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マジックアイテム

 10話


 最近、俺には少し気になっていることがある。

 俺はあの日、レールに誘われてから何度か修行をして貰っていた。だが、最近は修行はハードになり、ボロボロになりながら家に帰ることが多くなっていた。それは別にいいんだが、問題は帰った後だ。最初の内はまだ笑っていたが、最近はよくニーヤが俺に無理するなだとか言ってきやがる。まぁ、俺の治療は全てニーヤ任せなので文句は言えないのだが。

 そして今日も俺は修行を終え、ボロボロになった体を引きずりながら家に帰った。


「おい、ニーヤ、早く治療してくれ」


 俺はそう言って地面に倒れる。するとニーヤが急いで俺の方に向かってくる。


「ちょっと、またこんな無茶をして、もっと自分の体を労わってくださいよ」


 そう言ってニーヤは俺の胸の上に手を向け、治療を開始した。治療と言っても治癒魔法をかけるだけなのですぐ終わるのだが。


「ふぅ、終わりましたよ。全くなんで超回復使わないんですか?」

「ふん、それはレールにスキルブロッカーを使って修行して貰っているからだ」

「そんなことしなくてもいいじゃないですか」

「言いわけないだろ、ここの奴らはみんなスキルブロッカーを持っているんだ。ここじゃ超回復なんてないようなもんなんだ」


 俺は溜息を吐きながら首を竦める。そんな俺の態度が気に入らないのか、ニーヤはさっさと自分の部屋に戻っていった。

 俺もそろそろ一眠りしたくなったので、部屋に帰って仮眠をとった。



 *****


「ゴーマ様ー、ご飯の時間ですよ〜」


 ニーヤが俺の体を揺らして、俺に食事の時間を知らしてくる。俺はベットから起き上がり椅子に座り、ニーヤと共に食事をとる。

 ニーヤの作る料理はシンプルながら中々旨いので、俺も中々気に入っていた。


「相変わらず料理だけはうまいやつだ」

「そう言ってもらえると嬉しいですね〜。ところでゴーマ様、明日は私と少し出かけませんか?」

「なに?貴様なにを企んでいる?」

「別に、少し買い物に行くだけですよ。ね、いいですよね」


 明日は確かレールに用があるとかで休みのはずだ。だがなぁ。

 俺はニーヤを見る。ニーヤはなんだか期待したような目で俺を見ている。こういう時はいつもろくな目に合わない気がする。

 俺は顎に手をやり、少し考える。だがまぁ偶には付き合ってやってもいいか。


「よし、しょうがない。だが少しだけだぞ」

「はい、分かりました」


 ニーヤは浮かれた様子で笑っている。最近こいつが笑っているのを余り見ていなかったし、まあ偶にはこういうのもいいか。

 笑いながら俺は食事を済ませると、シャワーを浴び、そしてさっさと寝ることにした。


 *****


 翌日、俺はニーヤに起こされ目が覚める。

 俺はニーヤお手製の朝食を済ませ、朝の鍛錬に出かけようと扉に手を掛ける。


「あ、ちょっと待ってくださいよ〜。今日は私と買い物に行くんでしょう」

「少し走ってくる。安心しろ、すぐに帰る」


 そう言って外に出ると、俺は最近始めた朝のランニングを始める。ランニングコースは森まで行って、ここに戻るという、迷いようのないコースだ。

俺は早速、走り出す。だが一度トレーニングを始めるとつい夢中になってしまい、結局俺が部屋に帰ったのは、昼を過ぎたくらいであった。


