トーナメント戦 決勝 1回戦?
エイトのターンまでもう少しかかりそう…?
決勝トーナメントが始まろうとしている。観客も最初のテンションから相変わらず盛り上がっている。いや、むしろ更に高まっているかもしれない。
そして今更感があるがここで、残り8人の選手紹介が行われるそうだ。
声高々に進行役の人が紹介していく。
「1番!! 今大会初出場者っ!【フリップ】選手です!!」
「今回初出場で決勝トーナメントにまで駆け上がった期待のルーキーですね。道化師のような格好に加えて、身軽なステップを売りにしています。そして、まるで戦う姿が猫のようとも言われていますね」
ご丁寧にプチ解説みたいな人も参加している。
「2番!! 今大会3度目の決勝リーグ出場者っ!【ソリッド】選手です!!」
「今大会3度目の決勝リーグ出場者です。堅実に守り、そして確実に仕留めに行く。そんな基本に忠実で戦闘を進めていきます。しかし、基本が出来ているということはやはり安定して強いです。しかし毎年優勝を逃してしまっているので、今回も同じように戦っていくのか、見物ですね」
――――ふむ。1回戦目は【フリップ】対【ソリッド】っていう人たちが戦うのか。
フリップってほうはきっとあのカラフルな服を着た人だとおもう。いや、確実にそうだろう。紹介されたときすごい両手広げてアピールしてたし。
ソリッドって人はきっとあのスキンヘッドの無言を貫いている人に違いない。いや、どうだろう。自信があまりないけど…。頭剃ってるし…
「3番!! 今大会2度目の決勝リーグ出場者っ!【ウィン】選手です!!」
その瞬間、観客席がブワっと盛り上がる。
「今大会2度目の決勝リーグ出場者にして、昨年度の優勝者でもあります、【ウィン】選手ですね。ご存知の方も多いと思うのであまり多くの説明はしませんが、彼はその重い一撃げ相手をことごとくなぎ倒していく様から、[鬼人]と畏怖と尊敬を込められて呼ばれてもいますね」
「4番!! 今大会初出場者っ!【シン】選手です!!」
「今回初出場の彼ですが、ここまでの戦闘では武具の使用は一切確認されておらず、未だに未知数の選手ですね…。これは、昨年度優勝者にとってハンデとなりうるのか、どうなるのか見物の試合ですね」
――――おぉ。2回戦目はなかなか興味があるな。去年の優勝者と、あの(・・)優男が戦うのか。シンっていうんだな…。ここまでこれたってことは結構強かったみたいだけど、さてどうなることやら。
「5番!! 今大会5度目にして初決勝リーグ出場者!【レグマ】選手です!!」
「今大会でやっと今まで挑戦してきたことが実を結んだみたいでよかったです。彼の能力はと出したものがありませんが、極めて運が高いみたいで今回もまぐれ…ではなく実力で決勝までこぎつけたみたいですね!ええ、がんばってほしいところです」
「6番!! 今大会初出場者っ!【ザコビー】選手です!!」
「あーこいつ…この方、ザコビー選手はEエリア代表のようですが、まぁたぶん負けますねー。あと、ザコビー選手はザコエー選手の弟なんですが、ザコエー選手は開始前に粗相をして出場を辞退していますねー」
――――なんか3回戦目は結構しょーもないなっ!?なんだよまぐれで勝ち進んだっぽいオーラだしている男と俺に絡んできたやつそっくりなヤンチーがオラオラなオーラを出しまくって立ってるし… つか、開設の人ザコビーの説明に悪意しか感じられなかったんだけど…って!解説の人受付の人じゃん!? そりゃすこし邪険に説明しちゃうかもしんねえな
「7番!! 今大会初出場者っ!【スノー】選手です!!」
「今大会初出場で決勝まで上り詰めた凄腕ですね。しかも、4番【シン】選手と同じフード姿なので二人は繋がっているという情報が有力ですね。二人そろって決勝というのはすごいですね。そして、【スノー】選手も未だに武具を使ってないので戦闘力は未知数となっています」
――――スノーっていうんだな。これから対戦する相手だから解説からなにか情報なんかきけたらいいなとおもっていたが、やはりというか、シン同様で厄介そうだな… 気を引き締めていかねば負けるかもしれん。そして俺の番か
「8番!! 今大会初出場者!【エイト】選手です!!」
