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気持ち

 12話


 俺はズクに無理矢理抱えられ連れてこられた場所は暗くジメジメとした洞窟だった。

 洞窟を見渡すと、変な生物も色々とおり、正直帰りたいと俺は思った。


「おい、こんな所で何を取ればいいんだ?」

「ん?ああ、そういえば言ってなかったな。この洞窟にはジメジメダケっていうきのこが生えててそれを取ってくりゃいいんだ」

「なるほど、でそれは何処にあるんだ?」


 俺がズクに聞くとズクは頭の後ろに腕を組み、白い歯を見せ、にひひと笑う。


「この洞窟のどっかにあるよ……たぶんな」

「たぶんだと?おい、まさか貴様知らないのか!?」

「いやいや、確かここに生えてる筈なんだよ。少なくとも前はここのどっかに生えてたしな」

「くそっ、もしかしたら何かもしれないのか」


 俺はズクに聞こえるように舌打ちをする。

 だがズクに気にした様子はなく、ズクは俺を無視して、さっさとジメジメダケを探し始めた。そんなズクの様子を見て、俺も探すことにした。

 洞窟の中はとても暗いため、俺はエネルギー弾を明かりの代わりにし、辺りを探す。だが見つかるのは変な生物の死骸だったり、臭い草だったりと、ジメジメダケは見つからなかった。


「おい、本当にあるんだろうな?そのジメジメダケとかいう奴は」


 俺は振り向いてズクを見る。だがズクは俺に背を見せ、うずくまっている。

 なにかあったんだろうか?俺はズクに近づき、ズクの肩を叩く。何度か叩いたが、返事がない。俺は心配になり、ズクの顔を見ると、ズクははなちょうちんを膨らませ、よだれを垂らしながら熟睡していた。

 頭にきた俺はズクの頭を叩く。だがズクは全く起きる様子がない。取り敢えず俺はズクに両手を広げ、エネルギー波を放つ。

 するとズクは目覚めたのか立ち上がった。


「あれ?俺なんでこんな所にいるんだ?」


 どうやら寝ぼけているようで、ズクは瞼を半開きにしながら、ふらふらと何処かに歩き出す。

 俺はさっさと目を覚まさせる為、ズクにおうふくビンタを繰り出す。流石にズクも目覚めたようで、口元の涎を服で拭き取り、頭の後ろに手をやりながら笑う。


「いや〜、すまんな、つい寝ちまった」

「っち、まあいい、それよりほんとにあるんだろうな」

「まあ、もうちょっと奥の方に行ってみようぜ」


 こうしてズクと俺はもう少し奥に行くことにした。

 それにしても洞窟というところは気分を憂鬱にしてくれる。

 明かりの方は問題ないのだが、さっきから変な生物達が俺たちに向かってくるのだ。

 俺は近づく度にそいつらにエネルギー弾を打っているが、まあいつも通り通用しない。


「っち、さっきから気持ち悪いな」

「これくらいでガタガタ言うなよ、男だろ」


 ズクはそういうがやはり気になるものは気になってしまう。

 俺は近付いてくる生物を手で払いながら、ジメジメダケを探しながら歩く。だがそれらしきものはやはりない。


「っち、奥に行ってもなかったらどうすればいいんだ」

「まあ、今回は諦めろ。いずれ仲なんて戻るだろ」


 ズクは他人事のように呟く。まあ他人事だが。

 俺は溜息を吐いた。時間的にはまだ余裕があるが、遅くなる前に帰らないとまたなにか言われてしまうかもしれない。

 俺はズクに少しペースを上げることを伝え、早歩きをしながら、ジメジメダケを探す。

 先ほどの場所からかなり歩いたが、ここで俺はあることに気付いた。


「おい、なんかさっきよりジメジメしてないか?」

「そういえばそうだな、う〜ん、少しおかしいな」


 奥に行けば行くほどなんだがジメジメしてくる。俺たちに向かってくる生き物達もなんだか増えてきた気もする。

 そして俺たちが歩いていると、前から大きなキノコのような魔物が俺たちに向かって走ってくる。


「うわ、なんだあいつは」


 俺はズクの方を見ると、ズクはその魔物を指差し、叫んだ。


「お、あいつだよ。あいつがジメジメダケだ!!」

「なにっ!?」


 俺は驚いた。なにしろきのこというんだからずっと小さい普通のきのこだと思っていたからだ。それがまさか魔物だったなんて。



「っち、魔物なら魔物と先に言え!!」

「すまん、そういえば言ってなかったな」


 ズクは頭をポリポリとかいた。俺は舌打ちをし、向かってくる魔物にいつも通りエネルギー弾を打つ。だが魔物はエネルギー弾を軽くかわして、口からなにか泥のような物をこちらに吐いてきた。

