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狩り

 14話


「はぁ」


 俺は街のベンチに座り、溜息を零しながら財布の中をみる。だがいくら見ても寂しい中身しか入っていない。少し前までは金貨が三つも入っていたというのに、結局全部使い切ってしまった。さらにこの事を話すと、ニーヤには滅茶苦茶怒られるしで俺の気分は落ちに落ちていた。

 次にニーヤがお小遣いをくれる日までどうするか、俺がそれを考えていると、俺の目が暗闇に覆われた。


「だーれだ?」


 手がやたらゴツゴツとしていることから間違いなく男である事が伺える。さらにこんなふざけたことをする男の知り合いは一人しかいない。

 俺はその手を引き剥がし、後ろを振り返ると予想通りの顔があった。


「ズク、貴様何をしやがる」

「へへ、なんか落ち込んでるみたいだからよ、励ましてやろうと思って」


 ズクはヘラヘラと笑いながら、手を頭の後ろに組んだ。

 そんなズクを見て、俺は溜息を吐く。


「ふん、貴様に励まされるほど俺は落ちていない」

「相変わらずだなぁ、でどうしたんだ?」


 俺が落ち込んでる理由を話すと、ズクは笑いながら俺の肩を叩いた。


「今度はそんな理由で落ち込んでるのか」

「笑うなぁ!!俺にとっては厳しい問題なんだ。」

「ふぅ〜ん、じゃあいっちょ狩りでもいくか?」

「狩りだと?それで金が稼げるのか?」

「まぁそんな稼げねぇけど、お小遣い程度は稼げるぜ。どうする?」


 俺は腕組んで考える。俺も多少は強くなったし、少しでも金が欲しい。

 俺が頷くと、ズクは笑った。

 こうして俺たちは狩りに行くことになった。


 *****


 今、俺はズクに案内され、山の中にいた。

 此処にはラビットと呼ばれる魔獣がおり、それを狩ることが俺たちの目的だ。だがその魔獣は音に敏感らしくすぐに逃げられてしまうらしい。なので俺たちは慎重に森の中を歩きながら、ラビットを探していた。

 ラビットの特徴は身体が小さく、耳がやたらでかいと特徴的ではあるが、臆病な性格をしている為、人前に姿をあらわすことは少ないらしい。

 そんな魔獣を俺は見つけ出すことが出来るのだろうか。そんなことを考えていると、横にいるズクが肩をそっと叩き、前に指を指す。

 指先を見ると、草に隠れて見えずらいが、上の方から、ちょっと耳のようなものが飛び出している。

 もしかしたらあれかも知れない。

 俺たちは足音を出さないようそっと近づいてゆく。その時、その耳のようなものがピクリと揺れた。そして凄まじい風が俺たちを襲った。俺たちは吹き飛ばされないように足に力を入れる。そして風がやんだ後、その草に近づくがラビットは影も形もなかった。


「おい!!なんだあれは!!まさかあいつが起こしたのか」

「逃げ足が速いと聞いていたが、まさかこんなに速いとはなぁ」


 ズクはラビットが逃げていった方向を見ながら、笑っている。

 そんな様子に呆れながらも、俺はラビットが逃げた跡を見ると、周りの草は崩れていた。

 おそらくラビットが逃げたその風の所為だろう。

 恐ろしい逃げ足だ。これはレアな魔獣と呼ばれるわけだ。このままではどうやっても狩ることは難しいだろう。


「どうする?狙撃でもするか?」

「いや、おそらく奴はエネルギー弾を出せばその音で気づいてくる筈だ」


 俺は頭を捻って考える。普通に捕まえるのは無理だし、狙撃でも無理だとなると、……そうだ。


「罠なんてどうだ、それなら音もないし、気づかれないだろ」

「いや、あいつは警戒心が強いんだ。まず近付くかどうか」

「やってみらんとわからんだろ。一度やってみるぞ」


 俺は早速罠を作ることにした。とはいえこの場で作らなければいけないので大したものは作れない。俺は周りを見渡し、つかそうな木や石を拾い、簡易な罠を作り、草が生い茂った場所に設置した。とはいえ来るかはわからないので、俺たちはラビットを探しに行くことにした。

 俺たちは森の中を慎重に探すが、やはり見つからない。先ほどは本当に幸運だったようだ。時折、罠を見に行ったが、ラビットは掛かっていない。こうして俺たちが森に入って五時間が経過した。


