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1 古谷桃花という女

   「古谷先生~体育祭準備の紙って今持ってる??」

   「コピー機動かなくなっちゃった!! 古谷先生~!」

   「ーーわぁ!ありがとう、古谷先生!!」

   「いやいや流石だよ古谷先生は!」


放課後の学校。

黒く長い髪をなびかせながら、今日も彼女は職員室を駆け回る。


名は古谷(ふるたに) 桃花(ももか)

ここ、北山中学校で働く教員である。


竹内 「ーーいやぁ、古谷先生は凄いねぇ。ホント若手なのによくやるよ」

古谷 「いえいえ、とんでもないですよ。自分なんてまだまだです」


竹内 「またまたそう言っちゃって。いつもいつも古谷先生に私達は助けられてるんですから。まさに才色兼備! 我ら北中(北山中学校)の高嶺の花ですよ」

古谷 「アハハ、そんなことないですよ。でもそう言って貰えると、更に頑張りたくなります。ありがとうございます」


にこやかに笑う桃花。

彼女はここ、北山中学校の高嶺の花なのである。



桜木 「古谷先生って何でいつもあんなに輝いて見えるんでしょうね」

大谷 「わかんないわよ。なんか光る薬でもやってんじゃないの…」


テキパキと仕事をする桃花を見つめながら、職員室の端で二人は会話をする。


桜木 「何ですかその薬…。 ハァ、古谷先生素敵だなぁ。私もあんな風に周りから求められる女性になりたいなぁ」

大谷 「ポンコツ桜木じゃ無理ね。古谷桃花…私が見るに彼女は特別な力があるわ。貴方にはない華がある。周りを惹きつける力があるのよ。それに、その才能に甘えて生きてるわけじゃない。努力家なのよね。彼女は」


桜木 「ちょっと聞き捨てならない言葉が聞こえたんですけど、今は良いです。北中のお局である、大谷先生に免じて聞かなかったことにしておいてあげます」

大谷 「間違ったこと言ってないでしょ? 貴方は仕事でミスばっかりで皆からポンコツって言われてるじゃない。ーーと言うか誰がお局よ!」


桜木 「もういいじゃないですか! 細かいところは! 大谷先生は誰がどう見てもお局ですよ。それより大谷先生も認めるなんて古谷先生は何者なんでしょうね」

大谷 「私にとっては全く細かくないんだけど…。 まぁ古谷先生は誰とでも上手くやるし、仕事も貴方と違って完璧にこなすわよ。貴方も何か迷ったら古谷先生について行きなさい。彼女なら間違った方向にはいかないわ」


桜木 「そういえば、古谷先生って彼氏とかいるんですかね? そういった話って全く聞かないんですけど。大谷先生なんか知ってます??」

大谷 「そんなの知ってたら大ゴシップよ。そういうところも彼女は読めないの。あんなに容姿端麗なのに、全く気取らない。仕事もできて、面倒見もいい。世の中の男性が放っておいていいはずがない女性なのに…」


桜木 「ん~でも、情報通の大谷先生も知らないならいないんじゃないですか? 大谷先生はこの職員室の掲示板だって山田先生から昔聞きましたし」

大谷 「何よそれ…。山田あいつ何変な噂後輩に吹き込んでるのよ」


桜木 「まぁあながち間違ってないですけど…」

大谷 「ーーん?」

桜木 「何でもないです!」



桜木 「まっまぁ、古谷先生は私の一上だから今…25歳ですし、まだ恋愛より仕事って感じなのかもしれないですよ!?」

大谷 「フンッ、馬鹿言ってんじゃないわよ。彼女に彼氏がいないわけないでしょ。あんなに素敵な女性なんだから。それなのに男の影が全く見えない。そういうところも含めて悔しいほど完璧な女性なのよね、古谷先生っていうのは…」


羨望の眼差しで桃花を見つめる二人なのであった。


   □□□


古谷 「あぁぁぁぁ!! 教員辞めてええぇぇぇぇぇぇ!!」


鞄を部屋に放り投げると、桃花はベッドにダイブする。

ここは桃花の部屋。

1K8畳の一般的な部屋である。


古谷 「帰ってきた時間は…21時40分。意味分からん。こっちは定時16時45分だっつうの!!」


ポケットから出したスマホで時間を確認すると、スマホをベッドに叩きつける。


古谷 「あ~くそくそくそくそ。教員なんてクソだ!! 今すぐ辞めてやる」


才色兼備、容姿端麗、北中の高嶺の花。

ここには桃花を縛り付けるものは何もない。


古谷 「なんで私ばっかに聞くんだよ! もっと周りの奴に聞けよ。体育祭の紙持ってますか?って、ガキか! 自分で印刷しろハゲ」


古谷 「コピー機動かなくなっただ? 私に言うなよ。知らねーよ。業者じゃねぇっつーの。こちとら教員なんじゃぼけぇ」


古谷 「ーーていうか竹内お前教頭だろ! 私の業務量おかしいだろ! 管理職なんだから管理しろよ。私定時で帰れてませんけど、もっとしっかり管理しろよ!!!」


天井に不満をぶつけ続ける。

部屋には溜ったゴミに洗い物。仕事終わりの桃花にかたづける気持ちなど最初からない。


古谷 「あ~もう今日シャワーいいかなぁ…」


そう。これが本当の古谷桃花である。

周りが見ている姿は、桃花にとってはあくまで仮の姿。「良い女」を演じるのは、社会で生きやすくするための彼女なりの方法なのだ。



数秒の間目を瞑って考える。

今日はあんまり動いてないし、そんな汗もかいてないよな?

でも明日髪の毛ベタベタだったらどうしよう…。


古谷 「やっぱシャワーだけは浴びとこう」


ベッドから起き上がると、脱衣所へ向かう。


基本的にどの人も家と外では違うだろう。ただ桃花はちょっとその差が大きいだけであり、隠すのが上手いだけだ。


本当は、一人の乙女なのである。


「あ~明日、校長先生に辞めますって伝えよ」

桃花は小さく呟いた。

読みにくかったらすみません!

最初は更新ペース早めに行くつもりです!

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