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空音の怪奇譚  作者: 如月颯人
第二章:深淵迷宮の噂
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二十四怪 道の駅までの道のり


「どうしますか、篠崎さん」

「大谷、先ずはパトカーの中に何か異変がないか調べてくれ」

「了解したっす、それぐらいお安い御用っすよ」


大谷さんがパトカーの中を注意深く調べていると”ある物”が見えた。

それは先ほどまで無かったはずの黒い長靴だった。


「ここに長靴なんてありましたっけ......?」

「おかしいな、長靴なんて入れた覚えは無いはずなんだが」

「そうっすよね......また霊的っすか......」


この長靴は酷く泥が付着しておりその上血がこびり付いてるように見える

長靴の中からは腐敗臭が漂っていて吐き気を催しそうなほどだった。

大谷さんは顔を強張りながらも調べている。


「うっ......何すかこれは!?」

「どうした? それにその腐敗臭は......」

「人間の指っすよ、恐らく小指っす!」

「──えっ!?」


衝撃的な事を聞いてしまった。

あの長靴の中から腐敗臭がしていたのは人間の小指が入っていたからだ

ただでさえ聞くだけでも気持ち悪いのに、一瞬見ただけでも吐きそうになる


「小指だと!? おいおい、何故こんなものがある?」


篠崎さんは少し青ざめたような表情をしている。

同時に次は涼しいような冷たい風がまた吹いてくる

流石に私も切断系は苦手になってきた為か唾を飲み込むことさえ出来なかった


「っ...」

「無理もないっすよ、小指っすからね。滅多に見れないやつじゃないす」


私は我慢出来なくなり唾を出した

すると大谷さんは私の背中を撫でるように擦る。

それのお陰かさっきまでの吐き気が徐々に消えていく


「あ、ありがとうございます。気が楽になりました」

「それは良かったす、取り敢えずは周りを探索しないといけないっすね」

「その事なんだが、今は道の駅まで歩いて行くぞ」


篠崎さんは拳銃──一般の日本の警察の銃──を構えながら言う

目が細くなりまるで獲物を狩る狐のような目をしていた。

いよいよ本気になったということなのだろうか


「篠崎さん、分かりましたっす。でも新島さんはどうしますか?」

「ああ、新島君は俺たちの後ろについて来るようにしよう」

「なるほど、ということっすので離れないようについてきてくださいっす」


私は首を縦に振り『はい』と頷く。

二人が守ってくれるなら安心な気がする

このまま道の駅まで向かって早く零明山まで行かなければいかない。

でも途中に霊に遭遇する場合もあるかもしれない。

──そして私たちは道の駅に向かう事にする


「篠崎さん、光がないと物凄く暗いっすね」

「ライトを持ってきてたんだが生憎電池切れだから使えないな」


民家が立ち並ぶ場所を歩きながら篠崎さんはライトをカチカチと鳴らす

どうやらやっぱり電池切れのようで全く光が点かなかった。

私も何か光を点ける物がないか調べたが特に果物ナイフしかなかった。


「あの......道の駅まであとどれ位なんですか?」

「あと少しなはずだが......見えないな」


周りの風景は変わっているが潰れたコンビニや廃墟と化した店や建物が

立ち並んでいるだけであって道の駅などは見当たらない。

それにただ風が流れてるだけで雰囲気は不気味なままだった。


「おかしいっすね、横にある看板には残り10mと書いてあるんすけど」

「くそ、暗くて見えねぇ......ライトさえ点ければいいんだが」

「あれ? 今思えば篠崎さんどうしてパトカーでは行かないんですか?」


私は素朴に疑問に思ってしまった。

パトカーで行けばライトも点けることもでき、それに歩かずに済むはずなのに

どうして行くことが出来ないのだろうか


「次心霊現象が起きたら事故を起こしかねないからな、仕方なく歩いてるんだよ」

「そ、そうなんですね。確かに運転中に心霊現象が起きたら大変ですよね」


篠崎さんは頷きながら『そういうことだ』と言っている

確かに運転中に心霊現象が起きてしまっては怪我をしてしまう恐れがある

それを防止する為に道の駅まで歩く事にしたそうだった。


「駄目っすね、何処までも道が続いていて道の駅が見えませんっすよ?」

「くそ、おかしいな......もう10m以上歩いてるんだぞ」


私達はその場に立ち止まり周りを見渡した。

場所は変わっており、当たり前だが車一台も通ってはいなかった

それどころか高速道路の料金所が見えていた


「仕方ない、料金所のスタッフに聞いてくるからここで待っててくれ」

「分かりましたっす、その間に新島さんと待っているっす」

「はい、分かりました。お気をつけて行ってください」


篠崎さんは料金所へと──20mあるかないか位の距離──歩いて行った。