「済まないなぁ、つい夢中になってしまった」


 俺は部屋を開けると、そこにはニーヤがいた。ニーヤは俺を見ると、安心したという表情をして、ホッと溜息をついた。


「なんだ?どうかしたのか?」

「いえ、帰りが遅かったので、今日はこのまま帰ってこないんじゃないかと心配してまして」


 どうやら俺はよっぽど信頼がないらしい。まあ修行をしていると時間を忘れてつい夢中になってしまう癖があるから、しょうがないといえばしょうがないか。

 取り敢えず、おれは汗を流す為、シャワーを浴びて、少し怒っているニーヤを宥め、ニーヤが作り出したワームホールを潜る。

 ワームホールから出ると、そこには狭く暗い地下室の様な所に出た。その部屋は一つの扉と上に伸びている階段があるだけで、部屋と呼べるなものではない。

 よく見ると扉の上に何かが書いてある。ここは何かの店の入り口なのだろうか?

 そんなことを考えていると、ニーヤがワームホールから飛び出してきた。


「さぁ、入りましょう」

「おい、ちょっと待て、ここは何の店なんだ?」

「ん〜、まあ、色々と便利な物が売ってる店ですよ。さ、入りましょう」


 そう言ってニーヤに手を引かれ、俺たちは店に入った。店の中は外より少し明るく、商品が数ある棚に収納されている。商品は偶に市場で見かける変な品に似たようなよくわからない商品が非常に多い。中でも俺の目を引いたのは表紙に大きなドクロが書いてあるお菓子だった。


「おい、これはなんだ?」

「おお、流石ゴーマ様、お目が高い。それはドキドキ死のチョコレートと言って何かには美味しいチョコレートが入っているんですが、何個かハズレが入って食べると様々な効果が現れるというパーティグッズなんですよ」

「……ふん、くだらないな」


 俺はその商品を棚に戻す。その時、背後から何かが落ちる音がした。俺はその音のした方を見ると、そこには、奇妙な奴がこちらを見ながら立っていた。そいつは茶色いローブを身につけており、顔は余りよく見えない。

 チラリと見える顔色は非常に悪く、はっきり言ってとても怪しい。

 俺はきみが悪くなり、顔をそのローブから背ける。だが俺の横に立っているニーヤは男を見ると、笑顔を見せ、手を振っている。

 知り合いなのだろうか?俺はそのローブに向き直り、尋ねてみることにした。


「おい、そこの怪しい奴、貴様何者だ?」

「……初対面の相手に随分な態度だな」


 ローブは少し低い声で俺に答える。

 声から分かるが奴はおそらく男なのだろう。

 俺が男を見ていると、横からニーヤが話しかけてきた。


「あの人はダズルと言ってこの店の店主さんなんですよ。それに非常に優秀なマジックアイテムの開発者でもあるんですよ。今日も彼の開発した薬を買いに来たんですから」


 ニーヤは俺にそう言うと、その男の元に行き、何やら話し込んでいる。なんだか仲間はずれにされているような気分になったので、俺はその会話に割り込むことにした。


「おい、その薬はどんなものなんだ?」

「それが凄いんですよ。何しろこの薬を飲むだけで、傷が一瞬ですべて治るんです」

「なんだと、おいダズルとか言ったな、それは本当なのか?」

「……ああ、本当だ」


 俺がダズルに向かって話しかけると、ダズルはハッキリとした声で答えた。


「中々凄いじゃないか。で、それはどんな品なんだ?」


 するとダズルは懐から飴のようなものを取り出した。

 この飴のようなものがその薬なのだろうか?

