冒険者はモテますか?
ハッキリ言います…
主人公はモテたいだけです
「どこだここ?少なくとも俺の家ではないな」
辺りを見渡すと西洋風石造りの街並みが広がっていた…
実に様々な色の髪や目をした人々がガヤガヤと賑わっていた。
こんな景色を見せられるとまるで別の世界に来たかのような感覚に陥ってしまう。
「最近のドッキリはすごいな…こんなにリアルな街並みを作りだすなんてな」
「なに一人でブツブツ喋っているのお兄さん?ここの街はもしかして初めてなの?」
一人周りの風景に感動していると突然後ろから声をかけられた。
「へぇー…付け耳なんかも付けてるんだな!結構本格的だな」
後ろを振り向くと灰色の髪にクリクリとした愛らしい茶色の目をし、頭に猫耳カチューシャのような物と腰回りからはモフモフの尻尾が生える女の子がよく分からない店の前に立っていた。
女の子は見た感じ俺より幼い印象だ。…実際の歳は聞かない方がいいだろうがね。
話しかけてきた女の子はカフェの店員さんが着る給仕服みたいな感じの服を着ているのでここはコスプレ喫茶みたいな店なのだろうか?
「何言ってるのお兄さん?どこからどう見ても付け耳じゃ無いでしょ?」
「え…そうなの?じゃあ、本物か確認したいから触ってもいいか?」
「ダメに決まってるでしょ!私たち獣人の耳は伴侶となる者にしか触らせないの!」
「じゃあ…尻尾はどうだ?」
「尻尾もダメ!尻尾は触られると力が入らなくなるから!」
「そうか…じゃあな。触らせてくれないなら確認の仕様がない」
俺が興味が無くなったので去ろうとすると急に手を掴んできた。
いきなり掴まれるとびっくりするから止めて欲しいね!
女の子に手を触られたから嬉しいわけじゃないからな!?
「これは付け耳じゃないからね!私は正真正銘の獣人だからね!」
「そんなこと言われてもな…俺は自分で確認しないと信じれないからな」
「うー…仕方ない、尻尾を優しく触って…いい?優しくだよ!」
「マジでいいのか?無理してないか?」
「うん!私を獣人と認めないのなら認めてもらうまで触っていいよ!」
「ではお言葉に甘えて早速触らせてもらいます」
猫耳コスプレ少女が俺の方に尻尾を向けてきてる姿を見ているとなんだかいけないことをしてる気分になるが、俺にはなんの変な気持ちは無いので安心してほしい。
俺は初対面の女の子にセクハラ行為をするほどクズではないからな。
「では早速…」
言われた通りに優しく尻尾を触り毛を手で撫でるようにとかすとくすぐったいのか耳がピクピクと敏感に動いていた。
そんなに気持ちいのだろうか?俺には一生分からない感覚だな。
「も、もういいでしょ!これ以上触られると頭がおかしくなっちゃいそう…」
「ありがとな。どう見ても本物だなこれは…どうなってんだ?」
「お兄さんこそ獣人を知らないなんて珍しいね。もしかして…記憶喪失とかなの?」
「いや、自分の名前と身分と住んでた場所は完全に覚えてる。俺は稲田 圭…普通の高校に通ってた、そして日本にいたはずだ」
「日本なんて国聞いたことな…いや、店にたまに来るお客さんが日本がナントカ~!って言ってた気がする」
「そうか…教えてくれてありがとよお嬢ちゃん!もうちょっと大きくなったらお嫁さんにしてあげてもいいぜ?」
「誰があなたみたいなヒョロヒョロの蔓みたいな体をした人のお嫁さんになりますか!べぇー!」
お嬢ちゃんと言われて怒ったのか子供のように舌をべぇー!と出してきてが、俺にとってはそんなことはどうでもよかった。その前に言われた言葉が重要だった。
「それはムキムキのマッチョになったら結婚してもいいと捉えてもいいのか?」
「お兄さん前向きな性格してるね…その明るさがあれば生きていけるねきっと」
「割と本気なんだが?お嬢ちゃん可愛いから今のうちに仲良くなっておけばお嫁さんに困らないかな~…なんて思ってよ」
「もうこの町の役所教えてあげるからそこに行ってくれない?お兄さんと話すと疲れる…」
「クソ…あの自称女神がモテモテスキルをくれていたら今頃この子は俺のお嫁さん候補になっていたのに…」
「この地図通りに行けばたどり着けるから早く行って!」
「ありがとう。いつか金稼いだらお礼したいから名前教えてよ」
この自然な流れからサラッと名前を聞き出すテクニック…友達の家で読んだモデルの雑誌から学んだ知識だ。
モデルが教えてくれることならほぼ成功するだろう…この勝負俺の勝ちだ!
