生きているのは100点満点
私は人生が辛くいつもいつも、死ぬことを考えていた。
今日は定期通院、先生に悩みを打ち明けました。
「サヤさん、あなたは満点です」
「え?先生どういうことですか?」
私は先生の言っていることがわからなかった
「いいですか、サヤさん、あなたは死にたくて死にたくて仕方ないに死んでいない、生きていることは100点満点なんですよ」
私には何が何だかわからない。
私が黙っていると先生は続ける
「自殺を考えている人ってね、大体みんな自分が一番可哀想で自分は不幸なんだって思ってるんですけど違うんですよ、あなたはとても幸せです、この世界に一人しかいないという希少価値のある人間なんですから」
そう言われても全然嬉しくなかった。
ただ私の心は複雑だった 自殺を考えていてそんなこと言われたらもう何も言い返せないじゃないか!なんて思う人もいるかもしれないけれど私は違った、確かにそうだと思ったのだ、でもなんか嫌だ、なんか納得できない、私はそう思い続けた、しかし結局私は何も言わず病院を出て家に帰っていった。
「ただいま〜」と私が家のドアを開けると母がいた。
「おかえり」と言ってきたが私は母の顔をまとも見れなかった。母はいつも通り私を優しく抱きしめてきた。その時の母の顔を見ると、とてもじゃないけど死ぬとか言えなかった。母は泣いていた。多分私の心の中を読み取ったのだろう。母は優しい声で言った。
「ねぇサヤさん私はね、あなたに生きてほしい、生きてあなたの人生を見たい」
私はこの言葉を聞いてまた涙が出た、こんなことを言われると思っていなかったから……そして私は母に抱きついたままずっと泣いてしまった。母もずっと泣いいるのかと思っていたのだがなんと母は笑っていた、その笑顔を見ているだけで私は幸せになれる気がした、しかし私は泣きながらこう思った。(お母さんは強いんだ)
それからというもの私は自分の命をどうするべきか考え出した。自殺を考える人は、きっと自分を苦しめた人やものに対して復讐したいと思っているのだと思う。だから、そういう人たちは自分が苦しめられたり傷つけられたものを、自分も同じように傷つけて苦しめたいと思うのではないだろうか? ではもし仮に私が死んだとする、それで母が悲しむだろうか、いや悲しみませんよ。むしろ喜びますよ、母にとっては娘より大事なものはないし娘がいないなら世界にいる意味もないと思っているような女ですから、母は私が死んだところで別に困りません、それに母は私の事を愛してるとは言ってくれたが、愛していると言う感情はないらしい、なぜなら私がいても邪魔なだけ、私がいなくても誰も困らないからだとか……私は正直この親にしては珍しくまともな方だと思っていたのだがここまで酷いものだというのは衝撃的だった、だがそれが普通なのだ、だって親子って他人なんだから、親が子を本気で愛するなんてまずない、あるとしたら偽物の家族ごっこである それに比べて私は、父からは殴られ罵られ母は毎日泣いてばかり、私は父の事が憎くてしょうがなかった。だけど父が暴力を振るうようになったのは私が産まれてかららしい、母曰く、あの人は産まない方がよかったって思っていたらしい。
まぁこれは本当なのか嘘なのかわからないけれど、とにかく私の父親は最低の男であった、父は昔、浮気をして相手の女性と逃げたそうだが、母は今も父と連絡をとっているようだ。それはさておき私が死ぬということは、私の両親にとってプラスになることは一切ない。つまり、私が死んだとしても、私に殺された人が可哀想だとか、私の大切な人が亡くなったことで傷ついた人たちの心の痛みがどうたらこうたらということはないのである、そんなことわかりきった上で私は死にたいと願い続けているのであるが……しかし私が死んでも誰も困らなかったとしても私が生きていた方が誰かの為になるかもしれない そんな風に考えて私はもう一度考えた結果結論に至った、やっぱり死のうかなと……私は本当に死ぬ覚悟を決めて次の日実行に移すことにした
「お母さんごめんね」
と言って家を出ようとしたとき、母がいきなり話しかけてきた。私はビクッとして立ち止まってしまった、母は続けて話してきた。
「ねぇどうしてサヤさんはいつもそうやって謝るの?」と聞いてきた。私は何も言えずにいた、すると母は突然立ち上がり部屋を出ていこうとしたが、ドアの前で振り向いて
