格上
6話
「……ここが奴の家か」
「うわー、でっかいなー」
そこには見上げるほどのでかさをした巨大な家が建っていた。
確かニーヤはアレスのことを金持ちだと言っていたが、まさか本当の事だとは思わなかった。
「……まあいい、取り敢えず入るぞ」
「いいけどよぉ、これ入れんのか?」
「……ともかく行くぞ」
そして俺たちは門の前にくると、そこには屈強そうな男がいた。
男は口をへの字に曲げ、俺たちをじっと見ている。
正直余り話しかけたくないが、話さなければこの家に入ることはできないだろう。
俺は度胸を決めると、門番に話しかけた。
「……おい、そこの門番。俺はアレスに用があってきた。そこを開けろ」
「ちょっ、おま、なんだよ、今の言い方、あいつが怒ったらどうすんだよ」
横でズクは心配しているが、そんなことは気にしない。俺の言葉を聞いた門番は、
「……なんの御用ですか?」
と一言呟いた。
「……少し話がしたいんだ。で、俺たちは中に入れるのか?」
「……少しお待ちください」
そう言うと門番は頭に指を当て、目を閉じる。そしてボソボソと喋ったかと思うと、門番は目を開け、俺に話しかけてきた。
「許可が下りました。どうぞお入りください」
そう言って門番は門を開けてくれた。
俺たちが門をくぐると、そこにはとても広い庭が広がっていた。
「うわぁ、中もめちゃくちゃ広いなぁ」
ズクは少しはしゃぎながら周りを見渡している。
だが俺は庭には目もくれず、玄関へ向かう。
そんな俺を見てズクも急いで俺の所にきた。
「それにしてもよぉ、俺が今から戦う奴ってどんな奴なんだ?」
今更ながら聞いてくるズクに俺は少しニヤける。だがここで話してしまえばこいつはすぐに逃げ出すだろうから言わないが。
取り敢えず俺らズクを無視してドアをノックしようとすると、ドアが開いた。
そしてそこには金色の逆立った髪をし、鋭い目つきをした筋肉隆々の男、アレスが立っていた。
「……なんのようだ?もしかして俺に挑みに来たのか?」
「ほう、よくわかったな。だが今日お前に挑むのは俺ではない。俺の横にいるこいつだ」
そう言って俺は横にいるズクを指差す。ズクは相変わらず間抜けな顔をして突っ立っている。
「……誰だ、そいつは?」
「こいつの名前はズク。間抜けな面をしているが、なかなかの実力者だ」
「なるほど、で俺はそいつをぶちのめせばいいんだな」
そう言ってアレスはニヤリと笑った。対してそう言われたズクは少しムッ、とした表情で、アレスを睨んでいる。
「おい、お前、俺を舐めてんのか?言っとくけど、俺結構強いんだぜ」
「ふっ、威勢だけは一丁前のようだな」
両者の目線に火花が飛び散る。何処となく空気が少しピリピリとしてきた。
今にも戦いが始まりそうな中、一人の男が二人に近づき話しかけた。
「お待ち下さい、アレス様。ここで暴れられるとまたご主人様に叱られてしまいますよ」
そう言われるとアレスは、納得したような顔で、俺たちに一言「ついてこい」と言うと、スタスタと歩き出す。
取り敢えずはついて行ってみることにした。
*****
「おいおい、なんなんだここは?」
俺たちがアレスに連いていくと、そこはとても広い広大な空間があった。
「ここは、亜空間と言って、空間を歪ませ新たな空間が作り出した場所だ。ここならいくら暴れようが、なんの問題もない」
そう言ってアレスはズクを睨み、腕を構える。そしてそれを見たズクも腕を構え、臨戦体勢になる。
「おい、ちょっと待て、今やられると、俺まで巻き込まれるだろうが!! ちょっと待ってろ」
そしてゴーマがなるべく遠くに避難したことを確認すると、二人はお互いに構え、お互いがお互いを睨み、動かない。
そして今、ズクが動いた。ズクは地面を蹴り、アレスまでの距離を一気に詰め、アレスに拳を叩き込んだ。
だがアレスは余裕の表情で、その拳を受け流し、隙が出来たズク目掛けて拳を打つ。
その拳はズクの顔に直撃し、ズクは吹き飛んだ。
すぐさまアレスは吹き飛んだズクに向けて一つのエネルギー弾を叩き込む。エネルギー弾は非常に大きく、さらにスピードも明らかに以上だ。
吹き飛んだズクはすぐに体勢を整え、目の前のエネルギー弾を見て、ズクは横にエネルギー弾を飛ばし、その勢いで回避に成功する。
「ほう、今のを交わすか、なかなかやるじゃないか」
「へっ、あれくらい余裕に決まってんだろ。」
二人はお互いにニヤリと笑う。
二人はほぼ同時に手を前に出すと、二人の手のひらから光り輝くエネルギー弾が飛び出し、お互いの弾がぶつかり合い、大きな爆発を引き起こした。
ズクは爆発が起こった時、新たなエネルギー弾を生成し、アレス目掛けて、撃ち込んだ。
その一方でアレスはその場を動かず、 向かってくる弾を全て弾く。
その隙にズクはアレスの背後に回り込み、蹴りを繰り出す。
アレスはズクの蹴りを受け止め、ズクの顔目掛けてエネルギー弾を叩き込んだ。
アレスのエネルギー弾をまともに受けたズクは地面に叩きつけられた。
「くそ、つぇな、だが此処からが本番だ」
そう言うと、ズクは立ち上がり、力を溜め始めた。
ズクの力が上がるにつれ空気は震え、地面は崩壊してゆく。
そしてズクの身体は、ほんのり赤く染まり、より洗練されてゆく。
