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五章閑話1:彼女は素面(しらふ)の姫! 新たな戦士登場 スーRX!

『この物語は本編から少し外れた、いわゆる閑話と言うやつだ!

なので、あえて読む必要はなく、読まなくても何の問題はないぞ!

しかし!

それでも敢えて読もうとしてくれているそこの君!

Thanks!

 以上、テイマーぁブレぇスであった!

どうぞゆっくりと閑話を楽しみたまえ!

HAHAHAHA!』


「ひー! マスター! 大変だよー! ランが! ランがー!」


 暇なんで川辺で、スーとのんびりしていた時、

随分慌てた様子のピルスが飛び込んできた。


「どしたの?」

「た、大変なんだ! エールとボックがランを、あのそのこので! あー、ええっと! とにかく大変なんだ!」

「にゅ!」


スーは一気に顔の表情を引き締めて立ち上がる。


――なんか物凄く嫌な予感がする。


 スーは一人走り出す。

俺とピルスも続いて、森の中へ駆け込んでゆく。

 森を抜けると、大きな石がたくさんある砕石場みたいなところ

に出た。

 そこには敷物と食べ物、そして沢山の酒瓶が転がっている。

 そんな楽しそうな宴会風景の奥では何故か、

シューティングフォーメーションをしたランビックと、

彼女の前に立ち塞がるエールとボックさんの姿があった。


「あ、あんた達、離れなさい! じゃないと本気で撃つわよ!?」


ランビックは二挺拳銃を突き付けて叫ぶ。


 だけど、小樽を持ったボックさんと、

エールはランビックににじり寄る。


「「ウェーイ!」」


ボックさんとエールがランビックに飛びつく。


「きゃっ!? ちょ、ちょっと!?」

「「ウェーイッ!」」

「いやぁぁぁぁぁぁっ!!」


 ボックさんとエールに取り押さえられたランビックは、

口に無理やり小樽を突っ込まれて、何かを飲まされていた。


「んんっ! んっ! んんーんーんっ!」


 嫌がるランビックの口から、白い液体――麦酒の泡――が零れ落ちて、

彼女の胸を濡らす。

だけどボックさんとエールの襲撃は止まない。

やがて、ランビックの口へ突っ込まれた樽が投げ捨てられた。

 空になった樽が無残にも転がる。


「あう、うわっ……ひっくっ! ううっ……」


ランビックは力なく膝を突いて、地面へ倒れ込む。

それっきり、彼女はピクリとも動かなくなった。


「こらー! エール、ボック! ランになんてことをー! 結晶……ッ!?」

「「そら、一気ぃーッ! ウェーイ!」」


 素早くピルスの背後へ回ったエールが、

彼女を羽交い絞めにした。


「エール!?」

「へへっ……さぁ、ショーと行こうじゃないのぉ!」


 エールは邪悪な笑みを浮かべて、ピルスをより拘束する。


 そんなピルスの前へ真っ赤なヴァインの入った、

ボトルを手にしたボックさんが現れた。

 彼女はニヤリと笑みを浮かべながらピルスの顔を見ている。


「さぁ、ピルスぅ……大好きなヴァインの時間ですよぉ」

「は、離せ! ボック! こんなことしてヴァイン生産者さんに失礼だと思わないの!?」

「ええ、そうね。うん、確かにそうだわ。でもね……」


 普段は穏やかなボックさんの口元が、

まるでスイカみたいに大きく開いた。


貴方ピルス泥酔よいの世界へ落ちる姿を見てみたわぁ!」

「あ、うぐっ!?」


 ボックさんはピルスの口へ無理やりヴァインボトルを突っ込んだ。

 ピルスの胸元は赤い液体でびちゃびちゃ汚れる。

 だけどボトルの中身は確実にピルスの喉元を通ってゆく。


「んぐ、んんっ、くはっ……あむっ……やめ……んぐっ!」

「んふふ……言い忘れてましたけど、このヴァイン、酒精強化が施してありましてねぇ……通常のヴァインよりも度数が5%ほど高いのですよぉ! んふふふ!」

「んんっーーーッ!」

「ピルスッ!」


 もう見てらんないと思った俺は飛び出そうとする。

 そんな俺の手を、眉をひそめてるスーが強く取った。


「マス、ター、危険!」

「でも!」

「今の、ボックとエール、まずいのに、憑り、付かれ、てる!」

「えっ!?」

「お酒、で、破滅、を呼ぶ、災厄! その、名も、悪乗飲酒魔ウェーイ!」

「そ、それって、飲み会で悪名高い一気飲みの掛け声……!?」


 そんなやりとりをしている俺とスーの目の前で、

ピルスが地面へ倒れた。


「うっ、ひっくっ! ぼ、僕が、お酒に愛されている、この僕がぁ……! くはっ!」

「大丈、夫!?」


 スーはダッと地を蹴って、ピルスを抱き上げる。

