転生?どう見てもドッキリだろ
知らない天井だ…
だが、どこか懐かしい匂いがするな…
この新築の家の和室に入ったような匂い…
もしかして…家の和室に寝てたのか?
だが、家の和室は親父が煙草を吸いまくっていたのでヤニ臭いはずなのだが…
「あなたは残念ながら死んでしまいました…って言えば満足するの?」
六畳ほどの和室に藍色のジャージを着た白い髪に紫色の瞳の女がいた。
もう何度もこのやり取りをしているのか飽き飽きした様子で畳の上に置いてある卓袱台に頬杖をつきながらせんべいを食べていた。
「いや、なんの話だか分からんしあんたは誰だよ」
「私は残念な死に方をした若い体を持て余した人を異世界に送りつけ…じゃなくて送り出す女神よ」
なんだ…テレビの企画か…
もし、こんなことを実際にしてる奴がいたら痛いしな…
仕方ない…ちょっと付き合ってやるか。
「色々と突っ込みたいがお前の茶番に付き合ってやるよ」
「茶番じゃないけど聞いてくれるなら助かるわ。実は、あなたは死んだからこれから異世界に行ってもらうの。だからバカ強い能力かクソ強い武器を持って行って貰うわ」
「お前頭大丈夫か?全身ジャージを着てる女神の話なんて誰が信じると思ったのか?少なくとも俺は信じないぞ」
さすがに酷すぎる台本だな…
信じさせたいならもっとちゃんと演技してくれよ。
笑い堪えるの大変じゃんかよ!
「めんどくさいわねあなた…そこは異世界転生来たぁ~!とか興奮した様子を見せるべきだと思うの」
「いや、俺はラノベ読まないし…好きなのは推理小説なんだが?」
「ふーん…推理小説ねぇ。でも、人生はやり直せるならやり直したいでしょ?」
「そりゃ…死んでたらやり直したいよな」
「なら決まりね!このリストの中から好きな物を一つだけ選んでいいわよ!」
そう言うとジャージを着た自称女神がせんべいの袋の下から羊皮紙みたいな物を取り出した。
せんべいの食いカスが所々に張り付いており汚かった…
この女神絶対に自分では掃除しないタイプだな。
「えっーと…聖剣に魔剣に即死スキルに…どれも人生ヌルゲーになりそうなクソチートじゃねぇか」
リストに載っているスキルや武器はどれも強そうで魅力的なものだったが…俺には合わない気がする。
そんな異世界に行ってまで陽キャになりたいと思わないしな…
出来ることなら異世界の美少女とどこか静かな場所で暮らしていきたいものだ。
「当たり前じゃない、私はあなたに魔王を倒してもらうのだから」
「魔王ねぇ…ド〇クエとかに出てくるのなら倒せそうだが、人の姿してると嫌だな」
「大丈夫よ、そこはあっちの世界に行けばその内慣れるわ」
慣れって怖いね…
慣れだけで人を殺せてしまうなんてな。
「なぁ女神さんよ…美少女と結婚出来るスキルとか何か無いのか?」
「そんなスキル無いわよ。魔王を倒してほしいのにわざわざ変なスキルをあげると思う?」
ごもっともです…
俺だって倒してほしい敵がいるのに関係ないものをあげたりしないしな…
「じゃあ…このスキルの説明してもらっていいか?」
「このスキルは止めた方がいいんじゃない?極めれば強いけど即戦力にはなれないわよ?」
「いいから教えろ、俺はこれが気になるんだよ」
「ハイハイ分かりましたよ~…これは“蓄積”と言ってね、繰り返し同じことをするとドンドン強くなるの。分かりやすい例を出すと、普通の人が剣の素振りを百回してもその内百回全部を身に着けることは出来ないの…だけどこのスキルは百回したら百回分の経験を得られるの」
何その神スキル…
強過ぎね?これがあれば戦い以外にも役立てること出来るんじゃね?
「どう?このスキルは同じことを繰り返さないと強くなれない微妙なスキルよ」
「俺はそのスキルにするよ。まぁ、本当に異世界に行くとしたらの話だがな」
「そう、これでいいのね!じゃあ早いところ異世界に行ってもらうからそこの魔法陣に乗ってね」
女神が指さす畳の上に青白く輝いている幾何学的な模様があった。
なんだかこの企画をしたテレビ局は適当過ぎないか?
もうちょっと本格的にした方がいいだろう。
「カウントするからね~!1、0!バイバイ~!」
「やっぱり雑だなこのテレビ局は…こんなもの放送して大丈夫なのだろうか」
俺の目の前から自称女神が消えた…
起きたら自宅だったみたいな感じのドッキリなのかな?
ここまで読んでくださった方ありがとうございます
誤字や脱字がありましたら教えてくれると助かります
もし、面白いと思ってくれたならばこれからも読んでください