


 そこは完全に無視し、焼酎のボトルに温泉を汲み取ってさっさと帰宅。

 無駄な殺生はしたくない。

 帰って来てそれを調べるのだが——この日から試行錯誤を繰り返す事になった。

 同時進行で浴場まで建てなければならないため、じっくりと調べる時間がなかったからだ。

 『ルーアン盗賊団』に奴隷を買い占めるように頼み、自分は最近の日課になった地竜の部位で創った武器を売り歩く。


 地竜は、この世界に来てすぐに襲いかかって来た奴で、分別の付かなかった俺の『創造魔法』でいきなり分解された可哀想な奴だ。

 ただ分解するのに空き足らず、無意識のうちに俺はそれを武器や防具へと作り替えてしまったのは、なんというか、ハンターの性だろう。

 地竜の武器はだいたい一個金貨数十枚(数千万円相当)で売れた。

 やけに武器屋や防具屋が金持ちだと思ったら、どうやら戦争が近いかららしい。

 その時点で俺の軍資金集めと言う目的は達成されたと言える。

 だが、俺が欲しているのは金ではないのだ。


 お昼時に、二人分のおにぎりを頼み、ついでに今後の事も考えて、明日から三十人分の昼食を頼む。

 不思議そうな顔をするおばちゃんに、一ヶ月分の前金として金貨一枚を渡すと、おばちゃんは顔を輝かせて、腕が鳴るね〜と言っていた。

 その後、浴場と従業員の宿舎を創るため、素材の大理石を摂りに山に向かう。

 ここで、俺は新たに考えついた事を実践してみた。


 『創造魔法』で亜空間を創造し、そこに素材を入れる事だ。

 これができるようになれば、簡単に何でもその場で創り出せるようになるだろう。


 結果から言えば、それは成功と失敗の狭間だった。

 俺の想像した亜空間は東京ドーム程の物だったのだが、出来上がったのは普通の家くらいの広さの亜空間。

 結果、俺は何度も大理石のある山へと行ったり来たりを繰り返すはめになった。

 栄養ドリンクで腹がパンパンになった。

 魔法を使えば腹が減り、飲まなければ飢えて死ぬ、でもお腹は一杯。

 どんな苦行だよ。


 『ルーアン盗賊団』の仕事が早く、さっさと奴隷を連れて来てしまったからこうなってしまった。

 さっさと宿舎を創らなければ、彼らは野宿するはめになる。


 さらに怪我をしていた人が居たので、治癒魔法と言うのを掛けてみた。

 一瞬で怪我は治り、神様でも見るような目で見られたが無視した。気恥ずかしい。


 苦しみに耐えて一日目、終了。


 なんとか、食堂付きの宿舎は完成した。

 なんかまた神様でも見るような目で見て来たので、ただの異国の建築士ですと断っておいた。

 この日を乗り切れば楽になる……はずだったのだ。



   ☆ ☆ ☆



 二日目、再び山の往復。

 昼には奴隷から従業員へとジョブチェンジした人達のために、定食屋で料理を受け取る。

 従業員(予定)の人達には籠を編んでもらい、『ルーアン盗賊団』には『魔石』の購入を指示した。


 『魔石』


 魔法があるんだからあるだろ、と思ってリースに聞いてみると、やはりそれはあった。

 火・水・風・雷・土……などの属性を秘めた魔法の石。

 こちらの世界で科学が発展しなかった要因の一つだろう。

 魔石は、刻まれた動作を行なうだけの簡単な物で、プログラムみたいなものだと考えるのが解りやすい。


 例えば、俺が買うのを指示した光の魔石。

 それは一定の暗さになると光を生み出す、というだけのものだ。

 一定の暗さになると光を生み出す、というプログラムがされた石だと考えれば良い。


 俺が他に買うように指示を出したのは、一定の温度に保つ火の魔石、水の循環と浄化をする水の魔石。

 これだけで温泉のシステムはだいたい完成。

 こんなに便利な石が有れば、そりゃ科学は発展しない訳だ。

 効力が長続きしないらしいが、そこは『創造魔法』で創り直せば問題有るまい。

 


