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比較的最近更新した短編のまとめ場所

早く追放されたいんですから、邪魔しないでください

作者: リィズ・ブランディシュカ




 婚約者のムカつく王子が愛人の女とデキていた。


 愛人の女は私をはめて、濡れ衣を着せて高笑い。


 私は犯したはずのない罪をかぶって国を追放される事に。


 でも、それでいいのだ。


 なぜなら、私は追放されないと、一年後に死ぬ運命だから!








「ティアラ様! 待ってください! 濡れぎぬなんでしょう!?」

「いやよ、待たない!」


 追いすがってくる幼馴染の騎士をふり切るために全力疾走。


 国の外に繋がる門までわき目を振らずに足を動かす。


 彼とは長い付き合いだが、自分の命には代えられないので、非情になって足だけを必死に動かす。


 悲しげな顔が脳裏に浮かんできたが、頭をふって、払い落した。


 ごめん。


 何度もおやつ勝手に食べたのは、そのうちいつか謝るわ。


 あと、このまえ背中に虫をくっつけたのも、何年か後に謝るわね







「ティアラー! なぜ逃げる! 俺様が王子にかけあってやるっつってんだろ!」

「申し訳ないですが、余計なことしないでください!」


 考え事をしていてはいけない。


 思考を切り替える。


 なぜなら次の障害が追いかけてきたからだ!


 隣国の王子がそんな事を言ってくるが、私はお断りの言葉を述べた。


 善意でやってくれているのだろうが、その行為に甘えていると死ぬので。


 ノーサンキュー。


 早く、この国から出なければ。


 追放されてしまわなければ。


 彼等に追いつかれてしまう。


 民家の屋根によじのぼり、悪路を走る。


 ハイヒールなんてとっくに脱ぎ捨てているし、ドレスのスカートだってびりびりに破っている。






 しかし悪いことは続くもので。


「ティアラたーん。君がいないと俺が死んでしまうよー。君成分が足りなくなるよー」

「他の人からもらってください」


 またきた!


 前に立ちふさがった、独特な喋り方の男性が一人。


 でも、まあいっかと対処方法がゾンザイになった。


「どかないと蹴りますわよ! せいっ!」

「ぶべらっ!」


 ためらいなく、ケリを放って撃沈。


 屍を踏み倒して、前へ進む。


 あの男性、数年前に踊り子として活動していた時から私のファンなんだけど、ちょっと気持ち悪いのよね。


 だから、他二人と違って謝りはしないわ。








 私は国の門へさらに前進。


 追放。


 追放。


 とにかく追放だ。


 早く追放されたい。


 なんて具合に焦っていた私は、横から飛び出してきた猫と衝突した。


「ぎゃんっ!」

「にゃーん!」


 ふっとばされた猫は空中で一回転。


 ついでに美少年に変化した。


 普通の猫はそんな事にならない。


 なので、つまりそれは普通の猫ではなく。


 猫以外の何かであった。


 変化してあらわれた彼は人間ではない。


 この国の守り神だ。


 数年前に怪我をしていたところを見つけて、手当をしたらなつかれた。


「この国を、でていくのか? 俺の言葉を聞ける人間は、限られているというのに」


 彼は神様だから、波長の合う人間としか会話ができないらしい。


 だから、長い間寂しい思いをしてきたのだ。


 そんな彼を一人ぼっちにしてしまうのは、かなり後ろ髪ひかれる思いだが。


「ごっ。ごめん。でもこっちも譲れなくて」


 私は再び走り出すことにした。








 門が見えてきた。


 あともう少しで、国外へ出られる。


 追放だ!


 これで、死ななくてすむ!


 私はぎょっとした顔の見張りの兵士の脇をすりぬけて、門を通り抜けようとするのだが。


 なぜか上から檻が降ってきた。


 私は閉じこめられてしまう。


「なっ!」


 愕然としていると、私を捨てたクソ王子とその愛人の姿が。


 私を見つめて、醜悪な顔で何事かを説明してくる。


「問題が起きた。俺の愛しい姫は王妃教育を受け終えるまで時間がかかるようだ。教育を受け終えるまで、誰が穴埋めをするかという話になってだなーー」

「だからティアラ様にしばらく代わりにやってもらおうと思って。良かったわね、ふられたのにまだ王子の傍にいられるんだから」


 私は鉄格子を殴りつける。


 そんな事だろうと思ったよ。








 この世界は、乙女ゲームの世界だ。


 私は悪役令嬢として断罪される人間。


 実は濡れ衣だったと、設定資料集に書かれているのだが、問題はそこではない。


 続編がある、という点が問題なのだ。


 悪役令嬢は追放処分になるが、2ではなんだかんだで国にとどまっていた。


 王妃教育の住んでいない、頭の軽そうな女の代わりに、色々な仕事をこなすために。


 けれど、悪役令嬢の日常は長くは続かない。


 2のシナリオの序盤のイベントで、病んだ攻略対象の地雷をふんで、殺されてしまうのだ。


 2は合計10のルートがあるが、そのイベントはどのルートでも確定で発生する。


 だから、逃げようとしていたのに。


 私は檻を殴りつけて、この先の未来を案じるしかなかった。


「おっ、覚えていなさいよあんたら、死亡フラグを回避して、2の原作が終了したら。シナリオなんかにしばられずにやり返してやるんだから!」



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