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七章4:想いをかけた闇と光 深淵vs雷鳴


 エールの匂いを頼りに、

俺はスーと一緒にコーンスターチの街を巡っていた。

 最終決戦へ向けて街の中は緊張感と、

高揚感がごちゃ混ぜになった異様な熱気に包まれている。

 いつもよりも人も多いし、道は混雑している。

 そんな人波を掻き分けて、俺とスーは路地裏に店を構える、

静かなバーの扉の前に辿り着いていた。


 扉を開くと街の熱気とは対照的な、

静かで落ち着いた空気が肌を撫でる。


「いらっしゃいませ」


 バーカウンターの奥にいた、

ダンディな店主さんが声をかける。

 だけどカウンター席の奥で飲んでいたエールと、

彼女を左右では挟むアクアさん、

ブルーさんは俺たちに気づく素振りも見せないで、

話し込んでいた。


「エールさん、このままで本当に良いの?」


右のアクアさんがそう問いかけて、


「そうですよ。エールさんが獣神であっても危険が伴うのは変わりないですし……そのままの気持ちでは良くないと思います」


ブルーさんも少し不安そうにそう云う。


「……」


 だけど二人の間にいるエールは何も応えないで、

グラスの中にある琥珀色の飲み物を一気に飲み干した。

 瞬間、エールがはたりを顔を上げて、

入り口に俺とスーがいるのに気付いたみたいだった。


 アクアさんとブルーさんも気づいたみたいで、見開いた目を

こっちへ向けている。

 すると、エールはアクアさんとブルーさんの肩を、

ポンと同時に叩いて立ち上がった。


 顔の表情はいつもより少し大人しめなだけで、

見た目の違いは全くない。

 だけど今、足音を響かせながら近づいてきているエールが、

まるで別人じゃないかって錯覚を覚える。

それだけ、いつもとは様子が違っていた。


「エーちゃん……?」


 スーは目の前に立ち止まったエールを見て、

恐る恐る聴く。


「スー、ちょっと一緒に来てほしいところがあるんだけど」

「にゅ?」


 エールはスーの手を、

少し無理矢気味に取った。

 そして半ば強引に、

スーの手を引いて店の外へ歩き出す。


「エール!?」


 突然のことで、良く分かんない俺は踵を返して、

彼女の背中へ声をぶつけた。

だけどエールはスーの手を引っ張ったまま、

どんどん先へ進んでゆく。


「お兄さん、私たちも!」


いつの間にか俺の右側にはアクアさんが居て、


「エールさんとスーさんを追いますよ!」


左側にはブルーさんが居た。


「うえっ!?」


 俺はアクアさんとブルーさんに、まるで逮捕された犯罪者か、

はたまた捕獲された宇宙人グレイみたいに、

無理やり両脇を抱えられて前進を始めた。


 アクアさんとブルーさんに抱えられて、

エールの背中を追う俺。

 先行するエールの鬼気迫る雰囲気か、

もしくは彼女が獣神の化身なためか、

往来する人たちは次々と、道を開けてゆく。

 人波を割って、ズンズン進んでゆくと、

やがて道の向こうに見知った、

石造りのコロシアムが見えた。


 今でも忘れられないエールとの、

スーをかけた三番勝負。

その二回戦目をした思い出のコロシアム。

 門を潜って、円形の広い闘技場にたどり着く。


 そこでようやくエールはスーを投げ飛ばす様に手を離した。

 同時に俺もアクアさんとブルーさんの拘束から解放される。


