エピローグ
カラスだという事は嫌でも理解出来た。
しかしながら、そのカラスが何故人間の私と同じ言語を喋り、同じ様に衣服を・・・まして紳士服を纏っているのかが不思議でならなかった。
身長も私より大き目くらいか、はたまたそれ以上か・・・・
「やっとお会い出来ましたね。」
渋めの声帯を持つ恐らくオスであろうカラスは、人間の様な前足で私の手を取り、そっと会釈をした。
鋭い瞳孔が私の目を捕らえ、目が離せない。
「貴方を手に入れるのにどれだけの犠牲を払って来たか・・・今となってはどうでもいいこととなりましょう。」
「いやいやあの・・・どゆこと?」
カラス・・・鳥人の彼は紳士的な態度で私に好意を向けている事はわかる。が、それ以上に明らかに私と彼を囲う様にある“それ”に、私は動揺を隠し切れなかった。
「貴女様を欲する事200年と半刻・・・・夢が叶いましたぞ。」
「まって・・・この・・・辺りの血は?」
私はその悍ましい光景に目を奪われていた。
血。
肉片。
四肢。
頭部。
臓器。
明らかに殺人現場にしか見えない光景が、
私と彼の周囲で繰り広げられていた。
「あぁ、ご心配無く。」
私の恐怖と絶望感を他所に、
彼はこう言った。
「これはただの屍です。」
満面の鳥面の笑みで。
後に彼は2000と言う同胞を、
人間界にいるカナと言う少女を召喚する為だけに、
惨殺の限りを尽くしたと言う報道が、
人外同盟国に放映された。