戦争の終わり
『俺は、爆弾突撃兵に志願します!』
俺は軍人の家系に生まれた
父は既に戦死している
敵軍の野営地に大量の爆弾を抱えて突っ込み、そこから爆弾を起爆し、敵を一網打尽にした
母はそう笑顔で子供の頃の俺に語ってくれた
だから俺はレイズリーフ砦奪還作戦で爆弾突撃兵に志願した
レイズリーフ砦はブルナリア帝国の軍事生産の要であり、ここさえ押さえればブルナリア帝国の軍事生産はできなくなり、我がリードリヒ連邦国の勝利は確定する
爆弾突撃兵はその砦の壁に爆弾で穴を開け、味方の突撃経路を確保するのが目的だ
皆驚いた顔をしていた
爆弾突撃兵は特殊攻撃兵科の中で一番戦死率が高い
だから皆には俺が死へと一直線に突き進んでいるように見えたのだろう
だが俺は死へと向かっていたのではない
父と同じ栄光へと進もうとしていたのだ・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『・・・ゔぅん・・・』
寝転がった状態の俺はあることに気付く
体が重い
腹の上に何か重りのようなものが乗っかっている感覚がある
状況を確認するために目を開ける
目に入ったのは見慣れた自室の天井
俺は多分、今自室のベッドで寝ているのだろう
次に問題のお腹の方を見る
銀色のフサフサしたものが腹の上で寝息を立てている
『・・・』スゥ スゥ・・・
銀髪の娘だった
銀髪娘が俺の腹の上で寝ている
俺が銀髪娘の存在に気付いた時だった
トンットンッ
部屋の扉がノックされる
そのノックに気付き、反射的に返事をする
『・・・あぁ、入っていいぞ』
その言葉に呼応するかのように、扉がガチャリと開く
初老のダークブラウンの髪の毛をした60代ぐらいのおばさんが入ってくる
三つ編みを二つつくり後ろで結んでいて、小さな百合のヘアピンをしている
母だ
『あらぁ、意識を取り戻してよかったわぁ』
そう言って安心した笑顔で俺のほうを見る
どうやら俺は軍の部下に運ばれて、野戦病院まで連れ込まれたのだが、失血し過ぎて意識がなかったらしい
そこから治療を受け、自宅まで運ばれてきたというわけだ
だが俺には気になることがあった
『戦争は・・・どうなったんだ?』
母は満面の笑みで答える
『レイズリーフ帝国がリードリヒ連邦に対して和平条約に同意したわ、あなたのおかげよ』
4年にも渡る戦争に、ようやく終わりが来た瞬間であった
終わった、ようやく終わった
俺は嬉しさのあまり涙を流し、母は俺に抱きついた