   ☆ ☆ ☆



 三日目。

 持って来た大理石で施設を創造。

 最初に荒削りな感じで全体を創り、内部に入って細かい部分を創って行く。


 最近『世渡り』で持ち込むのが、栄養ドリンクメインになっているのが気がかり。

 本日は大量のスリッパと椅子と桶、同じく大量の石けん、そして栄養ドリンク。


 納得いく感じにできたのが昼で、王都まで行き料理を受け取る。

 戻って来て食事をし、早速、温泉を創造して湯船を満たしてみるが、最初は普通の温水だった。

 ちゃんと魔石が作用するのか調べるためと、店長としての粋な計らいとして、従業員(仮)を入浴させる。

 リースに女性陣は頼み、俺も男性陣に入浴の仕方を指導。

 石けんが目に入ったとか、シャワー無しで髪を洗うのは大変だとか、色々問題は合ったが、皆満足してくれて一安心だった。

 特に女性陣からはものすごく感謝され、この世界でも女性は綺麗好きだなと思っていた。

 その頃から、なぜか俺を『ご主人様』と呼び出す奴が多くなっていたのは余談。


 そしてその日から、従業員のマニュアルを作成して、それを練習させた。

 俺は施設の細部を創り直し。

 シャワーを設置したは良いが、どうしても出っぱなしになる。そういう類いの水の魔石が有れば良いのだろうが、生憎そんな物はない。

 というか、怒られた。

 グレンと言う俺が吹っ飛ばした『ルーアン盗賊団』のリーダーが、


「旦那! 魔石はそんなに数が有る訳じゃねーんです。なんでも魔石に頼るのはまずいかと」


 と言われ、しかたなくシャワーに関してはそれで断念した。


 だが、どうしても湯水は温泉にしたかった。

 温泉がただの温水でしか無ければ、(わざわざ危険を冒してまで街道にあるここに来るような)魅力に欠けると思えたのだ。


 そして栄養ドリンクと肩を並べて徹夜。

 何度も失敗して、やっとこちらの世界の温泉を生み出す事ができた。

 こちらの世界の温泉は、水にマナが含まれた物だった。

 浸かっているだけで魔力が回復して行くと言う、とてもすばらしい効果があるのだ。

 竜が守るように住んでいただけある。

 


