後編
二月三日、節分の当日。
「はい、これ使って晃ちゃん、今夜は鬼になってね」
「えっ? これって……」
彼女が私に手渡したのは、下着にしては小さすぎる小箱。
中身はコンドームだった。
「うん、ちょっと予定が変わっちゃった。虎柄のパンツ、見つからなくて……。でも、これも虎柄だから大丈夫だよね?」
外箱も小袋も、確かに黄色と黒の虎模様だ。ただしコンドームそのものに関しては、開封するまでわからない。
虎柄のゴムというのは、ちょっと想像つかないが……。孝子の方では、そう解釈しているらしい。
「パンツと同じで下半身に付けるものだし、勃起を角に見立てたら、コスプレ用の角を用意する必要もなくなるし。一石二鳥だと思わない?」
下品な冗談だ。私が顔をしかめると、彼女も苦笑いを浮かべる。
「まあ、それは半分冗談としてもさ。これなら下着以上に普段も使えるし、ちょうど節分の『鬼は外、福は内』の理念にも合致するよね?」
「節分の理念……?」
「ほら、コンドームってそういう役割でしょ。ゴムの内に出すことで女性の体の外へ、ってこと。内と外だよ!」
「いやいや、それはこじつけのような気が……」
孝子の理屈を否定しながら、私はふと、先日の会話を思い出していた。
あの時、彼女は「普段から虎柄を使うようにしたら、もっと立派になれるのではないか」と言っていた。
パンツなので深く考えていなかったけれど、実際に彼女が買ってきたのはコンドームだ。
これは男性器に被せるものだから、虎柄のコンドームが意味するものは……。
もしかすると彼女は、私のアレを現状では不十分と感じて、もっと立派にして欲しい、というメッセージを送ってきたのだろうか?
(「彼女と過ごす節分の夜」完)




