1章5話 秘書さんが何か持ってきたよ!
スラたん、のんのんと二人の宣材写真を取り終わった頃
既に日は傾き始め、辺りは夜の街へと変わっていく。
地下にいる一郎は知るよしもないのだが。
「ドラミー!おーい、ドラミーの番だぞー!」
一郎はドラミーを呼び出そうと声をかけるが、なかなか姿を現さない
ドラミー。
しばらく静寂が続き、再度一郎が呼びかけようとしたその時、
中央にあるホログラムの装置が反応し、ヴヴ・・ヴゥ・・と
人影が映り出すも、すぐに映像が消え再び沈黙してしまった。
「やばっ・・おっかしいな。まさか壊れてないよな。
と、とりあえず水野さんに相談してみるか」
ポケットの中のスマホを取り出し電話をかける一郎。
「あ、もしもし?水野さんですか?えぇ、はい。あの機械の方が。
え?壊れてはない?あ、はい。待ってますね」
故障の類ではないことがわかった一郎は思わず安堵の表情を浮かべた。
「はぁー。故障じゃなくて連続で使える時間が決まってるとは思ってもなかったな。
安心したらお腹すいてきたかも・・そういえばお昼も食べてなかったか。」
「うん。プロデューサー頑張りすぎるのだめ」
気が緩み独り言をつぶやく一郎の言葉に返事をしたかのように
スマホの方からドラミーの声がした。
「あ、そういやスマホでもはなせたんだよな。ははっ・・焦って忘れてたよ。ありがとうなドラミー」
「うん・・気にしないで。私の右目に封じられた龍が起きなければ問題ない」
「うーん?」
「あ、あれ?わたしまた間違えた・・?」
相変わらずズレた厨二病を発動しているドラミーとたわいもない会話をしていると、
コンコンっと音がして誰かが部屋に入ってきた。
「三木さん、お待たせいたしました」
丁寧な口調で声をかけてきた水野にハッと気づいた一郎は
直ぐさま振り返り返事をしようとしたが、出会ったころの緊張がなかったせいか
水野の豊満な胸に見とれ、声をかけるのを忘れていた。
「あの?三木さん?どうかしましたか?」
「あ、いえ!なんでもないです!胸元など見てないです!」
「あら。三木さんたら。ウフフ」
「す、すみません。あはは・・・」
談笑する二人を見たドラミーは小声で「バカ・・」とつぶやくと
スマホの画面から姿を消した。
「あの、この機械はいつ使えるんですか?」
「はい、3時間ほど待っていただければ。」
「さ、3時間ですか・・・」
予想外の言葉に苦笑いを浮かべる一郎。
「その代わりというものではないのですが、社長より三木さんにお渡しするよう頼まれたものがございます」
そういうと、水野は小脇に抱えていたものを一郎に差し出した。
「これは?」
差し出されたものは透明な薄い手袋のようなもので、左手の甲の部分にチップのようなものが内蔵されていた。
「そちらの手袋に内蔵されているのが、アメリカで開発されたMICです。
スマートフォンと同様に電話やインターネット接続などの機能がございます。」
「これにそんな機能が・・」
「付属品については順を追ってご説明いたしますが、
従来のスマートフォンと差別化するために、私たちはこう呼称しております」
デバイスフォンとー
ドラミーの撮影会はもうちょっと後になります。