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彼女と過ごす節分の夜  作者: 烏川 ハル


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1/2

前編

   

「クリスマスは私がサンタの格好したから、節分は(こう)ちゃんの番だよ」

 孝子(たかこ)がそう言い出したのは、一月の終わり頃だった。

 付き合い始める前から私の部屋に入り浸っており、恋人同士になった後は、一週間のうち一日か二日くらいしか自分の家に帰らなくなっている。こういうのを半同棲というのだろう。

 

「節分というと……。鬼のコスプレかな?」

「そう、それ! 衣装は私が用意してあげるね」

 一般的に、女性は男性よりもイベントや記念日を大切にするというが……。

 孝子の場合、付き合い始めてから一週間とか一ヶ月とか、そういう『記念日』には、特にこだわりがないらしい。しかし年中行事に相当するイベントは大好きで、仮装して遊ぶという習慣があった。

 二人だけのコスプレ・パーティーだ。ただし二人両方ではなく、片方だけ仮装するのが孝子式。

 いつもと違う恋人の姿を見る時は新鮮で楽しいけれど、普段着の彼女の前で自分だけ非日常の格好をする時は、少し照れ臭い。

 最初の頃は、そんな気恥ずかしさもあったものの、今ではすっかり慣れてきていた。


「鬼といえば、虎柄のパンツだよね。せっかくだから、普段の下着としても使えそうなパンツ、探してこようかな?」

「おいおい、さすがにそれは……」

 仮装用のパンツを穿()いて日常生活を過ごす。そんな自分自身を想像したら、眉間にしわが寄ってしまう。

「あら、何か問題ある? 晃ちゃんが下着姿になるの、私の前だけだよね?」

「もちろん! うん、問題なんて何もないよ」

 急いで彼女の言葉を肯定して、私は笑顔を作った。

 確かに理屈の上では、そうなるのだろう。私だって浮気をするつもりは皆無だが、でも感覚としては「浮気云々とは別に、どこかで誰かに見られる機会があるかも」と思ってしまう。


「そういえばさ、なんで鬼のパンツって虎柄なんだろうね?」

「ああ、それなら聞いたことあるぞ。確か干支が関係してるような気が……」

 彼女の方から少し話題を変えてくれたので、それに乗っかることにした。

「干支?」

「いや、私も詳しくないんだけど……」

 孝子と喋りながら、スマホで検索。出てきた説明を彼女に見せる。

 それによると、根本にあるのは陰陽道の概念らしい。鬼が出入りする『鬼門』が北東で、これが丑寅の方角に相当する。つまり牛と虎だから、鬼は頭に牛のような(ツノ)を持ち、腰には虎柄のパンツを穿()いているそうだ。

「へえ。頭の(ツノ)って、牛だったんだ……」

「そうみたいだね」

「今まで私、鬼が虎のように強いから、パンツも虎柄なんだと思ってたわ。ほら、虎って強さの象徴でしょう? 夢占いでも虎は権力や名声、絶大な力を意味してるから、虎の夢を見ると立派になれる、って言われてる」

「うん、そうみたいだね」

 占いみたいな分野は彼女の方が詳しいので、私は適当に頷いておく。

「だからさ、晃ちゃんも普段から虎柄の下着使うようにしたら、もっと立派な男になれるんじゃない?」

「そこに話が戻るのかよ」

 軽く笑いながらツッコミを入れて、その場はそれで終わったのだが……。

   

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