「サヤさん私はねあなたが大好きですよ」と言って部屋から出ていった。私はその言葉を聞くとなぜかとても安心感に包まれることが出来た。多分この世で一番聞きたかった言葉だったと思う。私は母の優しさに感動して少し泣きそうになっていた。
しかし私は泣いている暇などなかった。私は早く死ななきゃいけないのだ。私は家を出て、いつも通っている病院へと行った、病院に入ると私はいつもの担当医のところへ直行した。
「先生お久しぶりです」
「あ〜、サヤさん、どうしました?」
「ちょっと先生に相談があって」
「そうですか、とりあえず座ってもらえますか」と促された。
「で、何でしょう相談って」と担当医は真剣な顔で言う。私は昨日の夜決めたことを伝えた。
「はい、私は今から死ぬつもりです」と言った途端、担当医の顔が変わった。いつも優しい表情をしている人だったのだが、今日に限っては無表情だ。
「そうですね、その方が良いと思いますよ」と淡々と喋る。
「え?それだけ」と聞くと
「はい、あなたはまだ若いんですから人生まだまだこれからじゃないですか、死ぬのはもう少し後にしたらどうですかね」
「いや、もう私の人生終わりました。生きる意味がないので……」
「じゃあなんの為に生きてるか考えれば良いじゃないですか」
「なんのためかぁ〜」私は腕を組み考える
「ほらサヤさんは生きてないとわからないこともあるじゃないですか」
「んー例えばどんなこと」
「そうだなぁ〜」と悩んでいる様子
「たとえばあなたが死ぬのは私に何か得することがあるの」
「ないです」即答する
「なんにもないじゃん!私はねただただ辛いだけ、あなたには私の辛さがわかるの」
「いや全然わからないけど」とまたもや即答
「だからあなたには何も関係ないんだって」
「でもあなたが生きていないのは事実だし、もしあなたが死んだ場合悲しむ人もいるかもしれない、でもあなたには何もできないんですよ」
「確かにそうだよね」と言いかけた時、ふとあることを思いついた。私は自分の手を見つめながら言う
「もしかしたらこの手があなたに傷をつけてしまうかもしれない」と私は言ってみた、その瞬間担当医が笑った
「プフゥハハッ」
私はその反応に戸惑っていた
「何がおかしいの!」
「いやごめんなさいね、サヤさんがあまりにも面白いことを言うから」と爆笑していた。
私はイラついて怒鳴っていた
「なによ!そんなに笑わなくてもいいじゃない!」
すると担当の医師は笑いながらこう言った
「はい、すみません、いやねあなたに生きてほしいっていう私の思いもわかってほしいんだけど、私はね死ぬ人の最後の望みを聞いてあげたいなと思ってるんだよ、それにさっき私が言ったことは全部あなたの心の声でもあるんだって、だから私はあなたの心の闇を少しでも明るくしたいと思ったの、だってそれがあなたの仕事だもの、まぁこんなこと言ってもあなたの心に響かないかもしれないけど、ただ私はね、まだ死にたくないと思っている人を死なすのは絶対にダメだと思っているのですよ、それはなぜだと思う?」と聞いてきた 私は黙っている
「はい時間切れ〜、正解は自分が嫌だからです、はい、これで私の言いたいこと全て言いました、ではサヤさん頑張ってください」
「どういうことですか?」
私は先生の言っていることが理解できなかった。
「サヤさん生きていれば100点満点ですよ」
私はまた泣いた、そして泣きながら
「はいありがとうございます、先生は優しいんですね、私を励ましてくれて、でも私はもう決めているので行きます、さようなら先生、そして今までお世話になりました」
「はいさようなら、元気で」
とお互い別れを告げた。私は歩いていくうちに涙が溢れ出して止まりませんでした。そしてついに自殺場所へと辿り着いた。そこは海が見える綺麗な丘の上にある大きな木の下でした。
そこには私以外誰もいない、私はここで飛び降り自殺をすることを決めていました。下を見ると地面が遠くて少し怖かったのですが意を決して木から飛び降りようとしました
「待ってくれないか」
突然後ろから声をかけられた。その男はスーツを着ていて背が高かった、私と同じ目線くらいの高さに頭がくる身長差のある人だった。誰だろうと振り返ると私は驚いた。そこにいたのは父であったからだ、父は私が自殺しようとしていることを知っているはずなのに、ここにいること自体が驚きだった。私は父が嫌いなのですぐに逃げようとしたが、なぜか父の顔をみると足が震えていた。
すると父はこう言ってきた
「俺の話を聞いてくれ」
