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さて、異世界の最強とは?  作者: 小岩井偽乳
12/16

トーナメント戦当日 続、朝編?

すみません。また次回予告詐欺です。

前回短かったので、いつもより少しだけ長めです。

 


 エイトは、本日行われるトーナメント戦に向かうべく、寝泊りしているお食事処【ラッキー】の店主のおっちゃんに挨拶を軽く交わしてから中央のアリーナへと続く道を歩いていた。


「はぁ~、サチは先に行くっていって出て行ったらしいけど、迷子になってなきゃいいなぁ」


 普段なら迷子なんて心配すらしないエイトだが、今日この日の賑わいは今まで見てきた中でもダントツに人がどこからこんなにも沸いて来たのかというほどの感想をもってしまうような光景をみてポツリとこぼした。


 ――――ん…。あれは、やっぱり居るよな。異世界だし… でもやっぱり見てていいものじゃあ無いなあ。----【奴隷】っつうのは。


 そこには、いかにも貴族、という格好をした、顔が整っている爽やか系の18歳くらいに見える青年と、ぼろぼろの服装と髪を整えてあげれば、村一番の美少女とも言われそうな、これも同じく18歳くらいと見られる女の子が、首に犬が付ける様な首輪に鎖を繋げられ、通りのど真ん中に居た。


