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青空  作者: もり まも
3/10

第3話 いままでにない痛み

4月のこと。

********************************************

4月6日

 朝4時50分。いつも私はこの時間に起きて、まずは洗濯機を回す。それからキッチンへ行って朝ご飯の支度をする。我が家の朝食は和食だ。一応。。。味噌汁を作って、卵焼きか目玉焼き、もしくは焼き魚を作る。作り置きしておいたひじきの煮物と、かぼちゃの煮物。それから納豆と小魚の佃煮。毎朝たいてい同じメニューだ。夫も娘も文句は言わない。いや。言わせない。

朝ご飯の準備ができたら、自分の弁当をつめる。前日の残り物や朝食と同じおかずを弁当箱に入れる。それだけ。それから夕ご飯の下ごしらえをする。つまり、朝、3食分の支度をするのだ。この生活を始めて7年。夜は帰ってから料理をする時間も気力もないから朝やる。毎日帰宅するのは19時を過ぎるのだ。

 4月に8歳になった彩音を6時に起こして、朝ご飯を食べた。

 「今日はママ早い?」

 「いつもと同じかな。7時くらいに学童へお迎えに行くよ」

 化粧をして、着替えをして、洗濯物を干して、簡単に掃除をして、あっという間に7時半だ。

 娘の彩音は7時45分に集団登校で小学校へ行く。私はそれを見送ってすぐに職場へ向かう。


 朝8時半。課長の挨拶でミーティングが始まる。

「おはようございます。今日は13時20分から役職者会です。役職者の皆さんよろしくおねがいします。

他に何かありますか」

「明日お休みをいただきます」と井上さん

「午後半休をいただきます」と岡沢さん

「じゃあ、今日もよろしくお願いします」


9時からの診療が始まる。今日の私の患者さんは全部で13人。お昼からは役職者会をやって、それから16時から認知症ケアチームのカンファレンスがある。

まず午前は外来患者さんが6人だ。

「古谷さん。どうぞ。調子はいかがですか。」

この患者さんはもう6か月も通っている。リハビリテーション実施期限も過ぎていている。左小指の骨折の後、腱のバランスは明らかに悪くて、自動運動の可動域は、ここ2か月改善がみられない。

(そろそろ古谷さんは卒業だな・・・。)

  そんなことを考えつつ、午前中、最後の時間は病棟の頸髄損傷の患者さんの昼食場面を見に行った。

12時30分にリハビリテーション部へ戻った。12時20分からの昼休みの予定だけど、既に過ぎている。まずはカルテを記載した。それから、役職者会の資料を少し修正しないといけない。今日の議題はコロナ対策。ここのところ感染者数は減ってきていて、コロナ対策は日に日に変わる。リハビリテーション部としてはそろそろリハビリテーションセンターの使用を再開することも検討すべき時だ。課長補佐の私はいつも役職者会の議題の決定とレジュメの作成、司会、会議後の議事録の作成をすることになっている。昼食を大急ぎで食べないと、役職者会が始まってしまう。食べながら会議の資料を印刷して、何とか間にあった。

「これから4月の役職者会を始めます。まずはコロナ対策について。」

何とか早く皆の意見をまとめて、早く終わらせたい。そんな気持ちを前面に出して司会を務める。きっと顔、話し方に出ちゃっているはずだ。

議題は、新型コロナ。αだかβだかθだか・・・新たな感染症の中で、リハビリをするなどという未だかつてやったことのないことを、国からのざっくりと大きな指示をかみ砕きながら現場でどうやるのかを決めていくというのは、大きな岩に小さなノミで向かうような感覚だ。緩めすぎたら感染リスクは高まるし、厳しくしすぎたらリハビリなんてできない。スタッフを感染させたら患者さんにリハビリを提供できなくなるし、スタッフにいつまでも装備をさせ過ぎれば、汗だくで喉はカラカラ、アイガードは曇り視界不良、皆倒れてしまうのではないか。スタッフは常に不安そうだ。

(頼む。課長。「まずは俺がやってみる」と言ってくれ。。。。って、言うはずがないか。。。まずは私がやりましょうか。)

大きな体にノミの心臓の課長は、私よりも女子っぽい男子だ。

そんな課長がまとめる役職者会では、普段から部の方針を決めるのには時間がかかる。こんな議題は絶対にすぐには決まらない。


予想通りに、役職者会は長引いてしまった。

「課長、最後にお願いします」

「それでは、午前は外来の患者さん。午後は9階西の患者さんからリハ室を使います。」

「あと、報告事項はレジュメを呼んでおいてください。次回は5月12日の月曜日です。もしコロナ対策変更になりそうだったら、臨時会議をやるかもしれないので、また連絡します。これで今月の役職者会は終わりです。」



14時半。昨日発症の脳梗塞の新規患者さんのところへ行った。重症だ。意識レベルはJCS2桁。左上下肢の麻痺は重度。安静度は今日から離床可能。

「山田さーん。聞こえますか。リハビリです。血圧計りますね。」血圧は188/98。高いけど、医師の中止基準を下回っている。

(この患者さん・・・82kgか。。。。)

ベッドのギャッチアップ、まず30度。そして血圧測定。

次に45度。そして血圧測定。さらに60度。そして血圧測定。。。。。

「座りますよ。足下ろしますね。目を開けてください!」

座ると目を開けた。そして麻痺のある左側へ右手でどんどん押してくる。患者さんを支える私の腰が痛い。すごく痛い。


 18時半に仕事を終えて、娘の学童へお迎えに行った。やはり19時ぎりぎりになってしまった。今どき、皆、電動自転車なのに、私は相変わらずの人力自転車に娘を乗せてペダルを踏んだ。走り出しはヨロヨロだ。電動自転車のママたちにどんどん抜かれていく。

 (お先にどうぞ。人力なんで。。。)

 家に着くと、朝作ったおかずを温めて、ごはんも温めて、二人で夕ご飯を食べた。

 それからお皿を洗って、洗濯物をたたんで、お風呂を洗って、お風呂に入って、お米を洗って炊飯器にセットした。あっという間に10時半。

「ママ―。おなかすいたー」

(えーっ!?なんということだ。。。。)

 1日は短い。


4月13日

腰がますます痛い。すごく痛い。激痛だ。20代のころから腰痛があったが、今回は今までにない痛みだ。

理学療法士の牧田くんに診てもらった。まずは股関節のストレッチをしてみようということになった。


4月20日

やっと腰の痛みがひいてきた。ふと腰をみると赤い発疹が出ていた。

(帯状疱疹だったんだ。。。私。。。前駆痛というやつだったんだな。

もう腰の痛みも治ったし。まあだいじょうぶかな。。。)



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