Can you forgive me? 4 『Can you forgive me?』
一時には図書館に居た。できるだけいつもとは違う恰好をし、伊達メガネもかけた。恐らくグラッセさんは待ち合わせ場所としてここを指定しただけだと思うから、私は図書館の中に居た。グラッセさんが来たらすぐに把握できるよう、窓際の席に陣取る。グラッセさんが現れてから外に出るつもりだ。
それにしてもここに居ると初デートのことを思いだす。いや、別にデートと意識していたわけではないのだが。あの時あんなに救ってもらったというのに、浮気を疑ってストーカーまがいのことをするなんて最低だろうか。……嫌われてしまうだろうか。
まだ三時まで時間があるため、適当に面白そうな本を探した。『おひめさまのせかい』の作者の星取子の作品を探したが、絵本コーナーには見あたらなかった。内容が暗めだったから、もしかしたら小説を書いているのかもしれないが、熱中しすぎたら意味がない。結局何も読まずに待ってみた。
窓側に座って外をしばらく眺めていると、人が現れた。グラッセさんだ。
私は外に出て、図書館の陰に隠れる。グラッセさんは電柱にもたれていた。たまに腕時計をみている。私も時刻を確認すると丁度三時だった。時計から顔をあげると、私は思わず目を見開いた。
いつの間にかグラッセさんの横には、綺麗な一人の女性がいた。長く黒い髪、陶器のように白くて綺麗な肌に整った顔、スラリと伸びた手足のおかげか身長も高い。モデルと言われても納得できるような美人だ。しかし彼女は何故か不機嫌そうだった。それに対しいつものように笑顔を浮かべるグラッセさん。彼は彼女に何か言ったようだけど、私には聞こえなかった。
私はすかさず二人の姿を、携帯電話で撮る。浮気したことが分かれば、ここに残る理由はない。あとはこれを見せて問い詰めるだけだ。
私がその場から立ち去ろうとすると、二人は顔を近づけた。角度的に接吻をしたようにも見える。というか、そうなのだろう。覚悟していたことなのに、胸が締め付けられた気がした。
帰る途中、自分が今日撮った写真をみる。
もし問い詰めて、「別れよう」と言われたらどうしよう。黙っていた方がいいのではないか。きっとグラッセさんに釣りあうのはあの綺麗な人だ。でも。
ここで問い詰めなければ、一生何かを勘違いしたままになってしまう気がした。悪い予感が頭をよぎり、思わず唇を噛みしめた。
空き地には寂しさを感じる程に、何も無かった。狭くて、周りが高く芝生になっている。その芝生からこの空き地には、無意味と思えるような短い階段がついていた。芝生の反対側には木が数本植えられている。ピンク色の花弁はほぼなくなっていた。私は時刻を確認する。午後二時二十五分。グラッセさんが来るまで、あと五分。
昨日の夜、私はグラッセさんに電話をかけた。『明日の午後二時半、四丁目の空き地に来てください』。近い公園ではなく、わざわざ遠い空き地を待ち合わせに選んだのには、下らない理由がある。告白された場所と浮気を問い詰める場所が同じなんて嫌だったからだ。
「どうしたのかな、こんな所に急に呼び出して」
グラッセさんが来て、芝生の方から私に言う。私のところまで降りる気はないらしい。私は訊く。
「グラッセさん。昨日は講義に出られたのですよね」
グラッセさんが頷くのを確認して、私は携帯電話の画面を見せる。遠いから見えないかもしれないと思ったが、グラッセさんはそれを確認することなく笑った。私は「これはどういうことですか」と、言おうとしたが、それより先にグラッセさんが言う。
