001*退屈な日常に差した非日常
「ぎゃあああああああああ!!!!!!何でこんな所に穴が───じゃねえまだ死にたくない返せ時雨の青春──────ッ!!!」
───時雨、つまり自分が深い・・・とっても深い大きな穴に落ちるまでの出来事は数分前にさかのぼる。
***
「時雨ーまた明日ね───」
「ん!また明日───」
数時間前までは素っ気ない家々並ぶ路地は夕日が照らすオレンジ色に染まってとても綺麗。
そんないつもの道で橋本時雨───どこにでも居そうな平凡な普通のルックスの持ち主。
中学校の帰り道。
いつものように友達と『第一公園』の別れ道で別れた。
そう、この時までは゛いつもの゛だったのだ。
「───む?」
友達と別れさぁ家にいざ出発!とばかりに足を踏み出そうとした時、何気無く視界の隅にあった第一公園に違和感なものがあった。
誰もいないはずの公園でひょこひょこと動くもの───
自分は気になって公園の入り口まで軽い足どりで行くと・・・ウサギがいた。
ウサギ。兎。うさぎ。
真っ白なウサギがひょこひょこと白い耳を動かしながら公園の中を動いていた。
「・・・なーんだただのウサギかぁ驚かすなよ全く───・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「えぇえええええええええッ─────────!?」
そう、こんな何も無い平凡な路地の公園にウサギが居たのだ。何故か。こんな所に。
関係ない。関係ないはずだ自分には。
だが、耳をぴょこぴょこさせながらとてとて歩く姿はもう───
「か・・・可愛いッ!!」
可愛いすぎる!!!
思わず公園ど真ん中に居る真っ白なウサギに駆け寄り───抱き上げる。
抱き心地は最高だった。もこもこした毛なのにどこか高級感を味あわせるしっかりと整えられた毛。そしてまだらでもなく混色でもなく、真っ白な白色。
ウサギは逃げるかと思ったが難なくするりと抱き上げられ、抵抗することなく自分の腕の中に収まっている。
こちら側を向くような形で抱き上げているのでウサギのつぶらな瞳がくりくりとしていてほんと可愛い。
わずかだが、ヒクヒクと鼻を動かす仕草もピクピクと耳を動かしている仕草全てが可愛く思えてくる。
余談だが自分は犬を飼っていて、その魅力の圧倒されたというかとにかく───大の動物好きなのである。
「あ───可愛い!飼っちゃいたい!いや、飼ってもいいよね野良だし!」
そもそもこんな所でウサギに野良じゃない・野良だ、という事自体おかしいが何故かウサギの可愛さパワーでそんな事はどうでもよくなってきた。脳が麻痺されているようだ。
人間よりも少し早いトクトクと心臓を波打つ音とほんのりと、温かい温度が伝わってくる。
(温かい・・・)
トクトクトクトクトクトク...
トクトクトク...
どくん、どくん、どくん...
(・・・・・・・?)
(今急激に音が遅くなったような...?というかどくんどくん.....?)
ウサギってそんな音だったかなぁと首をひねってぼうっとしていた意識を、ウサギに戻すと───
「・・・・・・・・・・・ぎゃあっ!!」