さっきまでは田舎の雰囲気を醸し出していたが高速道路が近い所為か

そんな雰囲気も半減しており都会に近い雰囲気に変わっていた。


「そういえば新島さん、車の中で何があったんすかね?」

「車の中ですか? 実はこういう事がありまして......」


私は大谷さんの疑問に応えるように、車の中で何が起きたのか

心霊現象の内容を少しずつ喋る事にした。


「そうっすか......やっぱりそんな事が」

「やっぱりってどういう事ですか?」

「実は俺も霊の声が少しだけ聞こえていたんすよ」


私は大谷さんの話に少しだけ驚いてしまう

まさか大谷さんも霊の声が聞こえていたなんて知りもしなかった

霊感があるのか、もしくは篠崎さんも聞こえており全員が聞いていたのか。


「そ、そうなんですか?」

「あの女性の声を聞いた瞬間、悪寒を感じてヤバいと感じましたっす」

「結局はあの女性の声って誰なんでしょうかね......」


私は俯いて考えていると、大谷さんは私の肩を叩いてこう答える


「後々判ればいいんっすよ、今は道の駅の事を考えるっす」

「そうですね、今はそれが優先ですからね」


──何分過ぎたのだろうか、私達が楽しく会話をしていると

篠崎さんが小走りでこちらへ戻ってきた。


「すまない、待たせた。」

「それで、どうだったんすか?」

「あぁ......どうやら俺達からして右側を歩いて5分の所へあるそうだ」


篠崎さんが言うには道の駅は歩いて5分の所へあるそうだった。

正確というか、どうやって歩いて5分なのか判ったのか気になる

測定器かストップウォッチを使って確かめたのかな


「よし、じゃあ行くぞ。早く行かないとパトカーが盗まれちゃダメだからな」

「分かったす!」


私は『はい』と言い頷き、篠崎さんの後に着いていく

車も通ってなくて道路へ歩いているが大丈夫なのか

事故が起きそうで怖い気持ちを抑えながらも歩いて行く


「あれ、田圃たんぼっすよ」

「本当だな、少し見に行ってみるか」


右側には大きな100坪以上はあるような田圃がある

篠崎さんはその田圃の方へ向かって歩くと

下を向いて目で調べているように見えた


「特に何の変哲もない田圃だな、だがこんな物が落ちていた」


篠崎さんの手の中には財布らしき物が見える

黒い革財布なのだろうか、革の独特の感触が私の手から感じる。

大谷さんは無言で『貸してくれ』と言わんばかりに手を差し伸べる


「あ、すみません」

「ありがとうっす。少し気になったんっすから」


そう言うと大谷さんは財布を取り中身を確かめている。

見る限りでは五千円札や千円札、ポイントカードらしき物があった


「うわ、結構金持ってるっすね。それに──な、なんだこれ?」

「おい、どうした? 顔が真っ青になっているが」


大谷さんが何か得体の知れない物を見たかのように顔が青くなっている

中には他に何かがあったのだろうか、私はもっと近づき確かめる


「──きゃっ!?」


──私が財布の中身を見ると大量の『爪』らしき物が入っていた

人間の爪なのだろうか、その割には足と指──因みに足の指は正確には第一趾か第一指と言われているけど──の数が合っていなくて

明らかに5人以上の爪が大量にある。


「なにがあった──何だこの爪の数は......それに臭いがキツい」

「これヤバいっすよ、早く捨ててくださいっす!」

「くそっ......とんだグロテスクか物を拾っちまったな」


篠崎さんは、まるで汚い物を反射的に投げるような感じに田圃の方へと投げた

それと同時に”ポチャン”という水の鳴る音が響き渡る


「これで大丈夫だろ、特ににおいと爪以外は何も無くて良かったな」

「こっちは全然大丈夫じゃないっすけどね......あの爪は何だったんすかね」

「呪物系っぽかったが、単純過ぎて悪戯の可能性もあるな」


篠崎さんは『ふぅ』と落ち着いたように溜め息をつく

私は開いた口を手で抑えながら唖然としいていた


「呪物だと思うんすけどね......それはそうと早く道の駅に行くっすよ」

「ああ、忘れていた。新島君も行くぞ」

「あ......は、はい!」


返事をし私達は道の駅まで歩いて行く


──歩いて何分位経ったのだろうか、目の前に休憩所らしきものが見える

恐らくあれが『道の駅』なのだろうか


「はぁ、やっと着きましたね。もう疲れました......」

「まだまだ子供だから仕方ないな、これから運動すればいい」

「こ、子供じゃありません!もう二十歳は越えてる......と思います」

「でも最終的に道の駅まで着いて良かったすね、さぁ中に入るっす」


私は篠崎さんに馬鹿にされながらも道の駅の休憩所を見る

木造で三角の屋根が目立っており、村の家に似ている

それに外灯が点いていて、久々の明かりを見たと思う

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