「エーちゃん、何!?」


 スーは少し離れたところへ、無言で佇んでいるエールに

戸惑いが混じった声をぶつける。

 エールが衣擦れを起こした。


電磁装着キャストオン!」


 エールが叫ぶと、彼女の周りに稲妻が迸った。

 周囲を囲む金色の稲妻は、すぐに形を成して、エールへ

吸い付いてゆく。

 稲妻が掃けると、いつもの鎧を身に着け、背中にバスターソードを

背負った戦闘態勢のエールが居た。

エールはバスターソードを抜いて、

鋭い切っ先をスーへ突き付ける。


「スー! いや、深淵の獣神ダークロンのスタウト! おめぇに一対一の決闘を申し込むッ!」

「にゅ!?」


 驚くスーの目の前から、エールの姿が消えた。

 一瞬躊躇したスーだったけど、

素早く杖に召喚して横へ凪ぐ。

 瞬間、杖とバスターソードがぶつかり合って、

赤い火花を散らした。


「へっ! やるじゃねぇか!」

「エーちゃん! 急に、何ッ!?」

「だから決闘を申し込んだじゃねぇか! ちなみにスーに拒否権はねぇからな! こっちは真剣だ! 真面目に受けねぇと、怪我じゃ済まねぇぜ!」


 エールが一気にバスターソードを押し込む。

 スーはその力を杖で下へ受け流した。

 エールが体勢を崩した隙に、スーは飛んで距離を置く。


獣神化レベルアップッ!」


 スーはそう叫んで杖を薙いだ。

 杖から噴出した紫の炎が、小さな体を一瞬で燃え上らせる。

 炎が履けると、そこには獣神の正装を身に着けて、

深淵の獣神ダークロンのスタウトに変身したスーが居た。


「ナイトオブファイヤー!」


 スーの杖から紫の炎が噴出させる。

 だけどエールは炎をバスターソードの刀身で受け止めた。

 巨剣を横へスイングさせると、

紫の炎は空気の中へ溶けて消えた。


「てめぇ! スタウト! 手ぇ抜くんじゃねぇ!」

「嫌ッ! わたし、エーちゃんと戦いたく、無い!」


 スーが強く言葉をぶつける。

 刹那、エールの眉間に深い皺が刻まれた。


「だからてめぇに拒否権はねぇって、つってんだろうがぁ!」


 エールの咆哮こえが響いて、

彼女の体が金色に輝く。


電磁加速レールダッシュッ!」


 ダッと地を蹴ると、地面へ僅かに紫電が迸る。

 エールは金色の閃光になって、

一気にスタウトのとの距離を詰めた。


「にゅっ!?」


 スタウトは気づいて杖を翳したけど、間に合わない。


「スーッ! プロテクトだっ!」


 思わず俺はそう叫ぶ。


「ファイナルサンダークラッシュッ!」

「プロテクトッ!」


 一瞬、目の前が真っ白に染まった。

 圧倒的な力のぶつかり合いが、自然と体へ恐怖を感じさせて、

身体を震わせる。

 白いの世界が消失すると、そこには紫の摩力障壁でエールの巨剣を

辛うじて受け止めているスーの姿があった。


「良いぜ! その力だ!」

「エーちゃん!」


 エールとスタウトはお互いの力を更にもう一回押し込んだ。

 ぶつかり合った闇と光の力は、再び爆発して、

二人に距離を取らせる。


 バスターソードを構えるエールは、

相変わらずギラついた目つきをしている。

 対するスーも、もう説得を諦めたのか、

顔の表情を鋭く引き締めた。


「行くぜ、スーッ!」

「わたし、負けない! エーちゃんには、絶対ッ!」


 闇、そして光の閃光になった深淵と雷鳴の獣神は激しくぶつかり合う。

 

――止めなきゃ!


