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『人間界と人外同盟国2』

此処は町外れの書店屋。

品揃えは悪いものの、古風な作りから愛用されている人外民も多いのだとかで、かなり年季が入っているが、未だに存在する数少ない店。


そんな店に私は度々通っていた。


「嬢ちゃん最近その本ばっか読んでんね。」

「えぇ、少しでもこの世界の事知りたくて。」

「ふーん・・・あんた猫又族キャットテールなのに、情報が欲しいなんて珍しい子もいたもんだね。」

「田舎育ちなもので。」



猫又族キャットテールとは。

見た目が人間にソックリな種族で、人間との違いは耳や尻尾が生えている。他人や歴史、ましてや情報などには興味がないとされ、日々その場凌ぎて生きている事で知られる種族・・・だそうだ。


(まぁ、私は今そんな格好しているわけだが)


少し前あのクソガラス・・・琴町コトマチに頼んで、街に出てもおかしくない様に、人間に近い猫又族キャットテールと同じ様な容姿してもらった。


初めは渋々と言った様だったが、猫耳や尻尾が生えたと同時に彼は何故が鼻血を出して『ご馳走様です』とかほざいていた。



して、そんなことはどうでもいい。

私が何故この様な書店にいるのかと聞かれれば・・・私はこの世界に不本意ながらも来てしまった訳で、せめてこの世界の事を少しでも知らなければと思い至った訳だ。


正直、この世界において、私は無知なのだ。


余りにも無知過ぎて、家の中を土足で歩き回る風習なんて米国だけだと思ってたから、始めこの世界に慣れるまで色々と大変だった。



最近話題の異世界召喚モノの小説や漫画読んでいたせいなのか、始めの順応性は凄かった。


「あ、これ異世界じゃね?」とか一瞬思う程、受け入れるのがとても早かった。


そう、初めだけだ。


異世界ヤッホォとか言っていた昔の私は本当に阿呆らしく、そして馬鹿であったと言いたい。いや断言出来る。あの時の私は馬鹿だった。


実際召喚されてみれば血塗られた愛を向けて来る、

メンヘラに近い変態紳士カラスに、

【貴女の為に皆殺しちゃった☆テヘペロゴッツン☆】

・・・と、とんでもない事になったのだ。


今まで読んできた異世界ヤッホォモノとは、ベクトルが180度違かった。


召喚されて勇者になるとか、


美男子に囲まれて逆ハーとか、


男性に転生してハーレムとか、


中には魔物になって最強になるとか・・・


まだそっちの方が私にとっては良かったかもしれない。


何故なら現実が・・・


2000人の屍の真ん中で、

愛に狂った人外史上最悪の変態紳士に、

生涯を一緒に過ごしてくれと、

満面の笑みで犯罪者の嫁になってくれと、

悪びれることもなく言われたのだ。



まだ勇者の経験値になるレアキャラモンスターになって、追われる日々になった方がまだいい。

・・・と、今の私なら言える。


私からすると、

犯罪がどうこうと言う問題を通り越していた。


初めて会った時、琴町のあの笑顔からは何の責任も感じなかった。つまり私を召喚する為にやった事を【光跡】・・・素晴らしい事をしたと、思っているのだろう。



(・・・怖いんだよな。)



私の為ならとか言って何でもしてしまいそうで、後先考えずに犯罪に手を染めそうで正直彼が怖いのだ。


現に既に指名手配犯として彼はこの国に命を狙われているわけだし・・・



「嬢ちゃん!」

「っ!」



ふと、背後から声を掛けられた。


「あんたん所の旦那、迎えに来てるよ。」


声を掛けて来たのは店の店主で、その店主の背後には見慣れたフードを被った鳥面の包帯だらけの彼がいた。


「コトマチさん・・・」

「カナ。今日の夕刻、視察隊が出回るらしい。何かあると大変だから迎えに来たよ。」

「いや、歩いて2・3分の所に宿借りてるのに迎えに来る必要あるの?」

「万が一だよ。私は貴女に何かあったらこの町一帯を火の海にするつもりだったから、自己防止さ。」

「それは懸命な判断だこと。あんたならやりかねないから余計に信憑性がある。」


軽く彼をあしらい、私は手に持っていた本を抱き抱え、会計する台へと向かう。


「なんだい嬢ちゃん?その本買って行くんか?」

「えぇ、この本なかなか興味深かったので。」

「ならやるよそれ。嬢ちゃんなんか知らんが、人間界の事やたら詳しいかんな。何時も小話聞かせてもらってる例だ。持ってけ。」

「えっ・・・あ、ありがとうございます。」


思わぬ収入に嬉しくなり、軽く相手にへらっと笑う。



「・・・カナ、」

「なに?」

「私にもそんな笑ったことないのに、何でまだ数日も会ってない彼には笑顔を向けるんですか?そんなに私が」

「重い!!!メンヘラ通り越してヤンデレだよもうそれ!!」



今日も琴町の愛は重かった。



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