第2話
5月3日
左目はだんだんぼやけて見えるようになっている。少し視点を動かすと、かすみも一緒に動く・・・。
(なんだろう?)
世の中は今日からゴールデンウィークだ。彩音の保育園からのお友達と東武動物公園へ行く日だ。ずっと前から計画していた。
(眼科だってどうせお休みなのだし、予定どおり遊びに行こう。)
朝6時。彩音と私がひーくんと呼んでいる夫が運転する車に乗った。
ホワイトタイガーだって、今日は背中に黒いごま塩ふったようなタイガーに見える。
晴れているのに空だって、ゴマだらけだ。
「隆ちゃんとポニーに乗る!」
「うん。行っておいで」
彩音を見ているその周りにたくさんの黒い点が見える・・・。黒い点はどんどん増えている。これはどう考えてもまずい。。。
5月6日
左目が痛い。腫れぼったい。黒い点はますます大きくなっている。左目の視野の6分の1くらいが黒くなったと言おうか。。。
ゴールデンウィークが終わって今日から仕事だ。
(職場は病院なのだから、とにかく出勤しよう)
病院へ向かった。そして、病院へ着くと友達の視能訓練士さんにメールをして予約を無理やり入れてもらった。
仕事が少し落ち着く午後3時に眼科を受診。いつもなら木曜日は不在のはずの長谷川先生もゴールデンウィーク開けで在院している。ラッキーだ!問診には「5日前くらいから黒い点が見える。かすみ目。軽度の痛み。今朝は黒い点が急に大きく見えるようになった。」と記載した。
「森林さん。診察室に入ってください」
「はい。お願いします。」
「では、ここに顎を乗せて。まっすぐ見てください。上見てください。右上見てください、右見てください、右下、下、左下、左、左上・・・・・・・なんだ!!これは?んー。」
長谷川先生はしばし沈黙した。
(怖い。怖すぎる。)
「ぶどう膜炎かもなー。膠原病とかある?」
「ないです」
(ベーチェット病のことか?)
「ヘルペスが原因だといけないからな。ぶどう膜炎でもヘルペスが原因だと急速に進行するんです。急性網膜壊死。網膜がはがれると失明するからね。最近、帯状疱疹とかやった?」
(帯状疱疹か・・・。やった・・・・。)
4月上旬、腰痛がひどくて、何だろうと思っていた。そのあと、左の腰に水疱ができた。
(あー、帯状疱疹の前駆痛だったのだな・・・)
と思った。水疱ができる頃には痛みも減ってたから診察も受けなかった・・・。
「痛みがあったんですけど、発疹が出たころには痛みがほとんどなくて・・・帯状疱疹だったのかと思っているうちに治ったんで、放っておいたんです・・・」