 こんなぶつかり合いは良くない。

 それにこんな強い力でぶつかり合ってちゃ、

きっと二人に良くない。

 俺は一歩踏み出して、

静止を叫ぼうと空気を吸い込む。


「待ってください! 今は、今だけはエールさんの好きにさせてあげてください!」


 耳に届いたアクアさんの声に驚いて、

俺は息を吐きだした。


「危ないときは私たちが命を賭してでも止めます! ですから今だけは! 今だけは辛抱願います!」


 ブルーさんの言葉に、疑問を感じつつも、

俺は動揺してしまった。


『……なるほど、そういうことか。少年よ、ここは私からも君に静止をお願いする』

「えっ!? ブレスさんまでどうしたんですか!?」

『いずれ分る。今は皆を信じて、大人しくしてはくれないか?』


 真剣なアクアさんとブルーさんの視線が突き刺さる。

 状況を正しく理解できてる自信は無い。

 だけど俺は、みんなのことを信じて、

状況を見守ることにした。


 その間も闇と光の獣神は大地を震撼させる程の、

ぶつかり合いを繰り返していた。

 闇の閃光に光の閃光が応える。

 力は見るからに互角。

 繰り返されるぶつかり合いは、地面を抉り、

壁際を過れば、固い石で造られたコロシアムが、

木工細工みたいに簡単に削り取られる。

 その時、光の閃光に動きが見えた。


 閃光を剥いだエールは強く地面を踏みしめて、

バスターソードを下へ構えた。


「すぅー……はぁぁぁー……」


 エールは静かに息を吸い込み、吐く。

 彼女へ接近する闇の閃光。

 あと少しで闇の閃光が彼女を吹っ飛ばしそうな瞬間だった。

 エールは目を見開いて、バスターソードの柄を強く握りしめた。

 瞬間、バスターソードの刀身が金色の輝きを放つ。


「喰らいなっ! これがあたしの全力! 雷鳴の獣神が放つ最高で最大の力!

これが……アルティメットサンダースラッシュッ!」


 必殺技ファイナルサンダースラッシュの何倍も、

いや何十倍もの威力を感じさせる光の刀身は、

空気を、空間をも切り裂く。

 必殺じゃなくて、必滅の雷鳴の破壊の力はまっすぐと

接近する闇の閃光へ容赦なく刀身を向ける。

すると、闇の閃光が消失して、ダークロンのスタウトが姿を

現した。


「負けない! わたし、強い!」


 スーが杖を突き出すと、その先に素早く紫の輝きが収束した。

輝きは大きな紫の光球に形を変える。


「マイキングイズユーッ!」


 巨大な紫の光球と、必滅の力を秘めた刀身がぶつかり合った。

闇と光の力は、ぶつかり合ったまま二人の間で拮抗を続けている。

 相反する力は互いを飲み込もうと、力をぶつけ合う。

その衝撃で周囲へ飛び散る細かな力の欠片は、

地面を抉って、コロシアムを削り、空気を飲み込んでゆく。


 強大な力を持つ獣神同士の激しい戦いを前にして、

俺はもはや指をくわえて見ているしかできなかった。


「エーちゃんッ!」


 その時、スタウトが光球へ更に力を注いだ。

 拮抗が破られて、エールの足が少し地面へめり込んで、

苦しそうに歯を食いしばる。


「負けねぇ……」


 エールは冷や汗を額に浮かべながら呟く。


「負けねぇぞ……! こんなんで負けてなるもんか!」


エールは更に足を踏ん張って、一歩強く踏み込んだ。


 力の勢いがエールの光の力に傾く。


「あたしはマスターのことが大好きだ! こんなに誰かを好きになったのは初めてなんだ! だからあたしはマスターが、あの人が欲しい! 一番近くに居たい! だからここでスー、おめぇを倒して、おめぇを退ける!」


 更にエールの力が強まった。


「にゅっ!?」

「あたしがマスターの隣に行くんだ! あたしがマスターの一番になって、あの人を傍で守るんだぁぁぁぁっ!」


 激しく、熱い叫びと共に、

エールから一気に金色の力があふれ出た。

光の力はスタウトの闇の力を怒涛どとうのように押し込む。


「ダメ! 知人くんは、わたしが守る! 一番、側いる、それわたしっ! ……にゅわああぁぁぁぁ!」

「ッ!?」


 スタウトの咆哮こえに呼応して、

闇の光球が膨らんだ。

 

