004*可愛い可愛い可愛い!!
「アリス───このお茶美味しいね───」
一口、紅茶を飲んで感想を一言。アリスはそうでしょう、と微笑んだ。
時雨は、アリスに言われるがまま着いていくとそこは豪邸の中の広い庭だった。庭といっても凄く広いし手入れもきちんと行き届いていてほんと凄い。
そしてど真ん中に妙に横長のテーブルクロスがひかれたテーブルが置いてあり、自分はたくさんのさまざまな種類の椅子からピンクの椅子を選んで座った。
アリスは自分の向かいの白くてふかふかの椅子に。テーブルには色々なお茶・お菓子が並べられていた。
「お茶ではなく紅茶よ。言動は慎みなさい」
「は、はぁ...」
力なく頷く。何か女王と家来みたいな感じだ。アリスの訂正でお茶=紅茶らしい。
「えっ───とそこのミルクとってくれる?」
紅茶を飲もうとしていたアリス目前のミルクを指差しながら言う───と、アリスの顔が歪む。
「ミルクを?その紅茶はストレートで飲むものよ?ミルクを入れると香り・そして味が悪くなるわ。それならミルクを入れる為の紅茶を・・・」
「いい!大丈夫!・・・ストレートも凄く美味しいよ(はあと)」
「・・・そう」
それからアリスの紅茶話(?)が始まった。
自分は紅茶とかは午後の紅茶とかそういうのでよく飲むので興味はあったのだが───
長い。
この人、喋り始めたら止まらない性格らしい。べらべらと喋る、喋る!
「紅茶とは摘み取った茶の葉と芽を乾燥させ、もみ込んで完全発酵させた───」
「アッサムは水色は澄んだ濃い目の深い紅色でミルクティーに適し、甘い芳醇な香気を持ち、こくのある濃厚な味で───(以下略)」
「フレーバーティーは原茶では味わえない味と香りを楽しめるのだけど(略)」
「・・・・・・・・・・・・・凄いね」
「そうかしら?」
目をキラッキラに輝かせて語るアリスは・・・・・・・・・・・・・・・・・・凄い。
これ以上喋らせておくと日が暮れてしまうので止めた。随分前から止めるタイミングを狙っていたのだが無理だった。この人いつ息してるんだ。
「そういえば───アリスの部屋、見てみたいなぁ・・・」
話を逸らす。
だが嘘が混じってる訳でもなく本当に興味があったのだ。
「え」
カキン、と空気が固まったような気がした。え、やばい事言ったけ・・・と少し焦る。
「・・・何か変なものでもあるの?」
「な、ないわよ!ない!ない!さぁきなさい!」
「は、はい・・・」
ガタッ!と席を立ち進み始めたアリスに置いていかれないように着いていった。
(何か順応しつつあるなぁこれ・・・)
***
「───わ、」
「な、何かしら?」
(シックで大人っぽい部屋だと思ってたけど・・・何か可愛い部屋)
ピンク系のフリフリ・リボン・ぬいぐるみの可愛い部屋だった。説明が面倒なので後はご想像でお任せします。
「いや、思ってたのと違うなぁと思って」
「な、何!私だって・・・う」
ばふっとベットにダイブするアリス。自分はそこ等辺にある椅子に座る。
「・・・変かしら」
「え?」
ぼそりと蚊のなくような小さい声。それはいつもの(?)お嬢様口調で高飛車(?)のアリスからは考えられない声だった。
「別に変じゃないって!ただ意外だなぁって思って」
「・・・・・・・・・・やっぱりそうじゃない」
ぎゅっとベットにあるぬいぐるみに抱きつきこちらを見るアリスは───
「か、可愛いッ!!!」
ぎゅっ───!
「!?」
抱きしめる。そういう趣味はなかったと思うのだが可愛い、可愛いすぎる。ぎゅーと手にこもる力が増す。
「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い!!!」
「・・・・・・」
「・・・・・・あ、御免!」
すっかり押し黙っていたアリスに我を戻され、ぱっと手を離す・・・と、アリスは反対の方を向き時雨に目をあわせてくれない。
「・・・・ほんとごめ...ん?」
(耳が・・・真っ赤・・・・)
「・・・・・もしかして照れてる・・・?」
「照れてない!」
「照れてるじゃん。可愛い」
かあああと赤さが増したような気がする。これって・・・・
(新種のツンデレ・・・・・・)
アリスの新しい性格に気づけたのはとても嬉しかった。
「別に照れてないわよ!」
この世界にも、アリスにも慣れてきたような気がする。
(この世界に慣れてきてしまった自分は、帰えらなくてはいけない事を知っているはずなのに)