「【エイト】選手は、今大会もっとも注目を集めているといっても過言ではないかもしれません。なんていっても、この数日間でヒワイカをばっさばっさとなぎ倒す姿から[ヒワイヤー]と二つ名までついてしまうほどですからね。しかも、ここまでの戦闘をわずか数秒足らずですべて終わらせてしまっているのも大きいでしょう」
――――っく、まだヒワイヤーは続いていたのか。っていうか二つ名ってなんだよ!!不名誉すぎる。俺も[鬼人]とかのほうがよかった…
「では!!ご紹介も終わった所で、第一回戦を始めたいと思います! 1番【フリップ】選手、2番【ソリッド】選手、どうぞ中央までおこしください」
ひょいひょいっと軽い感じで進んでいくフリップ。それに対してソリッドはきっちりとした歩調で綺麗に歩いていく。
「では、準備はよろしいでしょうか? …始めっ!!」
「さぁ一回戦始まりました。わたくし、今大会の実況を勤めさせて頂きます、【パワフル】と申します。よろしくお願いいたします。ちなみにあまり戦闘経験などないので、詳しい説明は解説の…「【ローラ】です。よろしくお願いします」が、補足説明してくださるので、ご了承ください!」
実況も入ったところで闘技場に目をやると、目にもとまらぬ早さでナイフをたくさん空中になげ、ガトリングのようにナイフを放っているフリップと、それを丁寧にさばいていくソリッドが目に映った。両者はまだ様子見のようで、本腰を入れて戦っているようには感じなかった。
「おぉっ!フリップ選手の投げナイフが嵐のようにソリッド選手へと投擲されていますね。さすがのソリッド選手もこれでは基本の動きで攻めあぐねているのでしょうか?---あぁっっと!?今投げナイフをさばききれなくて数本身に受けてしまったソリッド選手!! しかし、こんなものでは体勢を崩すことなくすぐに立て直しました! ローラさん、この戦闘は現在フリップ選手が優勢とみていいんでしょうか?」
「えぇ、今のところはフリップ選手の手にソリッド選手は翻弄されていますね。ですが、基本を忠実にしている彼はこれをどう適応し、対応するのかで今後の戦況も大きく変わってくると思います」
「チッ!ナイフじゃやっぱり決着はつかないデスよねェ~! あまり手の内を晒したくないのデスが…いたし方ありまセンし、早く決着をつけまショーかっ!!」
「…っむ!?」
突如投げたナイフと思われるものを叩きつけて落としていたソリッドの目に閃光が飛び込んでくる。 目くらましだ。ナイフの中に閃光玉のようなものを仕込んで目をつぶしにかかったのだ。
――――ナイフを落とすには基本、目で見て落とすからな… なかなか有効な使い方だ
「デハっ!失礼しマスね?」
といいソリッドの首元に剣を添えるフリップ。
「…参った」
「…! 勝者、【フリップ】選手!!」
「「「「うおおおーーー」」」」「やるじゃねえかあの道化やろう!」「卑怯だぞー!」などの声が飛び交う。
しかし、この大会のルール上、地形を変えてしまうようなアイテムや装備以外であれば使用可となっている。殺すまでは基本NGだが、相手が弱すぎて死んでしまった場合は、参加した本人の自己責任となり、犯罪にはならないらしい。その点目くらましだけで勝ったフリップは善良的なほうだと言えるだろう。
「1回戦の勝者はフリップ選手に決まりましたね!いやぁ、一時はナイフをしのげてきたソリッド選手に戦況が傾くのかと思いきや、思わぬ隠し玉をもっていましたねっ」
「そうですね。それと使うタイミングもばっちりだったのでとっさの判断が遅れてしまいソリッド選手の負けの一手となったのでしょう」
「では、続きまして!第二回戦を開始いたしますので、3番【ウィン】選手、4番【シン】選手は中央へおこしください」
――――おぉ、次が今回本命といっても過言ではない戦闘かな?しっかりと見届けねば。あと、シンってやつの実力も普通に気になるしな
「じゃ、僕は行ってくるよ?エイト、僕は勝つさ! たとえ相手が去年優勝してたとしても…ね!」
といい自信満々に去っていくシン。
――――なんかこの感覚懐かしい感じがするけど、気のせいかぁ?まぁ、とりあえず今は目の前の試合に集中だな
と気持ちを切り替えていくエイトなのであった。