「スーぅぅぅッ!」


 エールは負けじと光の力を放つ。


「エーちゃぁぁぁんッ!」


 スタウトとエールの叫びが重なって、

コロシアムへ響き渡った。

 闇と光の獣神の力は拮抗を破って、

巨大な爆発に変わり、

爆炎がスタウトとエールを飲み込んだ。


「スー! エール!」


 俺は唖然としているアクアさんとブルーさんを振り切って

爆炎へ向けて走った。

 もくもくと立ち込める煙の中に、

小さな影を見つける。


「けほ、こほっ……」

「スー、大丈夫!?」


 地面に膝をついて、

杖に寄りかかっているスーの肩を抱く。

 全身から物凄い量の蒸気が上がっている。

 だけど、それ以外目立った怪我のようなものは無かった。

 次第に煙が履けて、

コロシアムへ静けさが戻ってゆく。

 スーと俺から少し離れたところに、

エールのバスターソードが突き刺さっていた。

その脇には大の字で倒れ込むエールの姿が。


「エ、エール……?」


 自然と声が震えた。

 倒れているエールを見て、

嫌な感じがした。

 エールはピクリとも動かないで、

鎧から蒸気を上げている。


「エーちゃんッ!」

「あは……あはははははっ!」


 スーの声が、エールの盛大な笑い声でかき消された。

 エールは上半身のバネだけで、

ピョンと軽々起き上がる。

 トン、と地面へ足をしっかりつけるとそのまま走り出して、


「やるじゃねぇか! スー!」


 ボロボロのエールは笑顔を浮かべながら、

スーを強く抱きしめた。


「エ、エーちゃん? 大丈夫……?」


 スーは恐る恐るエールへ聞く。


「まぁ、全然無事か、っていわれりゃ大丈夫じゃねぇな。でも、まぁ、とりあえず大丈夫だから安心してくれ! そんなことよりも……」


 エールはそっとスーの頭へ手を添えた。

 そのまま更にスーを彼女の胸の中へ誘う。


「ホント、強くなったなスー。あたし今、そんなスーが見れてめっちゃ嬉しい!」

「エーちゃん……?」

「あと、ごめんな」

「にゅ?」

「スーはあたしの友達だちだ。だから友達の恋を応援したいんだ。でも……あたしだって、マスターのことが大好きなのも確かなんだ。だから……ごめん、こういう方法でしかマスターの一番になりたいって気持ちを吹っ切ることができなかったんだ……」