「ほらぁあ!さっさと歩けっ!!このノロマァ!!わざわざこの俺様の手をやかせんじゃねえよ!!! このっ!! 奴隷っ風情がっ!」


 ドスッ! ガスッ! バタンッ …


「っ!~~~っ」


 奴隷に鎖を付けて犬のリードのようにして持っている貴族らしき男が、奴隷であろう女に暴言を言いながらこれでもかというほどの暴力も振るっていた。

 しかし、相手は貴族。周囲の人達も思うところはありそうな雰囲気は出していたが、相手が相手なためにどうすることもできなくその光景を見つめていた。

 奴隷の女の子は怖くて声が出せないのか、蹲ってひたすら蹴られるのを耐えているようだった。


「チッ! 時間の無駄か。いくぞ!おらっ!」


「~~っ! ……」


 ずるずる、と蹲ったままの奴隷の女の子を引きずっていく貴族。首が絞められて苦しそうな顔していた。


「はぁ…。つくづく理不尽だなぁ」


 そう言ってエイトは貴族の前に無言で立った。


「オイ… 邪魔だぞ?平民。そこをどけ!!」


「はぁ…。ここはみんなの道でしょうよ。そういう私事は家に帰ってからしてくんないっすかねぇ」


 その瞬間周りがガヤガヤとざわめきが立ち始めた。

「お、おい…。あいつ、領主サマの息子にケンカ売り始めたぞ…」「やべぇな、終わったな」「しかも、三人兄弟でも有名・・なあのライルだ」

 などの声がたくさん聞こえてくる。


 ――――あ~あ。領主の息子かよコイツ…。めんどくさいことになったなぁ~。


「……なんだと? 俺の耳がおかしくなければ、キサマは俺に喧嘩を売っているのか?………ハッハッハッハ!!!-----死にたいのか? 平民っ!!」


「いやぁ、まだ死にたくはないっすねぇ。でも、ある程度の通行の邪魔だったことは事実ですし」


 冷静にこっちが返していると、貴族の青年のほうはどんどん顔が真っ赤になっていき、今にも腰につけられている装飾の綺麗な剣を抜こうとしていた。

 ----斬られる!と周りのみんなが目を背けたが、数秒経っても悲鳴も切る音も聞こえなく重い空気に包まれた中央に視線が集まる。


 ――――あれ?斬って来ない。なんでだろ、斬ってきたら斬り返したんだけどなぁ…… って、奴隷の女の子が止めたのか。助けようとしたら助けられたってワケか


 再び通りにざわめきが戻った。「おい、奴隷の女の子が止めやがった…」「うわぁ、さっきまででもあんなにされてたのに、次は殺されちゃうんじゃないのかしら…」

 などとヒソヒソと言葉が飛び交う中、ゆらりと貴族が動き始めた。


「……おい、てめぇ… 奴隷の分際でご主人様に意見か…? 言いたいことがあったら言ってみろ。くだらないことだったら… わかってるな?」


 そういいながら剣を抜刀し始める青年の貴族。

 周りからは、ヒィッ!っと悲鳴が上がり始める。さすがに止めなくてはならないとエイトも手持ちの武器に手をかける。


「~~っ!っ!」


 必死に何かを伝えようとしている奴隷の女の子。貴族の青年は無表情でコレを眺めている。あぁ、殺されてしまうと周りの者達が思ったが、その心配は杞憂に終わった。


「あるぇ~? ライルじゃ~ん? こんなぁ~ところでぇ~その汚い奴隷連れてぇ~? なぁに~してるうのぉ~?」

「あるぇ~? ライルじゃ~ん? こんなぁ~とことでぇ~その汚い奴隷連れてぇ~? なぁに~してるうのお~?」


 再びざわっ!っと周りがざわめき始める。「つ、次は領主三兄弟の双子の兄の【カロリ】と【トウブ】だ…」「あの双子と弟のライルは仲が悪いって噂を聞いたんだけど…」

 などの言葉が聞こえてくる。


 呼ばれたであろう貴族の青年は、チッっと小さい舌打ちをして、先ほどまでの怒りの形相は嘘だったかのような笑顔で双子の兄達へと語りかけた。


「おやおや!!カロリ兄さんに、トウブ兄さん!こんなところで会うとは奇遇ですねっ! 私は今、トーナメントの様子を見に行こうかと思いここを通っていたんですが、そこの平民に通行の邪魔をされてしまいまして、足止めをされていたのですよ…」


 呼ばれたカロリとトウブのほうは、タプタプのお腹とだるだるの頬を揺らしながら、それは大変だったな、みたいな言葉を弟のライルに掛けて、エイトに向かってその贅肉をぶるんぶるんと揺らしながら歩いてきた。


 その際に、その横を通り抜けながら兄二人にお礼を言いながら追い越してエイトの横を奴隷を引きずりながら通り抜けて行った。その瞬間に、蚊の飛ぶような声で、すまない。と聞こえたのは気のせいだったのだろうか。


「はぁ…はぁはぁ。 うぉ~い。平民。我ら領主の息子としっての狼藉かぁ~~? 場合によっては処刑だぞぉ~~?処刑~~~! まぁ~~?僕達ぃ~~今日は機嫌がぁ~?良いからぁ~~?特別ぅ~に、許すけどぉ~?次はないぉ~~?」

