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第4-8話 釣りスキル、超進化(後編)

 

「なるほど、フィルは私の異世界リンク魔術の研究を引き継いでくれたのか……できる孫をもって幸せだね」


 じゅうっ……。


 素焼きのトラウトサーモンの切り身が、からりとバターで揚げられる音がする。

 隣のフライパンでは、ソイソース、トマト、レモンをベースとしたソースを作るイヴァさん。


 芳醇なバターの香りが部屋いっぱいに広がる。

 オレたちはイヴァさんが住んでいる家に招待されると、晩ご飯が出来上がるのを待っていた。


 赤い絨毯がひかれたリビング。

 イヴァさんが立っているキッチンと連続しており、傍らの暖炉では暖かそうな魔術の炎が燃えている。


 右の方に視線をやると、沢山の蔵書に何に使うのか見当もつかない様々な器具に、色とりどりの薬。

 一階はリビング兼イヴァさんの研究室になっているようだ。


「二階には使っていない部屋があるから、今日はそこで寝るといい……ああ、防音はしっかりしているから、頑張りたまえよ?」


「?? なんのことですか?」


 バチン、とウィンクをしながら孫弄りも忘れないイヴァさんに苦笑する。

 コレって祖母であるイヴァさん公認なのかな……いやいや、もしフィルとそういう関係になるときはもっとロマンチックなシチュエーションがいいし……。


 レイル・フェンダー18歳、脚フェチだけど心は意外に乙女なのである。


「お祖母様……この香りは、”むにえる”っ! レイルのそれも美味しかったですが、久しぶりのお祖母様の手料理、期待していますっ!」


 どう見ても恋より飯なフィルの様子を見て頬がゆるんでくる。


「全くこの子は……少しは我慢を覚えなさい。 料理の腕は少しくらい上達したのか? そのままだとクソ豚お嬢様になるよ」


「うぐっ……!?」


 切れ味抜群の毒舌でフィルをからかうイヴァさんだが、その表情はとても嬉しそうで。

 祖母と孫のじゃれ合いに、心が温かくなる。


「さて、出来上がったな……レイルくんが作ってくれたパスタと合わせ、堪能するとしようか」

「全く、レイルくんの方が圧倒的に女子力が高いな」


「うぐぐぐっ……!?」


 トラウトサーモンのムニエルを作り終えたイヴァさんは料理をテーブルに広げ、楽しくも暖かい夕食をオレたちは堪能したのだった。



 ***  ***


「”世界を分けた超魔術”か……確かにフィルの言う通り、古代レティシア王国の特殊な魔導術式の一部だね……レイルくんの言うように、4枚の石板のかけらに書かれた術式をつなぎ合わせれば、再現することも可能だろう」

「なるほど、これらの情報はこの国の王家が管理していたのか……世を忍んで隠居していた私では届かなかったわけだ」

「いやまったく面白いではないか我が孫よ! 久々にあれをやるかフィル!」


「はいっ、もちろんですお祖母様!」


 食事を終えた後、情報交換を兼ねてオレたちが集めた情報を説明する。

 流石はフィルの師匠と言うべきか……フィルの説明が続くにつれてイヴァさんのテンションはどんどん上がっていき……。


 愛弟子であるフィルを連れて研究室(ラボ)の方に走っていってしまった。


「良い、良いなっ! この世界のスキルカード術式、魔導形態……大変に興味深い」

「ああ、インスピレーションが湧いてきたよ!」


「お祖母様! わたくし向こうでコツコツとレア素材を集めておりました……ほら、マンドレイクの熟成種子がここに」


 イヴァさんとフィルの会話はどんどん熱を帯びていき……イヴァさんの手には紫色に光る謎の液体の入ったグラスが握られている。


 ボコボコとヤバい音を響かせるそれは、どう見てもまともな薬品には見えない。


「おお! 素晴らしいな我が孫よ! わざわざこちらの世界に持ってきたのか?」


「いえお祖母様、そちらのレイルが「アイテムフィッシング○」とか言うイカレスキルでわたくしの部屋から釣り上げてくれましたわ!」


「なるほど、先ほどフィルが言っていた異世界リンクスキルの一種だねそれは……よい、実に興味深い」


 ぱしゅうう……


 イヴァさんの手が、おぞましい黄土色をしたマンドレイクの熟成種子をグラスに放り込む。

 とたんに吹きあがる妖しすぎる青白い煙。


 気のせいか、イヴァさんとフィルの瞳のハイライトが消えた気がする。


「先ほどから気になっていたんだ……レイルくんのスキル……それに、いい魔力臭がするではないか」


「お分かりになりますかお祖母様!! そうなのです、あの臭いを嗅ぐとわたくしの身体が熱く、魔力も活性化して……」


「ふふふ、まさに私の孫娘にふさわしいモルモットだ……いやなに、痛いのは最初だけだよ……」


 イヴァさんとフィルは、いよいよ悪魔でも召喚されそうな色になったグラスを手ににじり寄ってくる。


 ヤバイ、フィルにふさわしいと言われるのは光栄だけど……って今この人モルモットって言ったよね!?

 本能的な恐怖を感じたオレは後ずさるが、外は猛吹雪、ここは敵のホームグラウンド……抗う術をオレは持っていなかった。


「くふ、どこに行くのかな、レイルくん」


 ばさっ!


 突然壁から生えてきたツタがオレの手足を拘束する。


「ふふ、いい格好ですねレイル……ああ、ゾクゾクしてしまいます」


 フィルの瞳が怪しく光り、ぺろりと出された舌に、唾液が蠱惑的に光る。


 ぴょん!

 ぎゅっ……


 ジャンプ一番、すらりとしたフィルの脚がオレの腰に巻き付き、身動きの取れなくなったオレの口めがけて、緑色に変色した液体が注ぎ込まれる。


「あっ……アーーーーーッ!!」


 ゾクゾクとした快感が背中を走り抜ける……性癖が更にぶっ飛んでしまいそうな一瞬の時を経て、オレの身体は光になった。


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