ヨドゥン遺跡の魔法陣(前編)
「ジャックよ待たせてしまったな」
「いえいえ、何やら大事な用だった様なので気にしておりません」
「うぬ、内容は言えぬがすまぬ」
「それではヨドゥン遺跡の新しい発見の報告に入らせていただきます」
ジャックが遺跡で見つけた転移魔法、隠し部屋、巨大魔法陣の説明を丁寧にする。
「なんと、転移魔法だけでも歴史的発見なのに巨大魔法陣まで……」
「魔法陣を発動させると何が起きるか全くわかりませんゆえに王国の探索隊や宮廷魔術師の同行をお願いしにまいりました」
「うむー……そうなると隊長クラスをつけてやりたいところではあるのだが……共和国との合同探索に出向していて今はおらんのだ……」
「例の新しく発見された遺跡ですか?」
「うむ……」
「そうだ、ジーンお前が行ってこい」
「こ、国王お言葉ですが何が起こるかわからぬ所に王子を連れて行くのは……」
「どうせ来年には成人の儀で探索に連れて行くのだかまわぬ」
「ジャック殿、俺からもお願いします、次期国王になる為にも現場での勉強が欠かせませんので」
「では専属の護衛を連れてきてもらってよろしいでしょうか、できれば防御系の魔法にたけた方で」
「それならばクリスにお願いしよう、宮廷魔術師見習いだが防御面ではフィーネシア様の再来と言われている折り紙付きである」
「それは頼もしい」
「レストさん、フィンさん、すみませんがもう一度遺跡探索の護衛依頼をお願いしたいのですが」
「わかりました、魔法陣も気になりますので喜んで引き受けます」
こうして再び遺跡へ向かう事になった。
遺跡へ向かう為の準備を王都で整えている時にふと疑問に思った事が出てきた。
ジャック親子はかなりお金持ちのようだが最初の依頼は相場より安い雰囲気があったがあれは気のせいだったのだろうか。
次回から他の人の依頼を受ける為にも相場は知っておきたいし気になったので聞いてみる事にした。
「セリアさんちょっと聞きたい事があるのですが……」
「あ、その件ですか、あれはですね……」
どうやらあの時ジャックがお金をほとんど持っていたらしく合流する事が出来なかった際に手持ちでちゃんと払える金額を計算してあの金額になっていたようだ、やはり相場はもう少し高いらしい。
「なるほど、そうだったのですね」
「レスト様私も気になっていた事を聞いてみてもよろしいでしょうか?」
「え?はい、いいですよ」
「フィン様とは付き合っておられるのでしょうか?」
(あー、そうですよねー、宿はいつも一緒の部屋だとそう思いますよねー)
「い、いや、そういうわけでは無いのですがお互いが唯一の知り合いという感じですね」
(嘘はついていないからこれで問題ないだろう)
「そーなんですねー」
「なんじゃ、わしがどうかしたか?」
「いや、なんでもない……」
「ん、そうか」
準備が整ったので再び遺跡へ出発。
今回の馬車は王族専用の寝泊まりを想定した大型の馬車なので遺跡まで直接移動できる。
国王のはからいで遺跡までの護衛もついていたのでゆっくりと休む事が出来た。
遺跡に着くとジャックが門番に国王から預かった書類を渡す。
本来遺跡の探索は3日間出てこなかった場合次のチームが探索を始めれるのであるが、今回のように国王の許可がでていれば調査が終了するまで何日でも中で調査を続けれるようになるらしい。
今回のメインは魔法陣の発動だが1日目はジーンに遺跡の案内をするのに時間を使うらしい。
そういえば前回来た時は例の部屋まで寄り道せずに向かったのでこの遺跡の内部をちゃんと見るのは俺も初めてだな。
ヨドゥン遺跡、約10年前にこの付近の森を切り開いている時に発見。
発見者の名を取りヨドゥン遺跡と名付ける。
遺跡内部で見つかった新発見の魔法アイテムは魔力を注ぐと火が灯るタイマツと今回見つけた転移魔法。
転移魔法の解析は宮廷魔術師の手があくのを待つしか無いようだ。
転移魔法か……原理がわかれば異世界への転移も可能なのだろうか……。
遺跡の案内しながら今回の目的である魔法陣はいったい何の為にあるか、ジャックが予想をジーンに説明している。
「ジーン様、ここらでこの遺跡の内部の主な案内は終わりですが何か気がついた点はございませんか?」
「まるで我が国の宮殿のような感じでしたね」
「そうですね、それなりの地位のある人が住んでいた場所だとは思うのですが何か足りない感じがしませんでしたか?」
「足りない物……居住区ですか?」
「そうです、この遺跡はこれだけ広いのに個室が存在しないのですよ、それこそ今回発見した隠し部屋が初めての個室なのです」
確かにこの遺跡を古代の王宮的な物として考えれば居住区らしき所は見当たらないのは不思議である。
そして転移魔法で移動できる隠し部屋に厳重なゴーレムの警備、巨大な魔法陣だけしかない空間。
あの魔法陣が居住区への転移魔法だと考えるのが素直な考えだとは思うが何かが引っかかる。
実際に発動させた時に何が起こっても対応できるように気をつけておこう。
今日の案内はここで終わるみたいなので明日に備えてゆっくり休もう。