「はぁ…はぁはぁ… ないぃ~……はぁはぁ… ぉ~~?」


「は、はぁ…。ありがとうございます。領主サマー」


 うむ、いい心がけだ!みたいなことを言って、のっそのっそと来た道を引き返していくデブ2匹…、もといカロリとトウブ兄弟。


 ――――ふぅ。なんとかなったみたいだ。って!!やべぇ!そういえば俺もアリーナに予定があるんだった!急がなきゃ



 周囲で見ていた人達も流血沙汰にならなくて安心し、よくやったと賞賛しようとしたところ、そこには事の元凶であった少年の姿は消えているのであった。

「いつの間にいなくなったんだ…」「よくやったぜあのにいちゃん!」「どこかで見たことあるんだよなぁあのにーちゃん…」

 などの声が上がっていたのはその場に居たエイトはもちろん聞くことが出来ずに、これから自分に襲い掛かる悲劇に気づくことは出来なかったのであった。



 ***


「悪い、遅れたか?」


「お~~~そ~~~いっ!!エイトくん!!わ、私起こしたじゃないっ!!!」


「ははは!!相変わらず仲が良さそうだな。エイト」


 顔を赤くして静かになったサチをほっておいて、エイトは門番に話しかける。


「久しぶりだな。えぇと…」 

「そういえばお前には名乗って無かったな? ヴァンだ!よろしくな!」

「そうか、ヴァン。よろしく」


 まだ2回目の会話だと言うのに、昔からの親友みたいな雰囲気で話し掛けてくれるヴァン。エイトはその反応をみて先ほどの少し荒んだ心が温まる感じがした。


「そういえば、エイトくんいつも準備は早いのに、どうして今日は遅れたの…? もしかして買い食いとかでもしてたとかぁ~~??」


「なわけないだろ。 実は……」

 と事の発端と結末を手短にまとめヴァンとサチに伝えた。


「うぅ、そんなことがあったんだね…。その奴隷の女の子大丈夫かなぁ~…」


「……ライル…か」


 すかさず奴隷の女の子の心配をするあたり、やはり俺とサチの思考は似ているのかもしれない。

 ヴァンはというと、奴隷を見つけたくだりまでは、うんうんと聞いていたのだが、【ライル】という名前が出てきた時に黙り込んでしまった。


「やっぱり、ライルってやつは有名なのか」


「…まぁ、あれでも領主の息子だしな。有名なのは当たり前だが、その中でも裏の顔がすごいって噂されているのがライルだ。お前も見ただろうが、奴隷や平民に対する扱いはまるで家畜や物を相手にしているような横暴さだが、兄や家族が関わると人がころっと変わったように好青年に振舞うことが有名だな」


「あんまり良い印象ではないな。そんなんでいいのか貴族っていうのは…」


「良い…ってわけじゃあないな。領主の息子であっても、3人も兄弟がいるわけだし、末っ子だ。領主になれるのは1人だからな。街の人達からのすさまじい支持でもない限り領主にはなれないだろうよ」


 確かに、カロリとトウブが来たときに人がガラっと変わったしな、と納得するエイト。


「まぁ、支持されているって感じはまったく無いな。…あぁ、もしかして領主にはもうなれないからって荒れているのかもな」



「うぉしいい!変な空気になっちまったけど、気を取り直してエントリーと行こうじゃねーか!! サチちゃんはエントランスを抜けて、アリーナの観客席で待っていてくれ! すぐに俺も合流するぜ!!」


 と意気揚々とヴァンがアリーナへと入っていく。すごい元気だなあ、と思いながら二人もヴァンのあとを追うようにしてアリーナへと足を踏み入れるのであった。




「トーナメントへようこそ! 出場希望ですか? もし、観戦希望であれば、このまままっすぐ進んでいただいた先にある出口からアリーナの観客席へと行けます」


 ハキハキとした口調で笑顔で対応しているお姉さん方。みんな綺麗な人ばっかりだなぁ、と思っていると、わき腹に痛みを感じた。


「え~い~と~くぅん?? あんまり鼻の下のばしてないで、早くトーナメントの受付すませてねえ~?? それじゃ、私は観客席に行くけど、く・れ・ぐ・れ・も 変なことは想像しないようにね?じゃあ、頑張ってねっ!」


 といい去っていくサチ。目が笑ってない笑顔が怖い。


「あなたは、出場希望の方ですね? 出場希望の方にはお名前をご記入していただいております。偽名でも構いませんが、いかがいたしますか?」


「あ。すみません…俺、文字書けないんですけど…」


「大丈夫ですよ。ここにいらっしゃる方の半分は文字を書けない人なので、お気になさらないでください。私が代筆しますので、お名前を教えてください」


「ん~、偽名かぁ…。まぁ別に隠す必要もないし、エイトでお願いします」


「かしこまりました。[エイト]様ですね。ハイ。受付完了です。 それでは、そこの通路をすぐ左に曲がると控え室があるのでそこで開始までお待ちくださいませ」


 ありがとう、とお礼を言い、指示通りに通路を進んでいくエイト。ガチャリとドアをあけてみるとそこには----歴戦の猛者達であろう風貌をもった人達がいっぱいいるではありませんか。


 わぁ、これで1位になるとかムリゲーだよー…と心の中でぼやきながら部屋の隅っこに座るエイトであった。



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