第7話 上里一族について―1
思い出すままに書いているので、話が行きつ戻りつすることについては、平にご寛恕を。
本当に最終部では、世界にまたがる華麗なる一族としか言いようがない一族になった上里一族ですが。
その初代と言える上里松一は、というと沖縄、この世界で言えば日本本国ではない琉球王国出身といってよく、更にその妻二人、プリチャ、張娃も本来は日本人ではありません。
プリチャは後から急きょ追加投入したので、まずは置いておくとしても、何故に松一や張娃が本来的には日本人と言い難い設定にしたのか、というと、私なりに冷めた視点を持った主人公にした方が描きやすい、というのがありました。
更に言えば、冒頭部で「皇軍」がある意味では暴走する以上、それを少し冷めた目で見る主人公にする方が、バランスが取れるのではないか、とも考えました。
(それこそツッコミ役ばかり、ボケ役ばかりでは話は描きづらく、ある程度は組み合わせないと話を描くのには苦労することになります)
そんなことから、松一を沖縄出身にすることで、日本を少し冷めた目で見ることにしました。
更に言えば、当初は海軍少尉に過ぎない松一を自然に作中に登場させるにも、沖縄出身にすることで、当時の琉球王国政府の面々との交渉役として登場させやすい、という事情があったのです。
又、張娃ですが、実は元ネタ(?)があります。
唐代の小説「李娃伝」のヒロインになる李娃です。
彼女は元は芸妓で、男主人公はその客として出会い、紆余曲折の末に二人は結婚して、男主人公と二人の間の息子達も出世して幸せを掴むという小説です。
その小説を念頭において、張娃というヒロインを当初は造形した結果、華僑商人の張敬修と琉球王国の芸妓(尾類)の安喜との間の娘という設定になりました。
そして、話を描いていったところ、皇軍将兵の食料確保の難問が深刻化していったことから、松一と張敬修はシャム王国に話の流れの中で赴く事態が。
更にこれに張娃も同行させようと、当初の私は考えていましたが。
私なりに調べたところ、この頃のシャム王国周辺は戦乱が絶えない、と言っても過言ではない状況で、そんなところに12歳の少女を連れて行くのはどうか、と考えたことから。
張娃は琉球王国に残ることになりました。
そして、松一はシャム王国のアユタヤに単身赴任(?)することに。
ですが、これはこれで、作者の私としては描きづらい。
松一の話し相手、相棒がいない事態になったからです。
それこそ主な小説等で、主人公の相棒がいない話は圧倒的少数では無いでしょうか。
そんなことから、現地妻、愛妾として急きょプリチャを登場させることにしました。
更にプリチャと松一が惹かれ合った末ではないのを示す為にも、張敬修や真徳のお節介があったことにもしました。
(それこそ松一の当初の性格設定から、松一が女漁りをするというのは考えにくく、かといって男の相棒にするのも、何だか華に欠ける気がして、子連れの女性が生活の為に現地妻になったことにしたのです)
そして、内心では嫌々ながら、プリチャが松一と関係を持ったことにしたかったことから、タンサニーやサクチャイという連れ子も登場させたのですが。
私の悪癖かもしれませんが、余程の裏事情が無いと憎み合う親子の日常が描けないという問題が。
そのために松一にタンサニー(美子)らが懐いて、血の繋がりなんてどうでもいいでしょ、という親子の日常関係を描くことになり、更には、そうなると松一とプリチャの間にも子がいて然るべきという想いが私に湧いてしまう事態が。
そんなこんなが絡み合い、和子、正道(道平)、智子という3人の子が登場することに。
もし、当初の構想通りならば、松一と張娃の初子が智子辺りになった筈で、本当に大きく話の流れが変わってしまいました。
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