   ☆ ☆ ☆



 そして翌日、昼飯を受け取ったついでにそれとなく宣伝。

 定食屋のおばちゃんに、出迎え付き無料だから知り合いを好きなだけ誘って来てくれと頼む。

 迎えの時間は夕方頃、城壁の側と伝えて俺は一度ここに戻って来て、従業員がちゃんと仕事出来るか試験する。

 何故か皆俺の事を『ご主人様』と呼びたがるのだが、『店長』と呼ぶように矯正した。

 『ルーアン盗賊団』の面々には、街道沿いの警備をしてもらい、一応の安全を確保。

 ここに来て帰りに襲われました、などと評価を下げるような事はあってはならない。


 そしておばちゃん達を馬車で迎えに行き(恐ろしく尻が痛くなったが、平然な顔をしてみせていた)、十人くらいのいかにもお喋りなおばちゃん達を連れて来た。

 浴場の見た目が豪邸みたいで『くわばら、くわばら』と言い出したおばちゃん達に、気分だけでも貴族を味わってほしいと言って誤摩化す。

 ローマの公共浴場をイメージしたのだが。

 中に入ってもそんな調子が続いたが、そこはあれ、従業員に任せて逃げさせてもらった。


 その間に俺は、リースに治癒魔法を指導。

 温泉が傷に沁みるかどうかは知らないが、念のためだ。

 のぼせるかもしれないし、ここは一応療養施設を目的として作ったからだ。

 魔法を使うには、その属性の魔力を持たねばならないらしく、治癒魔法は光属性で、該当者はリースしかいなかった。

 指導なのだが、俺は魔法の原理を知って使っている訳ではないので、半ば独学で治癒魔法を習得してもらう事になった。

 俺が教えたのは『魔法とはイメージ。治癒魔法を使う時は、その人が元気になった様を想像して魔力を流し込む』という適当なことだけだった。


 その結果、どうしてなのかリースは治癒魔法を成功してしまったのは謎である。

 思いの強さじゃなかろうか。


 後で知った事だが、どうやら千年くらい前に同じような魔法があったとか。

 『戦乱時代』と呼ばれる時代で、今よりも魔法や科学が進歩していたらしい。

 その時代に激しく争って、文明レベルが下がったみたいだ。


 おばちゃん達はのぼせる事無く、若返ったような顔で出て来て、とても満足だったと言ってくれた。

 そして街まで送ると、宣伝するよと笑顔で言ってくれた。


 そして、おばちゃん達の宣伝効果は恐ろしい物で、翌日から予想外に多くの人が来るようになったのだ。

 朝風呂に入る人から、空いている昼に入りに来る人、仕事上がりにさっぱりしに来る人。

 従業員が二十人ほどいて助かったと思った(残り十人は『ルーアン盗賊団』である)。

 特に、初めてのお客は入浴の仕方が解らないので、従業員を付けて入浴の指導をしなければならないのが厳しかった。

 客層が町人を狙っていたため、武器の持ち込み禁止はすんなり受け入れてもらえた。

 土足厳禁と言うのは最初こそ怪訝な顔をされたが、そこは俺の日本人として譲れない点で、なんとか理解してもらった。



   ☆ ☆ ☆



 そして、今日。

 明らかに客の入りが悪い。


 俺がいつもいるのは医療室で、ほとんどそこに引きこもっているのだから関係ないのだが。

 今は医療室の奥にある、温泉を管理している部屋にいる。

 唯一の木で作られた部屋で、付け足しみたいな印象を受けるだろう部屋だ。

 設計ミスでは無い。断じて無い。絶対違う。間違ってない。


「店長。……ちょっとよろしいですか?」


 と、天井から声が聞こえて来た。

 これは『ルーアン盗賊団』の一人、唯一の女性、ルカの声だ。

 隠密に特化していて、情報収集兼連絡役になってもらっている。


「なんだ?」


「……王都トウキョウでの町人の出入りが禁止されています。それと、王都から二人、こちらに向かっています」


「理解した。もういいぞ」


「はい」


 返事と共に気配が消え、さすが隠密だなと感心してしまう。

 忍者という単語は無いが、あればきっとそれに該当するだろう。

 で、町人の出入りが禁止されているにも関わらず、王都から来る二人か。


「……そろそろ来ると思っていた」


 恐らくそれは、王家に仕える騎士だろう。

 俺の容姿が目立たない事を一週間で理解したが、しかし俺も色々とやりすぎた。


「姫様助けたのは間違いだったかな……。いや、あれで食べちゃうなんて選択肢は無いだろ」


 ウサギからどうして人に戻ったかは解らないし、戻らなければ食べていたかもしれない。

