A Kinfe to Cut the Mont Blanc
世の中には、一定数、生きることが下手な人がいる。
あなた方は恐らく、生きることが上手な部類に入るのだろう。違う? まさか、違わない。そんな立派な制服を着て、そちら側に座っているのがその証拠だ。
もちろん、あなた方が今ここに居るに至るまでに経た苦労や挫折を、無かったことにしているわけではない。きっと友人と喧嘩したり、親に反抗したり、恋人に振られたり、人を騙したり、裏切られたり、成功より失敗の数が多かった人生だったかもしれない。
しかしそれを踏まえても、やはりあなた方は生きることが上手だ。上手、という言い方が不快なら、こうも言いかえられるだろう。
あなた方は、それらの挫折を含めて、人間らしく人間をしている。
変な日本語だと笑っているな。学が無いことに関しては目をつむってくれ。なにせ私は小学校すらまともに通えていなかったのだから。いや、こんなことはすでにそちらが把握済みか。つくづく優秀なあなた方が羨ましい。
……話を戻そう。あなた方は私から見れば、人間のあるべき姿を体現しているような人間だ。けれどその体を保てない人間も、中にはいるということだ。友人との喧嘩とか、失恋とか、そんな失敗と同じ土俵にすら立てない人がいるのだ。
……理解が早くて助かる。ああ、そうだ。彼らには基本的に居場所がない。救済も、幸福も、人生に用意されていない。なぜか? 彼らが害悪でしかないからだ。誰も彼らに居場所を用意してやる義理も、必要もない。そのくくりに含まれる私ですらそう思うよ。だが、その害悪たちは、害悪にならざるを得なかった。そして害悪である自分を正当化して見せていながら、本当は幸せを望んでいるのだ。どうしてわかるのか? 彼女がそう教えてくれたからだ。誰のことかぐらい、調べはついているのだろう?
私は彼女の本懐を遂げたかった。それくらいしか、一害悪である私にはできないと思った。
……は?
……あなたは面白いことを言う。まさか、そんなわけないだろう。私は害悪としての身の程を弁えている。
ああ、そろそろ時間か。あなたは私の長話の間も終始楽しそうだったが、これ以上の長話は、そちらの彼に怒られそうだ。ああ、あなたのことだよ。彼女の話題になる度、随分おっかない顔をしてくれる。あなたが誰か、おおよその見当はついているけどな。……はは、どうやらビンゴのようだ。眉間のしわが一層深くなっているぞ。
わかっている、もう十分だ。私も彼女のところにいくことにしよう。
悔い? まさか。むしろ感謝しているくらいだ。
――あの日から、ずっとみんなの声が聞こえるのです。
――幸せになろう、と。
――あの日から、みんなが私を見ています。
――私が約束を果たせるか、幸せになるのか、見張っているのです。
――ごめんなさい。
――何度謝っても、耳を塞いでも、声はずっと聞こえていました。
――だから、連れてって。
――ごめんなさい。
――その謝罪を最後に、声は聞こえなくなりました。
――けれど、最後の謝罪の言葉は、不思議なことに、彼女の声に聞こえました。
――どうして彼女が謝るのか、私にはわかりませんでした。