 俺は思わず交わすと、泥が当たった地面が少し溶けるのを見た。あれに当たるとまずいな。俺がそう考え、魔物から距離をとった。

 魔物は先ほどのエネルギー弾を警戒しているのか、余り近づいて来ずに遠くから泥を飛ばしてくる。俺も牽制の為エネルギーを飛ばす。お互いが動かずにお互いを見つめている。

 というかズクは何をしてるんだ?俺は横を見るがそこにズクの姿はない。

 そんな時、後ろから俺を応援する声が聞こえた。それは間違いなくズクだ。おそらく戦いたくないから隠れて見ているだろう。後で殴っとかないといけないなと考えながら俺は魔物を見る。魔物は先ほどと変わらずにたまに泥を飛ばしてくる位で動きはない。

 俺は舌打ちをする。このままでは逃げられてしまうかもしれない。俺は魔物を見ながらズクに叫んだ。


「おい、そこからでもいいから俺を援護しろ!!というかお前ならそこから先でも倒せるだろ」

「まあ、確かに出来るけど、俺がやるともしかしたら加減ミスって消滅させちゃうかもしれないし」

「なら俺にエネルギーを寄越せ!!俺ならやれる」

「わがままなやつだなぁ、まあいいか」


 そう言うとズクはおれにエネルギーを少し送ってくれた。そのおかげで俺でも多少は戦えるようになった。

 俺は早速魔物に弾を打つ。魔物は飛んでこれを交わす。俺はニヤリと笑い、飛んだ魔物に弾を打った。弾は見事に命中し、魔物は苦しそうにもがき動かなくなった。


「よし、ズク早速こいつを運ぶぞ」

「え〜、そいつは自分で持てよ」

「金貨やらんぞ」


 俺がそう言うとズクは素直に魔物を待ち上げる。目当ての魔物を手に入れたので俺たちは早速、ダズルの店に向かった。


 *****


「まさかほんとにとってくるとは」


 ダズルは少し驚きながら呟いた。そんなダズルに俺は手を出した。


「目当てのもんは取ってきたんだ、さっさとあれを寄越せ」


 ダズルは口を少ししかめたが、懐ろから飴を取り出すと、俺に手渡す。


「今度こそ、ちゃんとした使い方をしろ。もうこんなことはないからな」


 俺は頷き、飴を懐に入れた。そして催促してくるズクに金貨を渡し、早速ニーヤの元に向かった。



 *****


「おい、ニーヤ今帰ったぞ」


 俺は勢いよくドアを開け、ニーヤの部屋に入る。ニーヤはいきなり入ってきた俺に少し驚いたが、すぐにいつもの顔に戻った。


「まったく、女の子の部屋に入るときはノックくらいして下さいよ」

「ふん、そんなことよりお前に見せたいものがある」


 俺はそう言って懐から薬を取り出し、ニーヤに見せる。ニーヤはとても暗い驚き、俺から

 薬を奪うと、それを見る。


「どうしたんですかこれ!?本物じゃないですか!?」


 ニーヤはかなり驚いている。俺はそんなニーヤを見て、顔に綻ばせる。


「一応言っておくがちゃんとダズルから貰ったものだ。盗んだとかじゃないからな」

「貰った!?どうやったんですか!!」

「……まあ色々とあってな、それより言いたいことがあるんだが」

「? なんですか?」


 俺はなんだか恥ずかしくなってきて言葉が詰まる。だがここで引いては駄目なこともわかっている為、俺は息を吸い込み、ニーヤの顔を見る。


「……ニーヤ、その、この前は済まなかったな。これはその気持ちだ」

「この前?ああ、もしかしてゴーマ様気にしてたんですか?私は大して気にしてませんでしたけど」

「なにっ、だが色々と言葉に詰まってたじゃないか」

「それはゴーマ様でしょう。あの日以来なんか距離をとったのはゴーマ様じゃないですか」


 なん……だと……。俺は驚いた、まさか気にしていたのは俺だけだったとは。俺が肩を落とすと、ニーヤは俺の肩に手を置いた。


「ですが、ゴーマ様がこんなことをするとは思いませんでしたよ。この気持ちは私の心に入れておきます」


 ニーヤはそう言って俺にニッコリと笑った。なんだかそれを見ていると、元気が湧いてきた。


「ふん、まあいい、これからもよろしく頼むぞ」


 俺がそう言うとニーヤは笑顔で答える。


「はい!!」

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