トーナメント当日 朝編?
今回短めです。
トーナメントの前日。
さすがに眠りたかったので、サチには悪いがベッドを一人で使わせてもらうことになった。その間サチはベッドの横にあるイスで俺のことを見ていると言い、かたくなに俺が地面で寝るという申し出を拒んだ。
久しぶりに一人で寝るベッドは少し寂しさもあるが、この4日間で溜まっていた疲労は自分が想像していたよりも大きかったようですぐに深い眠りに落ちた。サチはそれを見計らって独り言をぽつりとこぼした。
「やっぱり気を使わせちゃってたんだね…。エイトくん…私はエイトくんのお荷物なのかな…。出来ればこれからも一緒にいたいよぅ…。けど、もし私が足手まといになったときは……!」
そこで言葉をきったサチは視線をエイトから外し窓の外に視線を移しそのまま明るくなるまでじっとしているのであった。
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―――――「雪菜、創が死んでしまったのはキミのせいじゃないよ。例えキミが轢かれそうな子猫を見つけていなかったとしてもアイツ…創は子猫を助けに行っていたとおもう。昔から理不尽とかいってすぐ諦めるイメージをもたれていたアイツだけど、本当は正義感が強いやつなんだ。今回も体が勝ってに動いてしまったんだろうね…それに、創を助けに行けなかった僕も情けないよ」
「で、でもぉ~…そーくんが気づかなかった可能性もあったし…。見つけたのは私なのに助けにもいけなかったし… どうすればよかったんだろう…。怨まれてるよね私… 嫌われたくないよぉ~…」
「さっきも言ったけど、雪菜が見つけなかったとしても創は子猫を見つけてたさ。そして、助けられないのはきっと普通のことだよ…。怨んでいるなら僕も怨まれているだろうね…」
「進くん。私、謝りたい…謝って済む問題じゃないけど、とりあえず謝りたいっ!私が可愛い子ぶって子猫を心配する格好をしたせいで、そーくんが死んじゃった… もう可愛い子ぶるのはやめる!」
「…えっ。なんかすごいことを今さらっと言ったね… 雪菜ってキャラ作ろうとしてたんだね… ぷぷぷ…はっはははは!…ごめんこんな時に笑っちゃって。けど、そっちのほうが僕は好きだよ。それに、創もそっちのほうが絶対に好みのはずだよ。あと、僕も謝りたい。あの時一緒に助けにいってやれなくてごめんって。一人にしてしまってごめんって謝りたい!」
「いつか会えるといいね…。会えるかなぁ…そーくん…気まぐれさん…だからなぁ~…ぐすっ」
「きっと会えるよ。そんな気がするんだ。いつも理不尽に巻き込まれているからね。今回もきっとその理不尽の渦に囚われてしまっただけだよ!そのうち一人で解決してもどってきたり…するかも…しれないなぁ」
くすっと笑いながら二人は泣いた。今は会えない友人を想って。
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―――――懐かしいヤツらの夢を見たな。死んだ俺の心配をする二人の夢を見るなんて、我ながらどうかしているとは思うが、少しだけ嬉しかったので良いとするか…と、それよりそろそろサチが起こしに来る時間だな----
「おはよっ!エイトくんっ。起きて~~! 早く起きないとおそっちゃうぞ~~~!」
「…すーすー」
――――秘儀、狸寝入りの術だ!おそっちゃうって言われたらそこは不肖このエイト、おそわれちゃおうじゃないですか!動かざること山の如し。さてどうくるサチさんよお!
「あれぇ…?起きてない…。いつもなら起きるんだけどなぁ~。今日はぐっすりだったから少しだけちょっかいだしてもだいじょうぶかなっ!」
ぷるぷるとベッドにあまり体重をかけないように片手を付きバランスをとりながら空いた片方の手で俺のほっぺや今日胸板あたりを優しく触れてくる。
割れ物を触るようでいて、愛おしさや、困惑などが伝わってくるような触り方だ。くすぐったい。
「ほわぁ~~。ほっぺ意外とやわらかいぃ~。ず~っと触ってみたかったんだよねっ!筋肉もすごい付いてる…。一緒に寝ているときにおっきいなっておもったけど、やっぱり安心するなぁ~。………ちょっとだけ…匂いを……---すーはーー!~~~っ!!やっぱり!布団に残っている匂いより強くていいなぁぁあ~!!もうちょっとだけ…あと一回だけ……すー……ってええ!あええあげほっげほっっ!!…え、え、エエエ! エイトくん!? いつから起きてたんでしゅか…」
「あー、えーっと…。『おはよっ!エイトくんっ。起きて~~! 早く起きないとおそっちゃうぞ~~~!』のとこからだな」
ものまねのオマケ付きで説明してやった。
「~~~~~~~~~~~っ!!!ばかあああああ!!!!」
「あ、ちょっと…ってもういなくなってる…理不尽だぁ」
サチは顔を真っ赤にしながら猛ダッシュで外に飛び出していってしまった。
「仕方ない。準備するかぁ~」
こうしてトーナメント当日の朝を迎えたのであった。
つぎ、やっと戦い始めれそうです。