「……見つからないな」

「ほんとなぁ、もう帰るか」

「待て、此処までやったんだ、せめてあと一時間やろう」

「しょうがねぇなぁ」


 だが結局ラビットは見つからず、一時間が経とうとしていた。

 俺は溜息を吐いた。こんなに時間を掛けたのに、結局成果なしとはな。俺が下を向いて歩いていた時、遠くの草むらからゴソゴソと音がした。俺たちは顔を見合わせる。そしてこそこそと、その草むらに近付いていく。

 そして俺たちはラビットのすぐ近くまで行くことに成功した。

 あと少しだ。俺は生唾を飲み込み、ラビットを見る。ラビットは草に夢中になっており、こちらに気づいてはいない。そして俺は、限界の速さでラビットに飛び付く。ラビットは俺に気付いたがもう遅い、俺はラビットを捕獲することに成功した。


「やった、ついにやったぞ!!ラビットを捕獲した」


 俺がガッツポーズを決めると、ズクは俺に拍手を送る。


「やったなぁ、取り敢えず殺しちまおうぜ」

「まあ待て、折角捕まえたんだから、少しだけ生かしておこう。あとついでに罠を見に行くぞ、もしかしたらあと一匹捕まっているかも知れない」

「ああ、そうだな。じゃあ行くか」


 俺はラビットを持ったまま、罠を見に行くことにした。ラビットはしっかりと持っているし、足も少し傷を付けておいたので逃げられる心配はない筈だ。

 そして俺たちは罠の方へと向かった。

 だがやはり森だからなのか虫が多い。さっきから虫が近付いてくる。

 そして俺は虫を手ではらおうとしたその時、なんとラビットが俺の手を噛んだ。俺はつい手を離してしまい、ラビットは逃げ出してしまった。まずいと思った時にはもう遅い、ラビットは一目散に逃げ出した。だが先ほど俺が足を傷つけた所為なのか、逃げるスピードはさっきよりも遅い。そしてズクに担がれて俺はラビットを追いかける。


「待てーー、此処まで来たんだ、もう逃がさんぞ!!」

「はぁ、だから殺しとけって言ったのによぉ」


 そして俺たちはラビットを追いかけるうちに罠の近くの方に来ていた。その時、俺にある考えが浮かんだ。

 俺はエネルギー弾を放ち、ラビットの走る道を絞り、誘導させて行く。

 そしてラビットが草むらに飛び込んだその時、張ってあった罠が作動し、無事俺たちはラビットを捕まえることに成功した。


「やはり罠を貼っておいてよかっただろ」

「そもそもお前が殺しとけば逃げられなかったんだぞ」

「そんなことはどうでもいい。さっさと殺すぞ」


 そして俺はラビットに向けてエネルギー弾を放ち、無事殺すことに成功した。

 目的を果たした俺たちは、早速、街の市場へと向かうことにした。


 *****


 俺たちはラビットを買いとっているという店に来た。そして俺たちは早速ラビットの死体を持って、店の店主に話しかけた。


「おい、お前がラビットを買い取っているやつか、早速買取を頼みたい」


 そう言って俺は店主にラビットの死体を渡した。


「ふぅ〜ん、まぁ結構でかいし、銀貨三枚でいいかい?」

「なんだと?ふざけているのか?もっと価値がある筈だ」

「そうだぞ、なんてったってあのラビットだぜ、さすがに銀貨三枚ってことはないだろ」


 俺たちは当然、店主に迫った。すると店主は目を見開かせ、そして笑い始めた。


「おい、何が可笑しい」

「いやいや、もしかしてお宅ら知らないのかい?今じゃラビットなんてそんなに値段は付かないよ」


 今度は俺が目を見開き、そして横にいるズクを肘で軽く殴る。だがズクも何が何だかわからないという顔をしている。取り敢えず俺は店主に聞くことにした。


「おい、なぜラビットの値段が下がっているんだ?」

「知らないのか、それはね、ちょっと前に新しくラビット捕獲用の罠が開発されてね、今じゃラビットを狩るのなんて僕でも出来るほど手軽になったんだ。この罠は結構有名だし、皆知ってるもんだと思ってたよ」


 俺は一呼吸すると、ズクを睨んだ。俺を見たズクはヘラヘラと笑いながら、手を振る。


「すまんすまん、んなこと知らなかったんだよ、まぁ、銀貨三枚でも上手い飯は食えるしいいじゃねぇか」

「いいわけあるかぁ!!俺の時間をかえせーー!!」


 こうして俺は一日無駄な時間を過ごしたのであった。

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