第13話 この世界の奴隷と年季奉公人について―2
そんなこんなを考えて、奴隷解放後も年季奉公人という制度下に暫くは置くのが至当ではないか、と私なりに考えた次第です。
それこそ何とも皮肉と言われそうですが、南北戦争以前の南部では奴隷は自らの財産であるとして、それなりの配慮が奴隷主から為されていたが、南北戦争後はその多くが単なる分益小作人と地主(金貸し)関係になり、却って分益小作人から少しでも利益を搾り取らねば、という地主(金貸し)ばかりになって、元奴隷が経済的にはですが、貧窮度が更に高まる事態が起きたという動画を見た覚えがあります。
少なからず話がズレたので、元に戻すと。
とはいえ、年季奉公人という制度を遺した場合、これはこれで、史実で南北米大陸(及びその周辺)に対して、ヨーロッパやアフリカ大陸から奴隷や年季奉公人という形で人の供給が為されたのと同様の事態が、この世界では年季奉公人として起きるとも私には考えました。
更に言えば、どう考えても、南北米大陸から日本本土からの人の供給が追い付かず、南北米大陸にいる日本人から、そういった需要が引き起こされるのが、目に見えています。
何しろこの当時、「皇軍来訪」後のヨーロッパやアフリカ大陸から、日本に対して売れるモノとなると、私なりにどう考えてみても、「人」を売るしかないという背景もあります。
香辛料は日本が抑えており、様々な工業産品(それこそ様々な織物から金属類、兵器等に至るまで)にしても、「皇軍知識」を活用した日本は産業革命を着々と進めるでしょうから、どう見ても質量共に勝る様々な日本製品が世界市場を制するのは必至です。
そういった状況下になれば、大量の金銀が欧州から日本へと流出するのは必然的なことで、更にそれを看過しては、欧州全体が酷いデフレ不況に陥るのが目に見えていて、それを打破する具体的な方策として、どのように欧州の民がすればよいのか、と言えば。
一部の日本史家、というよりも日本愛国主義者から、
「捏造資料を基にするもので、日本人を侮辱するものだ」
等の罵倒が浴びせられますが。
戦国時代末期から江戸時代初期(更には19世紀後半から20世紀前半でも)に掛けて、史実日本で起きたように、劣悪な条件下で日本人が主に東南アジア方面に人身売買の果てに売られたように。
この世界では、本編で描いたように少しでも生きるために、欧州から南北両米大陸への年季奉公人の群れが起きるのが、自然というより当然と考えた次第です。
更に言えば、アフリカ内部では伝統的に奴隷交易が盛んであり、史実でもそれを欧州諸国は活用することで、アフリカから南北両米大陸への奴隷輸出を進めたという現実が。
この作中世界でも、同様と言っては言い過ぎですが、アフリカから南北両米大陸への年季奉公人の群れが起きてもおかしくないと考えました。
実際問題として、幾ら有力者が日本本国から南北両米大陸に赴いたとしても、南北両米大陸(及びその周辺)は広大であり、人手不足に陥るのは必然的な話です。
そういった状況を少しでも補おうという需要が、南北両米大陸の住民の間で起こるのが当たり前で、そうしたことからも、欧州やアフリカからの年季奉公人を南北両米大陸では積極的に受け入れる方向に流れる、と私は考えた次第です。
その一方、史実世界でも似た事態が起きましたが、順調に産業革命が進捗した日本本国では、外国からの年季奉公人を排除する方向に流れる、と私は考えました。
そうしたことから、史実の米国南北戦争が奴隷問題から起きたように、この世界の北米独立戦争は外国人の年季奉公人問題から起きる事態が。
本当にここまで流れるとは、私としても望外のこととしか言いようがありません。
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