 おお怖い怖い。


「黒髪しか情報はないが、定食屋のおばちゃんはお喋りだからな。こりゃちょっとまずい。いや、ただ単にこの浴場の調査かもしれないな」


 しかし、……騎士か。

 自分の目で直接見てみたいが、ほぼ一般人の俺が偵察をしては気付かれてしまうだろう。

 俺という人間を重要視しているか解らないが、していないと踏むのは少々安易だろう。

 ……ん? いや、大丈夫か。

 俺は一度外へ瞬間移動し、『創造魔法』で望遠鏡を創り出し覗き込む。


 街道上には、報告通り二人の人影。


 一人はごてごてした、いかにも騎士と言う格好。

 つんつんした金髪で、何やら顔を綻ばせている。

 偶然にも、俺が先日売った剣と盾を持っている。


 もう一人は、黒のローブに身を包み、杖を持ったいかにも魔法使いっぽいの少女。

 ショートの赤毛で、何やら仏頂面。

 ロリっぽい。……なんだって俺の周りにはそういう子ばかり現れるのだろう。


 望遠鏡は手放した瞬間、霧散し跡形も無く消える。

 必要になったら、その都度創り出せば良いだけの話だ。


 再び瞬間移動で医療室に戻り、本来なら患者を寝かすはずのベッドで寝息を立てているリースを起こす。


「リース、仕事中だぞ」


「ほぇっ!? す、すいません。あまりにも暇で……」


 口元の涎を拭きながら、リースはぺこぺこお辞儀をする。


「冗談だ。魔法は体力使うんだろ? 今は休んでて良いから」


「いえ! いつ怪我人が来るか解らないので、起きます!」


「そうか。じゃ、ちょっとお仕事頼もうかな」


「何ですか!?」


 寝起きでハイのリースに、俺は少し考えて頼んだ。



「プリンを三つばかり買って来て」



 俺にはどうにも、嫌な予感しかしなかった。

 それと、栄養ドリンクは飽きていた。



   ☆ ☆ ☆



 扉越しに騎士達を見ようとは思わなかった。

 そんな事をして怪しまれては元も子もないし、何よりルカの次の報告の方が厄介だったからだ。


「盗賊紛いの戦士……ねえ」


 それがコチラに向かってくる事からして、あまり良い状況とは思えない。

 盗賊であればグレン達に言って追い払う事もできるが、戦士であると微妙だ。

 純粋にお風呂に目を輝かせて来てくれたのかもしれない。

 それを盗賊が追い払えば、街道の安全性が疑われてしまう。

 騎士達がいなければ俺自身が出迎えて、良いように対処するのだが……。

 もしくはリースに頼んで魔法で追い払ってもらうと言う手も有るが、のぼせた魔法使いの処置で治癒魔法を使って今は寝ている。

 足の悪いおじさんを治療してすぐだったため、疲れたのだろう。

 起こすのも悪いし、どうしたものか……。

 と。



「おい姉ちゃん、武器を取り上げるだぁ? 誰の許可とってんな事言ってんだよ! アァ!?」



「……はあ」


 騒がしい奴が来てしまった。

 緑色の髪が特徴で一番機転の利くフーが対応しているみたいだが、こいつ等は茶化すかバカにするか、金を巻き上げるために来たのだろう。

 声の質から温泉を楽しみに来たのではない事が解る。

 このままではフーの身が危ないので、店長として俺は医療室から出た。




「すいません、うちの従業員が何か粗相をしましたか?」




 失せろマナー知らずの碌でなしが!

 という内心を可能な限り隠して、営業スマイルで男達に話しかけた。


「ごしゅ——店長! こちらのお客様が……」


 フーがまた『ご主人様』と呼びそうになり、慌てて『店長』と呼び直した。

 どうして皆、俺の事を『ご主人様』と呼びたがるのだろう。

 もう奴隷じゃないと何度言い聞かせた事か。


「フーは下がってて。……それで、お客様。一体どのようなご不満が?」


「ああん? 誰だお前?」


 男が睨みを利かせるが——ただの人間には興味ありません。

 俺は凛として声高に、ちょっとだけかっこつけて名乗る。



「店長です」



「…………。がはははははは!!」


 酷いや。

 結構勇気出して言ったのに、笑う事無いじゃないか。

 はあ、恥ずかしい。


「店長さんよ、俺達は戦士なんだよ。戦士に取って武器は魂、一心同体も同じなんだよ。それをさ、預けろと? そりゃ無理な話だろ」


 幽体離脱はできないと言いたいのだろうか。

 そう言えば、俺の『世渡り』って幽体離脱じゃないだろうか?