「やっぱりついて来たんだよね。そうだよね。他人のプライバシーを守ることに疎い佳代ちゃんが、あんなふうに分かりやすい嘘をつかれて、しかも約束の場所までバッチリ聞こえたのに、ついてこないわけがないんだ」
私は眉を顰める。ついてこられると分かって、約束するとは、意味が分からない。でもそんなことは問題ではない。
「この女性、とても綺麗ですね。私なんかとじゃ、比べ物にならない。浮気したっていうのなら、仕方がないような気もします。でも」
「違うよ、佳代ちゃん」
グラッセさんは笑みを深める。不気味な程に。
「僕は別に浮気していたわけじゃない」
どうやら悪い予感はあったてしまったらしい。私は泣きそうになるのを堪え、気丈にふるまう。問い詰めるときに感情が先走るとろくなことにならないと、私は学んだ。だから動じていないように、あくまでも事務的に訊く。
「やはり、私の方が浮気相手だったのですね」
彼女の方が本命だという方が、自然だ。けれど、やはりあの時、私の家で聞いた言葉が嘘だと分かるのは、辛かった。しかしグラッセさんはかぶりを振る。
「それも違う。うん、佳代ちゃんのさりげなくポジティブな所は良いと思うけどね」
「じゃあ何なんですか! 私とこの人は!」
冷静にしようとしていたが、思わず声を荒げてしまう。そんな私を哀れむように見るグラッセさん。その表情は今まで見たことも無い顔で、少したじろく。けれどグラッセさんはすぐに笑った。本当に楽しそうに。……今までの笑顔は造り笑顔だったのではないかと、疑ってしまうほどに。
「ごめんね、佳代ちゃん。全部嘘なんだ」
「え……」
嘘、とはどういう意味だろう。グラッセさんはあの女性と付き合っていた。それを私が突き止めた。それを認めるのではないのか、あるいは否定するのではないのか。
「この子はね、うん、僕の彼女。綺麗でしょ? じゃあ君は何なのだろう。ちなみに僕は浮気をしていたわけでもなければ、ましてや君が本命なわけもない」
「なら」
なら、私は一体貴方の何だというのだ。グラッセさんは不敵に笑う。
「暇つぶしだよ」
その言葉の意味を理解するのに、数秒の時間を要した。けれど理解はできても意味は分からない。混乱する私に、優しく言う。
「訳が分からないって顔してるね。大丈夫、今に分かるよ」
するとグラッセさんは誰かに電話を掛けた。
「やっほー、久しぶり、どう調子は? つれないなぁ、相変わらず。そういえばさっきも言ったけど、僕今四丁目の空き地にいるんだ。どうせまだそんなに遠くに行ってないでしょ? 戻ってきなよ。種明かしの時間だ」
そう言うとグラッセさんは携帯電話をしまう。種明かし? 意味が分からない。
……思えばこの時グラッセさんは、本当に分かりやすい答えを示してくれた。
誰かが来るのを待っているのは分かるが、誰なのか分からない。私はグラッセさんにならって、芝生の向こうの道路を見る。その人が芝生に来たのを見て、私は思わず言う。
「どうして……」
そこに居る人のことを私は知っていた。克己君。
私の元交際相手。そしていじめの元凶。
克己君は私を見ると、哀れむような目をした。けれどすぐに視線をグラッセさんに向ける。グラッセさんと克己君は私に構わず話始める。
「どうして……約束は……伝えて……ですか? 彼女は……それでも……」
会話は途切れ途切れにしか聞こえない。それがとても歯がゆくて仕方ない。今すぐ芝生の上に上がってやりたかった。けれど何故か足がすくんで、動けない。
「大丈夫……見つかる……分かった……。あの人……場所は……やっぱり……」
あの人とは誰なのか。約束とは何なのか。何一つ分からない。私は思わず叫ぶ。
「克己君っ! どうしてここにいるんですか! どうしてグラッセさんと!」
