強いアーム
「お前は校風に合わない」
うちには関係ない
「私達の品が落ちるわ」
だからなんだ
「だからさっさと退学してくれない?」
あぁ、ダルい。
人気の少ない店内を見回す。
これでも、裏で座ることすら出来ないのかよ。
ため息を着いて呆然と眺める。
正直言って、ゲームセンターは時代遅れだと思う。
家庭内ゲーム機でそれ以上のゲームができるし、なんならスマホで十分だ。
「すみません、位置変更お願いします」
小さくため息を着いて「はい、すぐに」とクレーンゲームの鍵を持って向かう。
クレーンゲームがあるせいで、うちはこんな人気のない場所で、座ることも許されず5時間眺めないといけない。
はっきり言って面倒だ。
だが、仕事は仕事。金は貰う以上、給料分は仕事しないといけない。
ショッピングモールのゲームセンターはまだマシだ。
子連れや買い物ついでに遊ぶ学生がいる。
他のゲームセンターは潰れていく一方らしい。
だが、入店する八割は常連だ。
今も、入ってきた少年はピアノの鍵盤のようなコントローラーの筐体に向かう。
ほぼ毎日来ているが、残念ながら今日は点検で使えない。
「は?点検ふざけんなよ、ダル」
そう言って、うちの前を通りわざわざ大きなため息を着いて帰る。
ダルいのはこっちのセリフだ、クソが。
そう言えたならどれだけ気持ちがいいか。ため息をして、背後の棚に置かれたペットボトルの珈琲を飲む。
後三十分でシフトが終わる。
帰ったら何を食べるか、それに思案を巡らせた。
「おつっした」
発音が面倒でなるべく聞き取れないよう早口で、砕けさせて言う。
1階の食品売り場で割引のものでも買うかと、リュックを背負ってバックヤードから出る。
「これ、どうすればいいのかしら」
目を引いたのは異様に白い髪。
クレーンゲームに沼っていて、持ち上げた瞬間に落とすを繰り返していた。
そろそろ補正がかかるはずだが、相変わらず落としていた。
関係ないと歩き出そうとするが、まだ視界の端で揺れる白い髪が気になって仕方がなかった。
「あぁもう」
自然とソイツの方に足が向いていた。
「貸しな」
強引にコントローラーを取ると、すぐに物を取って渡す。
「ほら」
「ありが、とう?」
少し困惑した表情で受け取ったのを確認して、早足に食品売り場に向かう。
「チッ」
何故手伝ったのか、正直分からない。
早く帰ればいいものを、何故か放っておけなかった。
晩御飯はもやしと半額のブロック肉の炒め物にした。
塩コショウで下味をつけて焼肉のタレでしめる。
あいにく今日は休日。寮の食堂の方が安いが、ゴールデンウィーク等、休日は基本閉まっている。
「いただきます」
手を合わせて、米の上に乗せた炒め物をかき込む。
意外と、何度食っても美味い。
寮の調理場がこんな狭くなければ、冷蔵庫が小さくなければ、もう少し凝ったものを作るのだが仕方ない。
食べ終わった皿を洗う。
一人前で、丼1つと箸1膳。洗うのに5分もかからなかった。
残った時間をテキトーにスマホを眺める。
連絡の来ない連絡アプリを見てため息を着く。
登録しているのは、バイト先のグループと、この学校の理事長だけ。
そもそも、この学校に入るつもりはなかった。
バイト帰りに、目の前で起きた引ったくりを捕まえたら是非お礼させて欲しいと連れられて豪華絢爛が似合うお屋敷に連れ込まれた。
色々身の上話を吐かされ、同情された挙句、就職のためにも入るといい、と。
選択肢のない選択を突きつけてきた。
入学するために、2つほどバイトを辞めた。
家賃を払わなくてよくなるのは良いが、如何せん生徒のプライドが高い。
私立篠宮高等学校。
進学校らしく、上流階級や頭でっかちなヤツが集まる。
そんな学校に不良まがいのうちが居る事が気に入らないのだろう。
面倒なヤツらだ。
連絡アプリの他に、メールアプリが通知を鳴らす。
宛先は学校からで、内容は1年生に向けた説明会。
興味もなければ、その日その時間にシフトが入っている。
スマホの電源を落とし、クッションに投げてベッドに飛び込む。
シャワーは、今日はもう良いか。
寝巻きに着替えるのも面倒で、バイトの制服のまま、眠りについた。
主要キャラは出揃いました。