「そうですか? 他の皆様は皆預けてくださりますが」


「そりゃ腑抜けだな」


 そう言い捨てる男に、俺は逆に言ってやる。


「そうですか? むしろ、このような場でも自分の武器を手放せない、強さが武器に依存しているあなた達の方が腑抜けのような気がしますが」


「っ!!」


 後ろの方で騎士様が何か言っているが、気にしない。

 対して男の額には青筋が見える訳で、言い過ぎたかもと、少し反省した。


「ガキ、自分の立場が解ってんのか?」


 でも毒舌を止める気はなかった。


「あなた方こそ、そこに立たれると営業妨害になりますので、武器をお預けにならないなら早々に立ち去って——」


 

 瞬間、男が俺を蹴り飛ばした。

 『創造魔法』で俺は肉体を強化しているため痛くないが、派手に壁にぶつかった。



 一拍遅れて、フーが悲鳴を上げた。

 心配かけるのも心苦しいので、俺は辛そうに演技し、膝をついてから立ち上がる。

 そこで、一瞬にして今後のプランが立てられた。

 肉体強化されているからこそできる、問題の解決方法だ。


「おい、これ以上舐めた事言ったら殺すぞ?」


 俺はそんな男を見据えて、こう言った。



「すいません! お金ならいくらでも払いますので、どうか命ばかりはっ!」



 そして土下座。


「「「……………………」」」「「「……!?」」」


 ホールに嫌な沈黙が流れた。

 あれ? フー達って俺の実力知らない?

 そう言えば、俺が力を行使したのは地竜の時と、ウサギ捕獲の時、あと『ルーアン盗賊団』の時だけだな。

 あれ? やっちまったか?


「は……はははは! がはははははははっ!」


 斧を持った男が大声で笑い出し、釣られて取り巻き連中も笑い出した。

 まあ、それはそうだろう。

 これでやるのは二度目、体験は三度目の手のひら返しだ。

 

 悲しくないのに涙がこぼれそう。


「がははははは! 命ばかりはお助けをってか!? がははははは!!」


 男は笑い、笑いながら俺を蹴り付ける。

 全然痛くない、しかし傍から見れば情けない姿だろう。

 これで満足して帰ってくれれば誰も怪我をせずに解決する。

 もし、これで事が済まなければ、その時はそのとき対処出来る。

 この選択は、強者にしか選べないものだ。

 だが、それを理解できる程の頭を持ち得ていない男達だった。


「んじゃあ、それで手を打ってやるよ! ただしもらうのは金じゃねえ。そこの女だ!」


 そう言って男はフーを指差した。

 フーは怯えたように震え上がった。

 恐らく、俺の実力を知らないから、本当に連れて行かれると思ったのだろう。


「おい、お前。連れてこい。——いいか、後ろの二人! 妙な真似しやがったらお前等も殺すぞ!」


 知って知らずか、後ろにいた騎士達にも釘を刺し、俺を強く踏みつける男。

 俺は土下座したまま横目で取り巻きの一人がフーに近づくのを見た。

 そして、竦んで動けないフーへと手を伸ばし——。


「大人しくしやが——」


「来ないで!!」


 取り巻きの顔を少女が思い切りビンタした。

 痛そうな音がホールに響き、その後嫌な静寂が包み、そして。


「……このアマ! 見せしめにぶっ殺してやる! リーダー、良いですよね!?」


「やっちまえ!」


 リーダーと呼ばれた斧を持った男の返事を聞き、取り巻きの男が短刀を取り出し振り被る。

 フーは、未だに動けない。

 騎士達が目をそらすのを見て。



 そして、血の花が咲いた。



おかしい……何故終わらない。

これだけ書いてもストーリーが進まない。

せめて分岐点までは今年度中に書きたいのに……。


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