と父にしては珍しい真面目な顔で言うので私は逃げることができなかった。私は父が話すのを待っていましたがなかなか話し出さないので私が先に話しかけた。
「あのさお父さん、私さぁ、ずっと考えていたのよ、私はこの世にいちゃいけない存在なのかなって、だって私の親が私のこといじめてくるなんておかしいでしょ?それにさ私、学校で嫌われているのよ、私の味方は誰もいなかった。
私の友達はみんな私のこと無視したり馬鹿にするだけで私のことを見てくれなかったのよ、ねぇどう思う、私の話聞いてくれるって言ってくれたじゃない」
「すまなかった、本当にごめんな、でもお前のこと愛しているんだ」
と謝られた、しかし私には信じられなかった。
「なによ、急に愛しているとか、嘘つくんならもっとマシな事言ってくれないと、気持ち悪いから」
「俺は本気だ」
「ふざけないでよ、あんたが本気で私の事を愛しているならなんで私のことを殴ったり蹴飛ばしたりするわけ、なんにもしてないじゃない」
「ごめんな、ほんとにごめんな、愛しているからこそ、こうしないと、こうしなきゃって思って、愛しているのは間違いない」
私は怒りを通り越してあきれ果てて父を無視して走り出した。だが父の方が早く、私が逃げた方とは逆の方向へ行き、私が父に追いついてしまった。
「サヤ待て」
私は立ち止まらず、走るスピードを上げる、しかし父はどんどん近づいてきていてとうとう私の手を掴んでしまい、父はそのまま私を抱き寄せてきた、私は必死に抵抗するが父は力強く抱きしめてきた、すると父は私に向かって泣き始めた。私は父に対して抵抗をやめた。私は父が泣いているところを初めて見たのである。私はびっくりした。父は私の肩を掴み私の顔を見てこう言ってきた。
「サヤ頼むから死のうとなんてしないでくれ、お父ちゃんはお前のことを愛していて大事にしているんだ、お願いだから死ぬなんて言わないでくれぇ〜」
私は泣きそうになっていた。
私は今の父の姿を見たとき母の言葉を思い出していた
(ねぇどうしてサヤさんはいつもそうやって謝るの?)この言葉の意味がやっとわかった気がした。母は私のことが大好きだとよく言ってはいたが、本当に好きだから謝っていたのではなく、私のことを愛していなくても謝罪することで、私が自殺しようとすることを阻止できると踏んでいたのだ。つまり母は自分の命よりも娘の私を優先して私のために謝っていたということだ。母の愛情を感じ、私は嬉しくてしょうがなかった。私は母があんな女とは思えない、やはり母はすごいと改めて実感したのと同時に母が憎くなった。母が謝る必要はなかった。私にとって邪魔なだけだったのだから……
それから私は父に連れられて近くのカフェに入り、そこで父と話をすることになった。父は落ち着いた様子だったが私はまだ興奮が収まらなかった。
そんな時先生が言った生きていることは100点満点ですよの発言を思い出した。
「父さん、生きていることは100点満点ってどういうことだと思う?」
と聞くと、「え?なんだそれ」
「いいから教えて」
「うーん、そうだなぁ、じゃあ質問変えるけど、人はなぜ生きると思う」
「それは……死ぬのが怖いからかな」
「そうだな、じゃあ人が生きる理由は何だと思う」
「生きる理由……」
私は悩んだが、思いつく言葉は何も出てこなかった。
「やっぱり何も出てこないか」
と少し笑われた
「じゃあさ逆にさ、サヤさんは生きる意味はあるのかい」
と聞かれたので私はこう答えた
「生きる意味はないと思うけど、死ぬのは怖い、だから生きてる」
すると父は真剣な表情でこう言った
「じゃあ生きる意味を見つけた方がいいよ」
私は黙ったまま下を向いていた。すると
「じゃあこれから生きる意味を見つけるための人生ゲームを始めようか」
といきなり意味不明な発言が飛び出してきたので私は少し戸惑ったが、父の真剣な表情に負け、とりあえずやることにする。
「ルールを説明するぞ、これから3つのことを実行する、1つ目は、人と関わる、2つ目は、感謝の言葉を心の底からたくさん伝える、そして最後の一つは死ぬのを我慢する、この三つを実行すればOKだ」
と簡単に説明してくれた
「それだけ」
「そうだ」
「簡単だね」
「まぁそうだが、これはとても大事なことなのだ」
「まぁいいややってみるか」
私はやる気はなかったが、一応最後までやることにした。「じゃあまぁまずは最初の項目、人に関わろうだな」
「でもどうやって関われば良いんだ」