アレスはそんなズクを見て笑っていた。その目はまるで獲物を見つけた獣のようであり、アレスは闘気をみながせていた。
そしてズクはアレスを見て、ニヤリと笑った。
その瞬間、ズクは消えた。いや消えたのではない。早すぎて、消えたように見えた。
ズクは一瞬のうちにアレスの懐に入り込むと、そのまま拳を腹に思いっきり叩き込む。
拳は沈み、アレスは堪らず腹を抑える。
ズクはその隙にアレスの髪を掴み、顔面目掛けて膝蹴りを繰り出す。
これにはさすがのアレスも耐えきれず、ズクから逃れようとするが、ズクの手はなかなか離れず、結果として計5発の蹴りを喰らった。
手を離されたズクは両手を前に出し、アレスにエネルギー波を浴びせる。
ズクのエネルギー波は先ほどのとはわけが違い、太くそして巨大だ。
アレスは回避しきれず、正面からエネルギー波をもろに受け、大きく、吹っ飛んだ。
「ふっふっふっ、はっはっはー、これを正面から受けて立ち上がった者はいままで3人しかいない。お前はどうなんだ?アレス」
だが、吹き飛んだアレスからの返事はない。
「おっ、やっぱり俺が勝ったか。よっしゃ〜、まあ、俺に勝てるやつなんかいないよな」
ズクはもう勝ったつもりで、はしゃいでいる。この時、アレスが倒れていた方向から大きな衝撃がズクを襲った。
「な、なんだ!?」
ズクはそっちを見ると、そこには元々あった筋肉が更に盛り上がり、恐ろしい力を放つアレスの姿があった。
「もう終わりだと、戯言を抜かすな、ここからだ、貴様に俺の本気をちょっとだけ見せてやろう」
「へっ、強がってんのか知らないけど、お前はさっきあれをまともにくらったんだ。もう大してうごけねぇだろ」
「試してみるか?」
アレスはニヤリと笑うと、ズクの元に猛スピードで向かいだす。
その速さにズクは少し驚くが、すぐに向かってくるアレスに、エネルギー弾を連続で打つ。
だがアレスには効かず、その勢いは止まらない。
そして難なく、アレスはズクの元にたどり着いた。
「どうした?俺を止めるんじゃないのか?」
「な、お前なんでそんなに元気なんだよ!?」
だがアレスは答えない。そしてアレスはこれが答えだと言わんばかりに思いっきり拳をズクに叩き込む。
ズクもその拳を受け止めようとするが、アレスの力に勝てず、そのまま殴り抜かれた。
アレスは掌にエネルギー弾を溜めると、ズクを掴み、そして腹にそのエネルギー弾をぶつけた。
エネルギー弾はズクの腹で爆発し、ズクは吐血してしまった。
「はぁ、はぁ、俺、もう駄目だわ」
ズクは飛ぶ気力も失ったのか、地面に落下していく。
そんなズクをアレスは受け止め、そっと地面におろした。
「なかなかおもしろかったぞ。またやるか」
「へ、へへ、お、俺は、絶対にしたく、ないね」
そう言うとズクは意識を失った。
*****
……なんだあれは。俺が二人の戦いを見た感想はそれだけだった。
何故なら俺には二人の戦いが途中から見えなくなっていたからだ。
初めの方はまだ見れてはいた。二人のスピードは予想以上に速く、目で追うのが、やっとだった。だが最後の方はほとんど見えず見えたのはズクが負けたとこくらいだ。
俺は悔しかった。俺とあの二人の間にある圧倒的な差をこの目で見たのだから。
特にズクがあんなに強いとは思っていなかった為、なおさら悔しさがこみ上げてくる。
「くそっ、何故俺はこんなに弱いんだ」
俺がそう思い、項垂れていると、足音が聞こえてきた。
俺が上を見上げると、そこにはアレスが立っていた。
「どうだった、俺たちの戦いは?参考になったかぁ?」
「……ふん、此処に来て、得た物は自分がまだ貴様らよりも遥かに劣っているということだけだ」
そう言うとアレスはニヤリと笑い、俺の顔を見ながら言った。
「当たり前だ。お前は弱い、弱すぎる。俺からしてみたら単なるゴミだ」
……言い返すことが出来ない。俺は実際に弱い。
「だが、お前には見所がある。どんなにへこたれても、すぐに起き上がり、前に進もうとする精神力がある。そんなお前ならいずれは俺を少し手こずらせるくらいの奴になるかもな」
そう言ってアレスはニヤリと笑い、俺の肩を叩く。……少し痛かったが、俺はそこで立ち上がることが出来た。
「ふっ、まさか貴様に励まられるとはな。だがそんなことは言われるまでもなく分かっている。俺は絶対に貴様を超えてみせる」
「ふふふ、少しは期待して待ってやる」
そんなことを言ってるうちに俺はあることに気づいた。
「そういえば、ズクの奴はどこに行ったんだ?」
「あいつはもう外で休んでいるぞ」
「ん?もう休ませたのか。こっちに連れて来れば良かったのに」
「あいつの番は終わったからな」
「ん?それはどういう……まさか!?」
「そのまさかだァ」
アレスは俺を見ながら笑みを浮かべている。
当然、俺は逃げた。一目散に出口へと飛ぶ。
だが俺の努力は虚しく、俺はアレスに足を捕まれ、引き寄せられる。
「や、やめろ、俺は今日は戦いに来たわけじゃないんだ」
「そんなことはどうでもいい、まだ戦い足りないのだ」
「や、やめ、ギャァーーーーー!!」
こうしてこの日、俺はアレスが飽きるまでズタボロにされたのであった。
戦闘シーンはまだまだ未熟ですが、これから頑張って行くので、是非期待してお待ち下さい。