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ボードゲーム

 15話


 今日、俺はダズルの店に訪れていた。ここの商品は変なものが多いが、これがなかなか面白い。

 最近はこの店によく遊びに来ている。ダズルともすっかり顔見知りになってしまった。

 因みにここの商品は全てダズルが作っているらしい。おれも少しは見習いたい所だ。

 そんなことを考えながら、俺は棚に置いてある商品を物色する。声が変わる飴や、掛けた部分に髭が生えるスプレーなど中々にユニークな品揃えだが、特に俺の目を惹いた商品は一つの大きなボードゲームのような物だった。商品説明欄にはこれ一つで様々な体験が楽しめるパーティセットと書いてある。値段の方は意外に安く、正直欲しくなってしまった。俺は手を顎に当て、買うかどうかを考える。そんな様子を見て、だすが背後から話しかけてきた。


「おい、お前それを買うのか?」

「見てわからんのか、まだ決めかねている」

「そうか、だが買うというなら多少は安くしてやっても構わんぞ」

「なにっ!?それは本当か?本当なら買わせてもらう」


 俺がダズルに詰め寄ると、ダズルは俺を手で押しのけ、そして値段を言う。

 その値段は予想以上に安かったので、俺はつい買ってしまった。そして何か言おうとしているダズルを無視して俺は早速、一緒に遊ぶメンバーを探しに店の外に飛び出した。


 *****


 俺はあれから街を走り、二人のメンバーを集めることに成功した。集めたメンバーはもちろん、ズクとレールだ。取り敢えずニーヤも誘おうと思ったが、何故か家にはいなかったので、結局俺の部屋で三人でやることにした。

 二人の反応はお互いに違い、ズクは楽しそうに、逆にレールは余り乗り気ではなさそうだ。まあ俺が強引に連れてきたからしょうがないか。

 ともかく俺たちはゲームを始めることにした。このボードゲームはルーレットを回して、出た数だけ前に進み、早くゴールした人が勝つというとてもシンプルなゲームだ。だがマスには様々な効果があり、そう簡単にはゴールにたどり着かないようになっている。俺たちは早速、駒をスタートマスに置いた。すると、ボードゲームは急に光り始めた。俺たちは咄嗟に目を閉じた。そしてしばらくたって、俺たちが目を開けると、そこには先ほどのボードゲームの風景が広がっていた。

 俺たちは顔を見合わせて、お互いを見る。


「おい、ゴーマ、これは一体どういうことだ?」

「おそらく、このゲームが俺たちを吸い込んだのだろう。気にするな、これはゲームの仕様だ……たぶん」

「おい!!ほんとに大丈夫なんだろうな!!」


 レールは少し怒りながら、俺に聞いてくる。そんな様子を見て、ズクが割り込み、レールを宥める。


「まあまあ落ち着けって。取り敢えずゲームなんだし、楽しもうぜ」

「はぁ、やっぱり来るんじゃなかった」

「よし、なら早速始めよう」


 俺たちはじゃんけんをし、順番はレール、俺、ズクという結果になった。

 最初はレールの番だ。俺はレールにルーレットを回すように即す。レールは俺を見て、溜息を吐くと、ルーレットを回す。出目は四で、レールは四マス進んだ。ついたマスには特に何も書いておらず、レールの番はこれで終わりとなった。

 次はズクの番だ。ズクは笑いながら、ルーレットを回す。出目は六、ズクは三マス進み、マスに止まった。マスには水に流され、三マス戻ると書いてある。ズクはぽかんとマスに突っ立っていると、マスの上から水が急に降り、ズクを三マス押し寄せた。そしてマスに着くと、水は消えた。ズクは苦しそうにゲホゲホと咳き込む。

 これがこのゲームの恐ろしさなのか。だがズクはまだまだ余裕そうだし、まぁ行けるだろあと俺はこの時思っていた。だがまさかあんなことになるとは俺は全く予想できなかったのだ。

 次は俺の番だ。俺はルーレットを回すとニと出た為、俺はニマス進むことにした。そして俺がマスに着いた時、俺の姿は消えていた。

 そう俺は海に飛ばされていた。だがそこはただの海ではない。俺の周りにはサメのような魔獣が俺を囲んで回っていた。

 俺は思わず、悲鳴をあげそうになり、口を手で押さえる。俺の額を汗が伝った。

 まずい、これは非常にまずい。今はまだ、襲ってくる気配はないが、いずれは襲ってくるだろう。

 飛んで逃げたいが、何故か俺の身体は動かない。こうして俺はマスに戻されるまでも怯えて海に浮かぶことになった。

 俺はボードゲームに戻ってきた。どうやらマスにそういうことが書いてあったようだ。この時、俺はようやくこのゲームの恐ろしさに気づいた。

 それから俺たちはマスを進めるにつれ、様々なことが俺たちを襲った。俺も魔獣に追いかけられたり、痴漢扱いされ、牢に入れられたり、さらにこの異世界の連中にギリギリ当たるか当たらないかの攻撃をされたりと、かなり酷い目にあってしまった。

 だが俺達は、ついにあと少しでゴールにたどり着こうとしていた。


「はぁ、はぁ、ようやく終わりだ」


 俺は息を切らしながら、目の前のゴールを見る。後ろからはズクとレールの声援が聞こえる。あの二人もかなり参っているらしい。

 俺は後ろを振り向き、二人に親指を突き出した。


「任せろ!!このゲームは俺が終わらせてやる!!」


 そう言って俺は息を吸い込み、ゆっくりと吐く。そして目を瞑り、精神を集中させた。

 そして俺はルーレットを回す。ゴールまであとニマスだ。一さえ出なければ俺は勝つ。まあ流石にこんな所で一は出さないだろう。

 そして俺はルーレットが止まるのをじっくりと待つ。そしてルーレットは勢いを弱め、そして一を指して止まった。

 俺は思わず、口をパックリと開けてしまった。まさかこんな所で一が出るとは、まぁ次にやればいい。

 俺は前に進む。そしてゴールまであと一マスになった。だが此処でも何かがあるはずだ。俺は身構え周囲を見渡す。だが特に何も起きない。俺はフゥと息をつき、床に座り込む。

 流石にここまでくればなにもないらしい。

 俺はもう一度ゴールを見る。すると、ゴールが急に光り出し、巨大な岩が降ってきたではないか。さらに俺の身体は勝手に動き、マスをドンドン下がって行く。横を見ると、ズクやレールもいるではないか。そして俺たちはスタートまで戻されてしまった。

 こうして俺たちがこのゲームから出ることが出来たのは、次の朝になってしまうのであった。

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