克己君はこちらを一瞥することすらしない。ただ何も聞こえていないように、グラッセさんと話している。その様子があまりにも自然だから、本当に私は声を発していないのかもしれない。
「克己君っ……」
いつの間にか私は泣いていた。涙声になっていたからか、克己君は驚いて此方を見る。彼は迷うような素振りをみせると、静かに言った。
「……君が神様を隠すからだよ」
神様? 問い返そうとする前に、彼は踵を返しその場から去った。グラッセさんだけが残る。私はたどたどしくも尋ねる。
「どういうこと、ですか……? どうして貴方が、克己君と……? 私の元交際相手が克己君だって、知っていたのですか……?」
「知ってたよ」
はっきりとそう返すグラッセさん。
「全部知ってた。……君が克己君と付き合ってたことも、克己君が何故君を振ったのかも、いじめの元凶は誰なのかも。全部僕は知っていた」
「それは、私が言ったからですよね?」
「ううん。君が言うずっと前からだよ。いや、君と会う前から。君は克己君と付き合っていた。そして数日前に振られたばかり。きっともう少ししたら克己君は君に本当のことを教えるだろうってね」
「どうして」
「どうして?」
グラッセさんは笑みを崩すことなく、静かに言う。「常時笑顔」が彼のモットー。でも今や私にとって、彼の笑顔は恐怖の対象に成り始めていた。
「僕が克己君にそう指示したからだよ」
「……どういう意味ですか」
先程から私は質問してばかりだ。これではグラッセさんに嫌われるだろう。でももうそんな心配はいらない。だってきっと彼は元から、私のことを好きでもなんでもなかったのだから。……克己君がそうであったように。グラッセさんは愉快そうに笑った。
「おかしいとは思わなかったの? どうして君と僕は出会ったのか。どうして僕が学校に行けと言った翌日、克己君は本当のことを言ったのか。どうして僕は君が克己君に全てを告げられた後、都合よく電話を掛けたのか。どうして僕は君と交際を始めたのか。どうして僕はわざわざ彼女といるところを、君にみせたのか。僕が本名を名乗らないのは何故なのか」
実は私も不自然だと思ったことがあった。グラッセさんが告白してくれた日、彼は私の家に行くと言っ
た。知っているはずがないのに。最初はグラッセさんの早とちりだと思った。でも本当は、グラッセさんは既に私の家の場所を知っていたのではないか。
「最初から説明するよ。僕と克己君は君の家から取りたいものがあった。ある意味それさえできれば、君なんて用が無かった。でもついでだし、僕は暇つぶしにゲームを考えたんだ。僕は克己君に君と付き合って、いじめの元凶になり、その後君と別れることを指示した。彼の方が目的にご執心だったからね、少し嫌そうだったけど、それ以上に君に怒っていたからのってくれた。そして君は不登校になった。まさか僕が偶然手帳を落としたなんて思ってないよね?」
思っていない、少なくとも今は。きっとあれがゲームの始まりの合図だったのだ。
「僕は君と仲良くなった。……あの時、君が克己君に全てを聞いた時、最後に克己君が何て言ったのか本当は聞こえてたんだよね? 克己君が教えてくれたから知っている。でも君は僕に悪いと思ったのかな、隠した。それが正直に言えば滑稽で、笑いをこらえるのに必死だったよ。臭い言葉で君と付き合って、そして今別れる」
「じゃあ、あの時の言葉は全部嘘だったのですか? 私は悪くない、少しは灰色になってもいい、好きだという言葉も全部……」
「だから最初に、全部嘘だって言ったでしょ?」
「だったら、だったら何故ここまで面倒な事をしたんです! 私はどうでも良かったのでしょう?」
彼等の目的には心当たりがある。でも私は関係ない!
