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推理令嬢シャーロットの事件簿~謎解きは婚約破棄のあとで~  作者: あけちともあき
魔法のメガネ事件

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第162話 助教授の行方

「い、いいじゃないか少しくらい! 遺跡の発掘物を手元に置いておいてもー!! や、やめろー! ウグワー!」


 何やら叫びながら、教授が連れて行かれてしまった。

 自分が被害者だと思っていたら、あっというまに犯罪者になってしまったという。


「発掘品の無断所持は禁止だものねえ」


「ああ。これは国の財産だからな」


 私の言葉にオーシレイが頷く。

 ということで、事件に関しての依頼人がいなくなってしまったような形だけど。


 やっぱり書生が殺されたことに違いはないので、私たちの捜査は続くわけだ。


「まさか彼が、そんなことをする人だったなんて……。いや、前々から発掘物に興味があって、ちょこちょこ借りていったりはしていたようだけれど、まさかそのまま着服していたとは……」


 ケイ教授が衝撃を受けた様子で呟く。


「どの本も、似たような見た目の古びた本の間に挟み込み、目立たないようにしていますわね。彼はこれを使って商売をしようとしていたのか、それとも物欲を満たすためだけに着服していたのか……」


 シャーロットが一冊を取り出して、開いた。

 遺跡からの発掘品だという本に、ページはない。


 開かれた表紙の中身には、きらめきを放つ二枚の板が存在していて、そこに文章や映像が映し出されるのだ。

 これが、遺跡から発掘される本。


 それぞれの本には未知の記録が大量に眠っていると言われ、エルフェンバインでは最重要発掘品として扱われている。

 道具は、それが意図した使い方をするだけだ。

 だが、知識はそこからいかようにも発展させることができるので、悪用された場合の危険度が段違いというわけ。


「これ一冊で、屋敷が一軒買えるわよね。……だけど、これだけ高価なものってエルフェンバインだと売れないでしょ」


「ですわね」


 シャーロットが頷いた。


「だからこそ、ヴァイスシュタットなのですわ。ここならば交易でやって来た商人を使い、外国で売ることができますもの。ただ……物が悪すぎましたわねえ。本は目立ちますもの。だから手放して売る先が見つからなかった。そういうことでしょうね」


 各国ともに、発掘品の海外流出には目を光らせている。

 エルド教の人々のみ、彼らが開発した道具を持ち込むことが許されている程度だ。


 発掘品は本クラスのものなら、各国のパワーバランスを変えるとすら言われているのだ。

 ただ、あまりにも中身が難解なので、解読が進んでいないこと。

 解読を行える技術者が極めて希少なことから、全く各国の戦力になっていないだけ。


「そう言えば! 発掘品を管理していた助教授がクビになりまして。彼女が目を離していた隙に、発掘品が行方不明になったからと」


「それは……怪しいなんてものじゃありませんわね。重要な情報ですわ、ケイ教授」


「そ、そうですか!?」


 あからさまにケイ教授が嬉しそうなのだ。


「わたくしが思いますに、まだ犯人は屋敷の中にいますわね。なぜなら、ただの物盗りだったとして、何も盗まれてはいませんもの。そしてこの眼鏡を持ち込んだということは、目的は遺跡の発掘品。それらが元の位置にあるのですから、書生を殺した時点で発見され、どこかに身を隠していると考えるべきでしょうね」


「シャーロットは、犯人がその助教授だと思っているの?」


「ええ。犯人の動きがあからさま過ぎますもの。これが別の方向に誘導しようとしているのでしたら、ジャクリーン並みのとんでもない大犯罪者ですわ。ですけどえてして、こういう事件はそのまま理解するのが解決への早道だったりしますのよ?」


 シャーロットは書斎を歩き回り、ある一点に目を向けた。

 そこは、小さめの本棚が二つ並んだ場所だ。


 ……?

 なんだろう。

 本の並びに違和感を覚える。


「隠し扉だな」


 オーシレイが呟いた。


「右と左で、明らかにおかしな本がある。見ろ。本棚に固定されているし、中身は紙ではなく板だ」


 彼が本を掴んでぐっと引っ張る。

 逆側をシャーロットが引っ張った。

 すると……。


 ガラガラと音を立てて、本棚が左右に分かれる。

 そこに空いていたのは、ちょっとした空間だった。


 内部は前面が本棚になっており、たくさんの本が収められている。

 そして目を見開きながら私たちを見ていたのは、小柄な女性だった。


「見つけましたわよ、元助教授さん。あなたがこの事件の犯人ですわね?」


 シャーロットが尋ねると、彼女はコクリと頷いた。


「わ……私が殺しました。私が犯人です。でも、あいつは」


「遺跡発掘品不法所持ということで、逮捕されましたわ」


 シャーロットの言葉に、彼女はホッとしたようだった。


「良かった……。それじゃあ私は、大人しく捕まります。見つかってしまったとは言え、無関係な人を殺してしまったから」


 色々と事情がありそうだけど、それを聞き出すのは憲兵隊の仕事だろう。

 私たちは彼女を外に連れ出すと、憲兵に引き渡した。


「あっという間に事件を解決してしまった……!! 噂の推理令嬢は本当だったのですね!!」


 憲兵が目をキラキラさせている。

 眩しい……!


 シャーロットとしては、これは実益を兼ねた趣味だと思うんだけど。



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― 新着の感想 ―
[一言] 推理令嬢 この世界では、まだ「探偵」という職業はないらしい このままだと、シャーロットが異世界初の探偵になるかも
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