第11話 改めて第5部という転機を考える
既述ですが、第5部から「戦国に皇軍来訪すー上里一族の物語」は大きく変わった気が私はします。
この部以降、上里家の面々は、世界を股に掛けて主導して動いていく方向に変わったからです。
それまでは、上里家の面々は基本的に他動的でした。
それこそ上里松一の子どもの婚活にしても、周囲から話を持ち込まれて、それに上里松一は応じるばかりといっても過言ではありませんでした。
(細かく言えば、長女(?)の美子と織田信長の結婚は相思相愛の末で異なると言えますが、その前の美子と久我晴通の婚約騒動は、プリチャ(永賢尼)の暗躍からですし、他の面々の結婚は敬子に至るまで、その通りとしか言いようがないのが現実です。
尚、清、丈二、里子の結婚はどうなのだ、というツッコミが起きそうですが。
この辺りの本編描写はほぼありませんが、九条兼孝と敬子が結婚したことから、公家の面々は九条家との縁を重視して、平民の清や丈二、里子との結婚に応じたという流れです)
さて、そうなっていった理由ですが、それまでもこの当時の日本の政治制度はどうなっているのか、感想欄で何度か質問されていて、私としては明治初期の太政官制類似で太政大臣を長とする政治制度です、と回答してお茶を濁してきました。
実際問題として、私なりに考える程、「皇軍」の面々と、足利幕府追放後に日本の中央政治を担わざるを得ない公家の面々とが双方納得して運用できる政治制度となると、明治初期の太政官類似にするしかない、と考えたのです。
ですが、そうなると上里家の面々は、それこそ松一にしても財界の有力者になっていますが、政界で活躍できるような立場ではありません。
一応、作中で将来的には政治家としても動けるように、織田信長を労働組合の最有力者にしていましたが、それこそ有司専制と言われても仕方のない太政官類似の制度です。
それを変えるにしても、どう作中で自然に変えるのか、という問題が。
上里家の面々を、政治面で動かそうにも、作者としては極めてやりづらかったのです。
そうした作中の状況下で「エジプト独立戦争」という流れが起きたことから、更にこの流れに乗じて上里家の面々を政治的に動かせるようにできないか、と私なりに考えたことから、上里美子の尚侍就任という話に転がりました。
武田晴信(信玄)の元妻の三条氏の猶妹に美子がなった時点で、何れは美子を尚侍にしようと決めていたのでは、と言われたことがありますが。
そんなことはなく、本当に話の流れ、アドリブと言われても仕方のない流れです。
何しろ、私なりに調べる限り、この当時に尚侍はいませんし、この当時に尚侍が活躍する小説等も読んだ覚えが私にはありません。
この辺り、本当に作中の流れから、私なりにプロット等を考えた末に、美子を尚侍にして、エジプトに夫の織田信長と共に行かせるのはどうだろうか。
又、近衛前久公なら、これくらいのことを史実の行動からしてもやらかしてもおかしくないし、と考えたのです。
更には「皇軍来訪」から20年以上というより30年近くが経っている以上、史実の明治維新から大日本帝国憲法発布に掛った時間から考えても、そろそろこの世界日本では民主主義では無かった、民本主義が広まっていき、憲法制定運動等が起きているのが自然だ、とも私は考えたのです。
その一環として、近衛前久公と織田信長のこの世界なりの対談を描きたい、とも考えたのです。
そうしたことから、第5部の様々な描写、美子の尚侍就任等が起きたのですが。
その結果として、最終部に至るまで美子が九尾の狐めいた日本政界の闇の首領的な存在になる事態が起きるとは。
本当に何時もながら、私の筆が奔り過ぎました。
ご感想等をお待ちしています。




