第56話
よろしくお願いします。
4月1日 日曜日
皆で朝食を取った後、王城に招待されているので、王城に向かう事にした。
着て行く服は、先日、エルフの国で買った聖布で作ったローブだ。
ちょっとオシャレなデザインのお出かけ用だ。
もう、革のローブを着ている人は居ない。
もちろん、暑いからだ。
これからの季節は聖布だ。
傷みやすいので、聖布の服は、全て物理攻撃無効(階位7級)と魔法攻撃無効(階位7級)を付与してある。
これで虫食いは無いだろう。
家の外には、王城からの迎えの馬車が、早朝から待機していた。
馬車から執事風の男が出てきて、
「もし、宜しければ、イザベラ様も、御一緒に宜しいですか。」
と言う。
イザベラに確認すると、一緒に行くと言うので、イザベラも連れて行くことになった。
イザベラは、聖布のドレスだった。
用意周到だな。
「イザベラ、私が王城に呼ばれているのを、知ってたのか。」
と聞くと、
「はい。」
と、元気の良い声で返事をした。
まぁ、悪い話では無さそうなので、なぜ知っているのかは追及せず、王城に向かった。
王城に着くと、応接室に案内された。
応接室の中に入ると、国王、公爵、大司教が、ソファーの前に立ち、迎えてくれた。
部屋の隅には、近衛騎士団長と魔法師団長が立っていた。
公爵から、
「どうぞ、お掛け下さい。」
と言われ、イザベラと2人で、3人掛けソファに座る。
お互いに形式的な挨拶を交わした後、イザベラとの婚約の話から、結婚に向けての話となった。
「ハルト様には、爵位を受けて戴きたい。」
と国王が言うので、
「『爵位を受けろ』って事は、『俺の部下になれ』と言う事か。」
と問いただすと、
「滅相も無い。イザベラ公女の夫となると、平民では都合が悪いからです。」
と、国王が言い、公爵からは、
「それにハルト様が、爵位を得れば、御息女も貴族となります。将来の事を考えれば、得るものが多いと思います。」
と言う。
「ああ、そういう理由なのは判ってるよ。意地の悪い言い方をして悪かった。だけど、爵位を得る気は無い。」
と言うと、大司教が
「ハルト様、使徒は、如何ですか。」
と言うので、
「使徒って、どういう意味ですか。」
と聞くと、
「我が、ヴィンツハイム教において、使徒とは、神の使いで在り、神の言葉を民に届ける者のことです。亜神であられるハルト様ですが、ガイア様の御言葉を伝えるという意味では、使徒という表現も、あながち間違いでは無いかと。使徒は、神殿の名誉職ですから、誰の部下でも御座いません。強いて言うなら、大地神ガイア様の部下となります。」
と言う。
「ああ、それは良いかもね。ある意味、しっくりくる。」
と返答すると、国王も胸を撫で下ろし、
「では、その方向で調整いたします。ハルト様は使徒であり、エスリンゲン国王の相談役で、宜しいですか。」
と言うので、
「ああ、良いけど、普段は仕事しないよ。どうしても解決できない事があれば、文字通り相談に乗るけど。それで良いか。あと、娘達は政略結婚しないからね。訳の判らん縁談とか持ってきたら、本気で怒るよ。」
と釘を刺しておいた。
大司教が、
「上手く纏まりましたな。」
と言い、公爵も頷いていた。
私は、
「下らん茶番は良いよ。最初から、これが落とし所だったのだろう。」
と言うと、3人とも黙ってしまった。
「まぁ良いよ。別に怒って無い。それより、奴隷狩りの件は、どうなった。」
と聞くと、国王が、
「近衛騎士団長から、聞いております。取り締まりを厳しくするように伝えてあります。加えて、エルフの奴隷は全面禁止の令を出しました。」
と言うので、
「判った。ありがとう。では、これを受け取ってくれ。」
と言って、
ブルーサファイアのブローチを国王と公爵に渡し、
「これは天使のブローチという魔道具だ。敵から身を守ってくれる。暗殺対策に良いと思う。デザインも男性用にしてあるが、どうかな。」
と言うと、早速、公爵が鑑定を行った様で、
「これは、素晴らしい。公爵家の家宝に致します。」
と言って畏まり、国王も喜んでくれた。
国王と公爵だけだと、可哀想だったので、
近衛騎士団長には、光の剣であるクラウ・ソラス
魔法師団長には、魔法出力16倍の叡智の杖
を、それぞれ渡し、
「昨日、帝都の迷宮を踏破した。そのトレゾールだ。使徒の称号を貰うので、そのお返しだ。」
と言って説明した。
叡智の杖は違うけど、面倒なので細かいことは言わない。
大司教には、デスサイスを渡そうとしたが、
「それには、及びません。私は、神に仕える身です。ハルト様が神殿に来ていただけるのですから、それ以上のものはありません。」
と、言って固辞された。
やはり、大司教に「死神の鎌」は、駄目だったか。
そして、今後の予定は、次の神の日の午前中、神殿で使徒の任命式があるらしい。
使徒は、公爵待遇らしい。
相談役は、役職でなく、国王の個人的な相談相手というスタンスらしい。
してやられた感があるが、悪い話じゃないので、受けることにした。
イザベラが居るので、この国に抱き込まれるのも悪くない。
そして、半年後、イザベラと結婚式を挙げることになった。
神父は、大司教が務めるそうだ。
私は、3年後を希望していたが、それは通らなかった。
皆の前で、イザベラが、強く反対したからだ。
「イザベラを連れて来なければ良かった。」と、本気で後悔したが、後の祭りだった。
昼前、王城から自宅に帰った。
娘達3人とソフィーにアイビィーも家にいたので、5人にイザベラと婚約していることを告白した。
半年後、イザベラと結婚する話もした。
オリビアは、驚いていたが、
「イザベラさんと幸せになってください。私は、娘のままで、良いですか。」
と聞いてきたので、
「当たり前だよ。ずっと、私の娘だよ。でも、イザベラの事は、母親じゃなくて、姉のつもりで良いよ。」
と言ったら、安心していた。
アメリアは、キョトンとしていたが、
「イザベラちゃんが、ママになるの?」
と言って、イザベラに抱き着いていた。
アイラは、
「私という婚約者がいるのに。私はどーなったの?」
と言うので、
「7年後だろ。待っとれ。」
と言って黙らせておいたが、イザベラがアイラに
「じゃぁ、将来はハルトさんの妻になるのね。ごめんね。側室で良いかな。許してね。」
と言っていた。
「いいよ。仲良くしようね。」
と言って、アイラとイザベラが手を繋いでいた。
アイビィーは、
「くー!取られたー!狙ってたのに。でも、しょうがないね。この間から、怪しかったし。」
と、色々と感づいていた様だ。
ソフィーは、
「そうそう、夜になるとねぇ。」
と言っているので、完全に感づいていた様だ。
皆、色々と言っているが、祝福してくれているのは、良く判る。
有り難いことだ。
昼ご飯の時、皆に、「次の神の日、神殿で使徒に任命される。」と報告した。
皆、使徒について知らなかったので、その辺りも説明した。
しかし、私が亜神であることは、話さなかった。
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