「んーそうだなぁ〜、例えばクラスの友達と喋ってみたり、そのあと遊びに行ったり、学校行事で同じ班になった人と話したりする、などだな」
「なるほど、で、その方法は」
「うーんそうだなぁ〜まぁいろいろあるが、例えば俺と遊ぶのもいいんじゃないかな、今日は無理かもしれないけど明日一緒に出かけるか」と誘ってくれた 私は「いいの」と聞いたら「もちろんだよ」と答えてくれたので私は「ありがとう」と言った
「どういたしまして」
「で、どこ行くの」
「まだ決めていない」
「まじで」
「おう」
「おい」
と二人で言い合って大笑いしていた。すると店員さんが来て「あのぉお客様申し訳ありませんがもう少し小さな声でお願いします」と言われたので私達は黙った。
「ごめんなさい」
と私は小さくつぶやくと
「いえ大丈夫ですよ」と言って去っていった。
「よし!これでオーケーだ!」と父が叫んだので私は驚いてしまった。
「急に叫ぶな」
「あっ、すまぬ、ついテンション上がってしまって」
「まあいいよ、次は何をするの?」
「ああ、次はな感謝することを伝えるんだ」
「どんなことに感謝を伝えればいいの?」
「それはサヤさんが決めて構わない、ただ相手に伝わりやすいことを考えるんだ」
「わかりました」
私は少し考えた後こう決めた
「私を産んでくれてありがとうございます」と私は父に伝えた すると父は「うん」と言って涙を流していた。
私は父の涙を見た瞬間私まで泣いた、私と父の泣き声が静かな店内に響き渡っていたが、周りからの冷たい視線も感じた。私は涙を止めようと必死だった。すると父は「ちょっと外行こっか」と言い店を出た 私たちは海が見えるベンチで座って海を眺めていた。そしてしばらくすると父が落ち着かない様子で「どうだい気分は」と聞いてきたので私は「すごくスッキリしたよ」と答えた。父は「よかったよ」とだけ言ってまた無言になってしまった。
私には何を話せばいいのかわからないので、とりあえず父にこう聞いてみた
「ねぇ私に生きてて欲しいんでしょ?なんで死んじゃダメだって思ったわけ」するとすぐに答えてくれた。
父は小さい声でゆっくり答えた。
「俺はお前のこと大好きだし大事に思っているんだよ」
私は照れくさくて顔をそむけた。そして父は続けて言う。
「確かにお父ちゃんとお母ちゃんがやったことは間違っていた、だけどそれでも俺はお前のことが好きだから助けたいって思った、それだけなんだ、それに俺が死んだ時に俺のことを思い出す人がいたらきっと寂しいと思ってな」と父は悲しそうな顔をした。私は「お父さんは私のこと大好きなのかぁ〜」と冗談っぽく聞いてみると、
「そりゃもう愛しているさ」と言われ私はさらに恥ずかしくなり、つい「はいはい」と言うしかなかった。私はこの気持ちを隠すために「私、友達作るよ」と父に伝えると父は
「友達って作れるものなのか?サヤ」と聞いてくるので私はこう答える。
「作れないかもね、でも友達じゃなくても友達になるって考えればいいんじゃない」と言うと
「なにその考え方、変なんだけど」と思わずツッコミを入れたが父はとても満足した様子でこう言った。
「サヤは優しい子だな、俺の娘とは思えないくらい」
となぜか馬鹿にされたような気がしたが、嬉しかったのでスルーした。すると、今度は「俺がいなくなった時はお前一人で生きていけるのか」と心配してきたので、私はこう言った。
「大丈夫、なんとか生きてくから、だからその時は父さんの好きなことを私にしていいよ」
「本当か」
「でもあんまり痛かったりするのは無しね」
「わかってるって」
と話しながら私たち二人は家へ帰っていった。
家に帰ってからは父といろいろな話をして楽しんだ。
「サヤ、100点満点だ」と言われる度に嬉しくなった。父は私が死にたいと思っていることも知っていたはずなのにこんなことを言ってくるとは予想していなかったのである。私は父が本当は私に対してどう思っていたのかという疑問を聞くことにした。
「ねぇ父さんは私のことをどう思っていた」
父は真剣に私を見つめてこう言った。「俺はお前を愛している」
私は「そうかぁ」と呟き、「お父ちゃんは私のこと好き」と聞くと「もちろんだ」と即答してくれた。私は少しニヤけてしまった。
私は先生が言っていた生きていれば100点満点の意味がやっと理解できたのである。
先生の言葉を借りると私の両親は私の人生を採点してくれる存在だったということになる。
ありがとう先生これからも100点満点で生きます。