「趣味なんだ、こうやって君みたいに単純な人を欺くことが。こうやって信頼してくれた人に真実を話すのが」
「……それだけで?」
「うん」
笑顔で大きく頷くグラッセさん。
「ねぇ佳代ちゃん。教えてよ。今、どんな気持ちなのかな? 僕と出会ったのは運命か何かだとでも思った? あの絵本のお姫様に自分を投影でもした? 僕の安い言葉に勇気づけられた? ……本当に自分は愛されているとでも思った?」
グラッセさんは笑うのをやめ、軽蔑した目で私を見た。そして吐き捨てるように言う。
「一回裏切られた時に、君は気づくべきだった。誰かが他人に優しくする時には理由があるんだ。善意を見せつけるためだったり、他人の目を気にしているからだったり、誰かに言われたからだったり、今みたいに相手を嘲るためだったりね。少なくとも僕は善意だけからくる優しさなんて知らない」
なら、貴方は私に取り入るために、私を励ましたのか。自分の優しさを誇示するために、電話をしてくれたのか。私を恥と悔しさと虚しさでいっぱいにするために、好きだと言ったのか。いじめを自作し、傷ついた私を励まし、その姿を内心で笑うことが楽しかったというのか。
「そ、それこそ、何の冗談ですか……。いじめをグラッセさんが作ったなんて、克己君とつながっていただなんて、嘘ですよね?」
するとグラッセさんは再び笑った。
「嘘だと思う? じゃあいいよ、そうしよう。あの彼女は僕の姉、克己君については彼を更生させただけで最近知り合った、僕は君のことが大好きで、今日は誤解を解きに来た」
分かっている。そんなの嘘だ。だけどそちらの方が良かった。でもグラッセさんはもう茶番には飽きたようだ。溜め息を吐くと彼は言った。
「そうしてまた騙されたいの? 本当はさ、佳代ちゃん。君、気づいてたんじゃない? 自分みたいなゴミを好いてくれる人なんていないって。そう自分で言ってたよね? 取り柄が無いってさ。でも本当は自惚れてたんでしょ? 心の何処かで自分を正当化していた。克己君の言葉に傷ついたり、あの絵本に感化されたのだってそういう事でしょ? 『自分は最低だ。無力だ。でも運命は転がっているかもしれない。最低な自分だけど幸せになれるかも知れない』そうやって有りもしない希望に縋ってさ」
そうだったのかもしれない。私は結局、夢をみるだけの子供だったのだ。グラッセさんは小さく言う。ぞっとするような声だった。
「そういうところ、僕嫌いだったよ」
一体私は、何処で間違ったのだろう。
グラッセさんと出会わなければ良かったのか。あの学校に居なければよかったのか。彼等の目的が私の家にあったのがいけないのか。違う。きっと仕方がなかったのだ。もう運命だなんて幼稚な言葉は使わない。必然だったのだ。何だか私は疲れてしまい、その場に座り込む。立つ気力すらなかった。グラッセさんの声が頭上から降ってくる。
「佳代ちゃん。君はお姫様になんかなれないよ。物語の主人公になんてなれやしない。だって君は嘘だらけの舞台で、悲劇に酔っているだけだもの。目の前の意図的な偶然を「運命」だと思っているフリをして、主役を気取って、「幸せになりたい」ってほざいてるだけなんだ。君にとって、昔の彼氏に騙されて、いじめられた自分は、愛しい程に可哀そう? 君は今の状況を苦に感じているわけじゃない。苦しんでいる自分が好きなだけなんだ」
違う、違う。そんなこと思っていない。自分は確かに苦しかった。だからグラッセさんに縋った。その心に嘘はない。私は一人芝居をやっていたわけじゃない!