「私の名前?このお店にもう一回来てくれた時に教えてあげる」
なんだかモデルの勝利の方程式が微妙に外れたがどちらにせよ名前は教えてもらえるのでよしとしようか…
「近いうちにまた来るよ。ところで…お嬢ちゃんの働いているお店は何を商売にしてるんだ?」
「食堂だよ~!そこまで高くないから給料出たら食べに来てね!おすすめは八つ裂き熊のシチューだよ!」
おすすめメニューは若干頼みたくないがお礼ををしないといけないのでその内行かないとな。
そして、俺は女の子の方を振り向いて…
「美味しかったら毎日食べに通うよ」
そう約束してその場を後にしたのだった。
◇
「こんにちは!今日はどのようなご用事ですか?」
「今日は何か仕事が無いかと思いまして…危険が少なく高い給料が貰える仕事はありませんか?」
猫耳の女の子に渡された地図を頼りに何度かヤバイ人に絡まれそうになりながらもようやく目的地に辿り着いた…
ここは日本で言うところの市役所みたいな物で、住民の管理、税金の徴収、失業者の相談や仕事の依頼などほとんどのことがもこで処理されているらしい。
詳しいことはこれから話してもらえるしいいだろう。
「そんな仕事があったら私はこんなメンドクサイ仕事なんて辞めてますよ~、アハハ~!」
「そうですよね~!アハハ~!」
ダメだこの受付のお姉さん…仕事のし過ぎなのか目の下にクマが出来ており目もよくよく見ると俺と焦点が合っていない…
そんなにここの仕事は大変なのだろうか?ここでだけは絶対に働かないぞ俺は!
「で…なんでしたっけ?」
「なにかいい感じの仕事を紹介してもらおうと思ってましてですね」
「ではあなたに出来ることを教えてください。私達があなたに合ったお仕事をおすすめしますので」
「えー…特に得意なことはありませんが体力なら自信があります」
「体力ですか…では傭兵団に入るのはどうでしょうか?住む場所と食事も提供されますよ」
「傭兵団はちょっと…他になにかありませんか?」
傭兵団なんて男臭そうな集団で働くなんて死んでもごめんだ…
女の子だらけの傭兵団なら大歓迎だがな!
「なら…冒険者なんてのはどうでしょうか?危険な職業ではありますが報酬も高いですよ!」
「冒険者…それって何をする職業なんですか?」
「いい質問ですね!冒険者を知り尽くした冒険者マニアの私が丁寧にお答えしましょう!」
さっきまで今にも倒れてしまいそうな雰囲気を出していたお姉さんが急に顔を赤くさせながら興奮気味に俺に話し始めてきた…
そこまで熱い職業なのだろうか?
「まず…冒険者はこの国の最も重要な資源なのです!我が国は資源も農業も漁業も特に発展していなのですが…魔物が多いのです!なので、必然的にその魔物を倒す人が必要となりますよね?」
「まぁ…なりますね」
「そこで、我が国は冒険者の育成に力を入れたのです!魔物を倒して得られる素材や肉などを得るために!もちろん、それ以外にもダンジョンを見つけて探索してお宝や伝説の武器、失われた古代魔術などを探索する人もいます。そして、最大の目的が魔王を倒すことです!魔王は人々に害をなしてきました、なので私たちは平和を勝ち取るまで魔王と戦うつもりです!」
「オォ…スゲェー…」
若干、スケールが大きすぎて付いていけない…
あの怪しい女神も言っていたが魔王を倒すことが人類の目的なのか。
まぁ、俺みたいなクソ雑魚の手はいらないだろうけどね。
「どうですか?冒険者になってみようと思いませんか?」
俺は一つ気になっていたことを質問してみた…
「冒険者ってモテますか?」
ここまで読んでくださった方ありがとうございます
テンプレな異世界ものでは無いのでそこのところは納得してください
主人公をモテさせないことって意外と難しい…
とりあえず不定期に更新するのでよろしくお願いします