彼の地にて
パァン パァン パァン パァン
単発式小銃の音が鳴り響く
硝煙の匂いが鼻をつく
あたり一面焼け野原
家は崩れて、炭のようになった柱は美しいグラデーションで赤色に血塗られている
あと少し・・・あと少しなんだ・・・!
俺は仲間か敵かさえもわからなくなった死体を踏み、
前に前にと進んでゆく
一つの大きな箱を持って進んでいく
周りがスローモーションに見える
敵がこっちを向いて銃口を向けてくる
俺はそれを無視して進むが、敵はそれを面白くないと思ったのか、引き金を引く
引こうとすると、頭から血が出て倒れる
味方が敵の頭を撃ち抜いた
そんなことは言うまでもない
もうすぐ終わる・・・
俺は砦の前に大きな箱を置いた
箱からスイッチがついたヒモを伸ばし、それを持って逃げる
『・・・あ』
俺の視界の端に、何か銀色の、糸のようなものが見える
反射的にその方向を見る
銀色の髪の娘が座っていた
あそこにいたら爆発に巻き込まれる
だが助けたらその隙に自分が撃たれる
思考より体が先に動いた
俺は銀色の髪の娘のところまで走ってゆき、抱いて持ち上げようとする
パァン ザシュッ
鋭い痛みが左腕を突き抜けて脳まで伝わる
撃たれた、痛い
急いで走り出して家の物陰に隠れる
スイッチを押す
ドゴォォォォォン・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
チュン チュン
・・・ここは?
小鳥のさえずりで、目を覚ました
俺は黒い土の上で寝転がっていた
空は蒼く、周りに人気がない
左腕が痛い
・・・撃たれたのか
だが血はあまり出ていない、動脈は大丈夫そうだ
また視界の端で、銀色の糸のようなものが動く
反射的にその方向を見たら銀色の髪の娘が、座って俺のことを見ていた
その瞳はまるであの蒼い空のような深く、澄んだ色をしていて、宝石が埋め込まれていると言われればそのまま信じてしまうだろう
髪の色は銀色で、すすで汚れながらもまるで太陽の光を反射して鏡のように輝いている
服は白を基調とした赤い血のグラデーションがされたシャツと、ボロボロの茶色に赤いシミが目立つハーフパンツを履いていた
・・・俺は死んだのだろうか
もしかしてこの娘は天使で、俺を天に導いてくれるのだろうか
ならば俺はこの戦争で栄誉ある死に方をしたのだろうか
それなら両親に別れを告げてきた甲斐があったものだ
そう考えたが、腕の痛みと少女の格好がそれを全て否定する
なら、この娘は俺が助けた奴なのだろう
声をなんとか絞り出して
名前を聞いてみる
『お前の、名前は?』
『・・・』
銀髪娘は無表情で固まっている
どうしてここにいるのか聞いてみる
『お前は、どうして、ここにいるんだ?』
『・・・』
銀髪娘は無表情で固まっている
死んでいるのだろうか、返事をしない
瞳に生気があるから死んではいない
だが返事をしない
ザッザッザッザッ・・・
どこからか足音が聞こえてくると同時に、俺の意識は闇に吸い込まれていった・・・