第9話 病院から運動会?
8時30分 朝の診察 渡辺先生
「森林さん。おはようございます。診察です。」
大きい子の診察の後、再び渡辺先生の診察がある。
「では、まっすぐ見てください。上、右上、右、右下、下、左下、左、左上・・・・はい。じゃあ、今日また外来に呼びますね。今日は私、午後から外勤なので、早めにお呼びしますね」
「あのー、もしまだしばらく点滴が必要なら、運動会のこと気にしないで決めてください。」
「だいじょうぶですよ。1日くらいは外出できます。点滴の調整もしますよ。運動会行けますよ」
(ん?退院じゃないのか・・・・・。)
9時 朝の点滴の時間。でもまだ来ない。
(開始が遅いぞ。おー、今日の担当看護師は新人ちゃんか。ゆっくりだが、一生懸命なのはいい。待ってあげよう)
「森林さん、点滴しますねー。」
「お願いします」
13時20分 上原崇先生 ぶどう膜外来。渡辺先生は、外勤の前のようだが、同席している。
「どうですか?見え方。」
「先週よりは見えてきたと思うんです」
「あとは、どのくらいウイルスが死んだかなのでね。診させていただきますね」
おー、さすが松山からわざわざ来てくださる先生。関西弁ですね。でも頼れます。
「あー、散瞳してからでいいですか。20分くらいでね、開きますから」
(そうですよね。)
「わかりました」
外来待合室は、2週間前よりもすいている。
20分後
「森林さん。38番診察室へお願いします」
「診せてくださいねー。先週はウイルスが10個くらいあったんですけど、今は2つくらいに減っていますね。」
この専門医は診ただけでウイルスの数がわかるらしい・・・
「詳しくはもう一度針を刺して検査させてもらいます。しっかりウイルスをやっつけることが大事なのでね。僕が研究しているチームでは、2週間点滴、2週間内服です。なので、今日で点滴は終わりにしてもらって、明日からは内服です。内服にして1週間、入院で様子をみさせてもらって・・・」
(ん?あと1週間?入院?!)
「そのあと、外来で1週間ごとに診せてもらうということでどうでしょうか。まだ網膜剥離する可能性もゼロではない。治ってきたころに剥離しやすいんです。網膜壊死と言ってね。壊死は、壊れるに死ぬって書くんですけど。。。。」
(一応、医療従事者なので、それはわかります。)
「あー、もう一度みせてくださいね。んー、PSVはないな。ないね。硝子体が網膜を引っ張ることがあるんですけど、それはないので、剥離しづらいとは思います。でも1週間様子をみさせてください」
「はい。お願いします。網膜剥離してきたら、私の自覚症状はどうなりますか」
「すぐにわかります。見えなくなりますから。真っ暗になります。」
(そうですか・・・。)
「はい。わかりました。。。どうもありがとうございました」
ひきつづき渡辺先生の外来に呼ばれた。
「あと1週間、診させていただくことになったので、週明けくらいの退院かなと思います。」
「検査の結果が出てからの方がいいんですよね」
「そうですね。明日検査させてもらって、結果が1週間後・・・水曜日かな。外泊も今度はできると思うのでね」
「はい。金曜日と土曜日、お願いしたいです。そこだけお願いします」
「だいじょうぶですよ」
「ありがとうございました」
そのまま、病棟には帰らず、タリーズの前で、家族、同僚にメール、Lineで連絡することにした。
(1週間退院が延びました。経過は順調のようです。来週には退院のようです。復職については主治医と相談してからご報告します。。。。)
15時 入り口を入ってすぐ左側のベッドに、また新しい患者さんが入ってきた。
「管理栄養士の小林です」
栄養士さんが来るのは珍しいな。
「山田さん、アレルギーがあるようなのでお話を伺いに来ました。食べられないものは何ですか」
「食べられるものを言った方が早いかと・・・」
「食べられないものでお願いします」
「えーっと、ネギ、玉ねぎ、わさび、からし、塩、」
塩?
「しょうゆ」
しょうゆ?
「ソースもだめね。ケチャップも」
このおばさんは、何で味付けして食べているのだろうか・・・。入院中のお食事、たいへんですが、がんばってください。世の中には食事も大変な人がいる。
17時 最後の点滴
2週間点滴がんばった。これでとりあえず最後か・・・
点滴の記念写真。。。。初めて撮った。点滴の写真・・・
5月22日
6時 ピヨピヨ。ピヨピヨ。起床
いつもと同じピヨピヨから始まる音楽・・・。今日から何もないのか・・・。暇だ。何をしよう・・・。
点滴が終了した私の新しい日課は、ストレッチと筋トレ。でも腹筋、足上げだけ。
そして朝のオーストラリアラジオニュースを聞くこと。
7時 散瞳の目薬
朝の日本のニュースを見る。そしてBBCニュースを見る
7時半 朝の診察 渡辺先生
8時朝食
朝食後から点滴代わりのバラシクロビルが追加になり、内服増量になった。異常に大粒だ。嚥下できるのか?!と不安になるくらいに大きい。それとバイアスピリン、ステロイド、胃薬・・・・。
13時
深志病院から宮本君がお見舞いに来てくれた。みんなたいへんらしい。ストレスたまってるね。でも、ずっと話をしているとまだ疲れる・・・。目もなんとなく痛い・・・。不安になって、宮本君が帰った後はしばらく臥床して目を休めることにした。不安・・・。網膜剥離しませんように。
それでも見え方は少しずつ良くなっているのかもしれない。
17時
お向かいの患者さんは、血管が細いらしく、点滴の針がなかなか入らない。若い看護師さんは無理。中堅の看護師さんでも入らず、ついに来たあの、男性看護師さんが現れた。
「んー、手の甲でもいい?」
とやはり馴れ馴れしく一言言い、ささっと刺して去って行った。やはり職人ですね。
18時 夕食
メニューは、魚のフライ3切れ、肉じゃが、サラダ、みそ汁、ご飯たっぷり。
(こんなに食べらるかー!)
(アレルギーいっぱいの入り口左側の患者さんは、ちゃんと食べられているのだろうか。)
一方、隣の患者さんは、やたら独り言が多い。
「わー、おいしそう。おいしそうだわー。フライだわ。」
相槌打ってほしいのか?
「さて、薬飲もう!まず薬。」
そうだね。患者ですから。それが大事だと思います。飲みましょう。
自分もバラシクロビルを飲みながら、これまでの生活とこれからの生活について考えた。帯状疱疹は疲れやストレスがたまった時に罹患すると聞く。これまで、がんばりすぎたのかな。亡くなってしまった以前勤めていた病院の先輩、武田先生が私にくれた言葉・・“君の歩み、見習います”
「森林のように、自分らしい歩み方をしたいんだよ。お前はえらい。ちゃんと自分のペースでコツコツやっているもんな。」
生前そんなことを言ってくれた。でも、武田先生に褒めてもらえるような歩み方ではなかったのかもしれないな・・・。
走るのを止めれば不安になる。走り続ければつまずく。。。。。果たしてどうしたものか。