グラッセさんは私に次々と言葉を投げかける。それが冷たい針の雨のように、私の心へ突き刺さって行く。
「僕、言ったよね。いじめっ子より引きこもりのほうが良心的、って。それは本心だよ。でもね、佳代ちゃん。君は例外だ。君はタチが悪いよ。君はきっと克己君との交際中に違和感がしたんじゃないかな。僕との時だって、「この人は私を好いてくれていない」って思った筈だよ。名前を名乗ってないことに、疑問を感じなかったはずはない。つまりさ、君はわざわざ騙されにいってるんだよ。いじめのことだって、きっと君は無意識に嫌われるように行動したんだ」
そんなわけない。グラッセさんの言葉は間違っている。でも、言い返せない。言葉が喉で引っかかって出てこない。
グラッセさんは私がいる砂利に何かを投げる。その何かは私の足元に落ちた。果物ナイフだった。その中でも恐らく小振りのものだろう。どういうことだろうと思い、グラッセさんを見る。彼は微笑む。
「おめでとう、佳代ちゃん。今までの状況に加えて、更に信じていた人に酷いことを言われるという付加価値がついたね。良かったじゃないか。今まで以上に可哀そうな佳代ちゃんだ。信じて裏切られ、それでも世の中を見限ることが出来ない佳代ちゃん。あまりに可哀そうで惨めだから、選択肢をあげよう。
一つ目、そのナイフを見なかったことにして、僕なんて居なかったことにして、今まで通り不登校の高校生で居る。二つ目、僕のことを過ぎたことにし、立ち直って学校に行き、普通の高校生になる。こんなの無理だろうけど。三つ目、そのナイフを手に取り憎き僕を殺す。まあ僕は簡単に死んであげないけどね。そして最後、そのナイフで自分を殺す。さあどうする? 最悪僕が君を殺す、ってことも出来るけど」
思わずその非常識な選択肢に、目を見開く。私が絶句していると、彼は続ける。
「でも一番良いのは自分を殺すことだろうね。自殺だよ、自殺。首をスパーンって切って君の人生を終わらせる。どうせ君は余生を生きているようなものだ。親もいない、友達もいない、きっと君が死んだって誰も気に留めない。むしろ君を援助している親戚は喜ぶかもね。それに、物語としては可哀そうなお姫様は死んでしまいました、なんてよくある話じゃないか」
……そうなのかもしれない。私にはもう価値などない。それにもう、疲れてもいた。信じて、裏切られて、笑われて、自分の心まで決めつけられて。これから先、生きて、何を望めというのだ。私が死んであの人達が喜ぶ姿も、想像するに容易い。
本当なら、本当に死んでしまうなら、いっそのことグラッセさんも殺してやりたい。私を裏切って遊んだ彼を、克己君も含めて、この世から消し去りたかった。でも、正直もう立ち上がることすら億劫だった。彼に対し、怒りすら湧いてこない。ただ茫然と彼を眺めている。そんな私を見て満足したのか、踵を返すグラッセさん。
「さようなら、佳代ちゃん。きっと一生の別れだ」
彼の背中が小さくなっていく。もう待ってくれなど言わない。きっと貴方は私の言葉に返事してはくれないだろうから。
彼の姿が視界から消えると、何故か視界が歪んだ。泣いていることに気づいた。私は私が思っている以上に、彼が好きで、彼と一緒にいたかったのだと知った。けれど意地でもそんなこと認めたくなくて、涙を拭う。そして呟く。
「きっと一生の別れ」
予言のように言ったグラッセさん。きっと彼は最初から分かっていたのだ。私がこの日とる選択肢を。私は果物ナイフをしっかりと握る。砂利に置いていたため、砂が手に着いた。
私は思い出していた。グラッセさんと初めて会った日の事を。手帳に綴られていた文字を。
『Can you forgive me?』
今思えば、私はあの言葉の意味を勘違いしていた。きっと「私を許してくれますか?」ではない。あの時も少し違和感がしていた。普通許しを請うのなら『Could you』の方が適切だ。恐らくこういう意味だったのだ。
『貴方は私を許すことが出来ますか?』
あの言葉はゲームの開始の合図だったのだ。私の答えはこうだ。出来るわけがない。私は彼に敗北した。騙され裏切られ、そして私はこれから。
私は微笑む。そしてナイフを腹部にあてる。その時、拭ったはずの涙が一粒零れた。最期に言う。大好きだったあの人と、それでも唯一幸せだったあの日々へ。
「それでも愛していました、グラッセさん」
ようやくプロローグが終わりです。
次回から本編です。
よろしくお願いします。