 俺は少し見てみたいと思い、ダズルに手を出すが、ダズルは出した飴を再び懐に入れ直す。


「此処から先は有料だ。見たいのなら金を払え」

「なんだと、別に見るくらい構わんだろう」

「そう言って取る奴は幾らでもいる。これはそれだけ大事な品物なんだ」


 俺は小さく舌打ちをする。この男結構な臆病物らしい。だが此処で問題を起こして店から出されると、その薬を見ることが出来なくなるため、ここは動かずに、ニーヤを見る。


「おい、こいつに金を払ってやれ。この薬を買いに来たのだろう。おい、この薬は一体いくらなんだ?」

「この薬は貴重だからな、一個金貨十枚だ」

「何?それは高すぎだろ。たかが薬に何故そこまで払わなければならない」

「……何度も言うが、この薬は貴重なんだ。この値段でも安いくらいだ」


 俺は今度はダズルにも聞こえるように舌打ちをする。いくら貴重なものとは言え高すぎる。俺は腕組みをして、ダズルを睨むが、ローブに隠れておそらく見えていないだろう。

 そうしてるうちにニーヤは金貨を払い、薬を手にしていた。

 俺はニーヤからその薬を奪い、よく観察する。だがその薬はどこからどう見ても、唯の飴にしか見えない。


「おい、本当にそんなに凄い薬なのか?どっからどう見ても唯の飴にしか見えんが」

「なら試してみるといい、実際にそれを使えば分かるはずだ」

「ふん、これでも十金貨も払って買ったんだ。そんなことに使えるか」

「そうか、まあ安心しろ、その薬は本物だからな。俺はそろそろ商品の品出しをしなければならないからそろそろ行かせてもらう」


 それだけ言うとダズルは、店の奥へきえていった。

 俺はそんなダズルを少し見つめ、そしてニーヤのほうへ振り返る。


「目当ての物も手に入ったし、そろそろ帰るとしよう」

「そうですね、ところでゴーマ様この店で欲しい物はありますか?今なら買ってあげますよ」

「……ならさっきの奴で」


 俺は結局先ほどのチョコレートを買って貰っい、部屋に帰った。

 そして部屋に帰ると早速俺はニーヤを呼んで、先ほど買ったこれを食べることにした。ふふふ、いつも偉そうなニーヤを黙らせることも出来そうだ。俺は思わず顔がニヤける。

 取り敢えず俺は開けて一つ口にチョコレートを放り込む。まあ最初から当たるということはないだろう。

 すると、その瞬間、俺の舌を激痛が襲った。

 どうやら当たってしまったらしい。俺は慌ててチョコレートを呑み込んだが、もうすでに舌が異様に辛くてしょうがない。


「か、からぃ、み、水」


 俺は部屋を探すが、そんなものは全くない。そして辛さで頭が混乱していた俺はあることを思いつく。そうそれは甘さそうな飴を食べることだ。そして俺はつい、昼間買った飴を舐めてしまった。

 飴を舐めた瞬間、舌から辛さは収まり、俺に安らぎを与えてくれた。だがその時俺は見た。いつもは笑っているニーヤの顔が全く笑っていない。こ、これはまずい。


「二、ニーヤ、これは違うんだ、その、なんというか」


 俺はなんとか弁明を図ろうとするが、ニーヤは何も答えず、ただ、無表情で俺を見ていた。そしてニーヤは立ち上がると、ゆっくりと俺の方へ歩いてくる。


「お、おい、あれはしょうがなかったんだ、あれは事故、そう事故なんだ」


 俺は後ずさりをしながら、弁明を重ねるが、ニーヤは相変わらず無表情でこちらに歩いてくる。そして俺の前に来ると、いつもとは違う笑みを浮かべた。


「……ゴーマ、あれは大事な物だったんですよ、どうするんですか?」


 俺は半笑いで笑う。そんな俺を見て、ニーヤは手を出して、ニコリと笑った。


「一晩そこで反省してきて下さいね」

「な、おい、お前、なにを」


 俺が言い終わる前にニーヤは何かを唱えた。その瞬間、俺は何処かに飛ばされた。

 俺は周りを見渡すと、そこは檻の中だった。だが唯の檻ではない、そこは魔獣達が眠っている檻の中であった。


「なにもしなければ彼らは起きません。今日はそこで反省して下さいね」


 何処かからニーヤの声が聞こえる。だが正直そんなことは頭に入らなかった。

 結局俺はその夜眠れず、檻の中で体操座りをして過ごすのであった。

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