「エーちゃん……ありがとう」


 スーは小さな手でエールを抱きしめ返す。


「マスターの傍、頼むぜ深淵の獣神ダークロンのスタウト!」

「わかった! 頼まれる! 雷鳴の獣神、ブライトケイロン、エール!」


 抱き合うスーとエールを見て、

俺の胸の辺りがじんわりと温かくなる。

 全力でぶつかりあって、

より心の絆を確かめ合った二人。

 なんだかそんな様子が微笑ましくて、

嬉しくてたまらない。


『一歩間違えれば泥沼の三角関係だったな。全く……少年がきちんと態度を示さないから、こういうことになるのだぞ?』


 ブレスさんがボソリと呟く。


「俺のせいですか!?」

『もっと甲斐性を持ちたまえ!』

「いやぁ、犬だったら大丈夫ですけど……」

『そのチキンぶりは改めるべきだな』

「すみません」


 なんかブレスさんに怒られた。

っと、その時、


「じゃあ今度は私の番ですね、スー!」


 赤くて長い髪を振り乱しながら、

どこからともなくアルトが飛んできて、

スーとエールの前へ降り立つ。


「気合十分! 気合転身オーラチェンジ!」


 アルトは呪文を唱えて変身すると、

赤い棒を構えた。


「さぁ、スー! 私と君、どっちが最強の獣神に相応しい……わわっ!?」


 アルトの左右にピルスとランビックが飛び降りてきて、

さっきの俺みたいにアルトを両脇で抱えて持ち上げた。


「ピルス! ランビック! 何するんですか!!」


 アルトは必死に足をバタバタさせるけど、獣神の中で一番

身長が低いアルトの足は、むなしく空を切るだけだった。


「まぁ落ち着いてよアルト。今、君が全力でスーと戦ったら僕たち決戦どころじゃなくなっちゃうよー?」


 ピルスは苦笑い気味にそう云って、


「そうよ! バカはエール一人だけで十分だわ」


 ランビックがそう云うと、

エールの眉間に皺が寄る。


「おい、ランビック! てめぇどさくさに紛れて何……!?」


 スーから離れてエールはランビックに飛びかかろうとしたけど、

身体に上手く力が入らないのか、よろけてしまう。

 そんなエールの前へ緑の影が降り立って、

地面にぶつかりそうだった彼女をそっと抱き留めた。


「全く、相変わらず脳筋のうきんですね。ランビックの云う通り大事な決戦の前なのですよ? 少しは自重しようとは思わなかったのですか?」


 ボックさんの言葉は厳しいけど、

でも凄くエールのことを心配しているように聞こえた。

 エールはボックさんの腕の中でニヤリと笑みを浮かべる。


「はん! この程度であたしが戦闘不能になりますかっての。まっ、いざって時はおめぁがいるから頼るつもりでいたけどよ!」

「エール……全く、貴方って人は……」


 そう云うボックさんだったけど、

彼女は嬉しそうな笑顔を浮かべていた。


「へへっ! 頼むぜ、相棒!」


 エールが拳を突き出すと、


「任せなさい!」


 ボックさんもエールへ拳を突き返す。

 二人の拳がトンとぶつかり合うと、お互いに笑顔を浮かべた。


――やっぱ仲いいんだな、あの二人って。


 ようやくそう確信が持てた俺なのだった。


「みんな集合ーッ!」


 どうやら落ちつた様子のアルトが声を張り上げる。

そうすると、俺の前へスーを加えた獣神達が一斉に並んだ。

彼女たちは姿勢を正して、一斉に俺へ傅く。


「マスター、改めて誓わせて頂きます! 私たち獣神は今や、マスターのもの! 私たちは貴方へ永遠の忠誠を誓うと共に、表世界を守るために、この命に駆けて帝国と戦います! 約束します!」


 アルトの口上に誰も異を唱えないで、まっすぐな六色の瞳で

俺を見据えていた。

 獣神達みんなの強い意志を真正面から受けた俺の胸の内は、

強く、そして熱く震える。


――もう戸惑いはない!


 俺は今やこの世界ビアルの神を従える身。

そんな俺がやるべきことはただ一つ!


――表世界を裏世界のエヌ帝国の魔の手から救う。そして平和を取り戻す!


「みんなありがとう! 俺もみんなと一緒にビアルを救いたい! エヌ帝国を表世界から追い出して、楽しく、そして平和に暮らしたい! だから一緒に頑張ろう! そしてみんなの力を俺に貸してくれ!」

「「「「「「かしこまりました! マスターッ!」」」」」」

『良い返事だ! それではいざ往かん! ビアルを守る戦いへ!』


 相変わらず美味しいところを攫ってゆくブレスさん。


「出発は三日後ですけどね?」

『わかっている! しかしこういう時は閉めが重要なのだ!』

「はいはい。きちんと閉めて貰ってありがとうございましたー」

「じゃあ、そういう訳でー今日はこれから飲み会にしよー!」


 いち早くピルスが立ち上がってそう叫んだ。


「おっ? 良いじゃねぇか!」

「エール、貴方は怪我人なんだから少し控えてくださいね?」


 ピルスに同調したエールへ、ボックさんは釘をさす。

 エールが「まぁ、固いこというなっての!」なんて云ったら、

ボックさんは深いため息をついて頭を抱える。

そんなボックさんの両肩をアクアさんとブルーさんがポンと叩いた。


「いざという時は……」

「私たちも協力しますので!」


 ボックさんはアクアさんとブルーさんへお礼を云うのだった。


「わ、私はお酒はちょっと……」


 ランビックは顔を真っ赤に染めて、

ちらちらと俺の方を見ている。 

たぶん前にあった【あの事件】のことだと思って、

俺も色々と思い出して顔が真っ赤になった。


「ランビックどうしたんですか!? 顔真っ赤ですよ!?」

「な、なんでも無いわよ! バカ!」


 アルトの問いにランビックは滅茶苦茶動揺した様子で、

応えた。


「よぉし! 今日はみんなで決戦へ向けての激励会だー!」


 ピルスを先頭に、みんなはぞろぞろとコロシアムの

城門を下ってゆく。


「知人くん!」


 すると、みんなの輪の中からスーが飛び出してきて、

俺の手を握ってきた。

俺もスーの手を握り返して、スーの暖かさを感じる。


「頑張ろうね、スー!」

「はい!」


 俺とスーは手を繋いだまま、コロシアムを出てゆく。


 決戦は三日後。


――俺はみんなと一緒に、必ず表世界を守る!


 改めてそう誓いを固める俺なのだった。


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