 そんなスーの姿を見て、悪乗飲酒魔ウェーイに憑りつかれた、ボックさんとエールは

邪悪な笑みを浮かべて、彼女を見下ろす。


「「ウェーイ!」」

「にゅっ!」


 スーはピルスを抱いたまま、後ろへ飛び退く。

 ボックさんとエールは忌々しそうにスーを睨んだ。

 スーの眉間に深い皺が刻まれて、怒りが露わになった。


泥酔者よっぱらい、許さ、ない!」


 スーは、両腕の拳を顔の横へ移動させて、

ギリギリと音がするくらいに握りしめる。

両腕を右斜め四十五度に構えて、ゆっくりと半回転。


「変、身ッ!」


スーの体から眩しい光が迸る。


「とぉー!」


 光が吐けると、スーはジャンプして、少し高い岩の上へ飛び乗った。

何故かスーの腰には風車みたいなものが付いているベルトが巻き付いていた。

服もいつもより少し黒みが強まっているように見える。


素面ソウバーウォーリヤー、スゥーッ!」


スーは力強く名乗って、ピシッと構えを取る。


――またまた出ました仮○ライダーもどき。

前の話は四章閑話1なので、そちらを見てください。


『説明しよう! 素面ウォーリャースーとは、スーのもう一つの姿! 素面石ソウバーストーンの力で戦う可憐で孤独な戦士のことである! ちなみに【ソウバ―】とは英語で【素面しらふ】を意味するぞ!』

「とぉー!」


 結構真面目な顔をしたスーは岩の上から飛び降りた。


「スー、パァンチ!」


 スーは真っ赤に光輝く拳で、エールに殴り掛かる。

 だけど、エールはひらりと最小限の動作で、交わす。


「うふふ……獅子爪拳レオネイル


 続いてボックさんの鋭いフックが放たれた。

 寸前のところでスーは交わしたけど、既に彼女の背後には

大きく腕を開いたエールの姿が!


「捕まえたぁ!」

「にゅわ!?」


 スーは顔を真っ赤に染めて、かなり酩酊めいていしている

エールに羽交い絞めにされた。


「さぁ、ボックッ、ヒックっ!」

「うふふ……ヒック!」


 ボックさんは腰に括り付けていた小型水筒スキットル

スクリューキャップをゆっくり外しながらスーへ歩み寄る。


「スー、この中身はビィスキーと言いましてねぇ、アルコー40%もあるとてもとても美味しいお酒ですのよぉ」

「い、いら、ない! エー、ちゃん、離、す!」

「逃れられない泥酔よいを与えてやるぜぇ!」

「にゅわ!?」


 エールは更にスーをきつく締めあげる。

 スーは逃れようと身をよじるが、それだけ。

彼女の目前を酩酊状態のボックさんが塞ぐ。


泥酔よいの世界へようこそ! ウェーイ!」


 ボックさんはスーの口へ小型水筒を突っ込もうとする。


「ちょ、ちょっと、タンマ!」


 流石にマズいと思った俺は飛び出した。

 だけど刹那。


「はいぃーっ!」

「ッ!?」


 ボックさんとスーの間に赤い影が割って入った。

 小型水筒がボックさんの手から弾かれて、地面へ落ちる。

 地面を濡らす琥珀色の液体。

 ボックさんは忌々しそうな顔をして、後ろへ飛び退いた。


「せいっ!」

「ぐわっ!?」


 赤い影が回し蹴りを繰り出して、

スーを拘束していたエールを吹っ飛ばす。


「にゅ……?」


 解放されたスーはゆっくりと顔を上げる。

 スーの目の前で、赤く長い髪が、

まるでマフラーみたいに揺らめいていた。


「大丈夫ですか、素面ウォーリャースー!」

「アル、ト!?」


 何故かスーの目の前には、アルトがいた。

 

「スー、泥酔よっぱらいに負けちゃダメです! 君は素面石ソウバーストーンを継承した、清く正しい素面しらふの戦士! 立ち上がるんです!」

「もしか、して、アルト、は!?」

「そうです! 私は素面戦士の一号! だけど今の私にはもう素面戦士として戦う力がありません! だから! 私の残った力をスーにあげますッ!」


 アルトはそう云って、

懐から風車みたいなつばが付いた短い棒をスーへ渡す。

 

「にゅっ!?」


 突然、アルトから棒を受け取ったスーの身体が光り輝いた。

 スーは棒を手にして立ち上がり、


「大、変、身ッ!」


 大きく足を開いたスーは、右腕を頭の先からおへその辺りまでゆっくりと落とす。

 落とした右腕は腰元で半円を描いて、身体の右側へ。

 ガッツポーズみたいな体勢を取れば、腰のベルトから火花のような光が溢れ出て

スーを包み込んだ。


『ほう! この変身ポーズはまさしくRX! 懐かしいぞスーッ!』


 すんごく嬉しそうなブレスさんの声が響いた。


 それはさておいて……スーの腰に巻きついていたベルトの風車が、

一つから二つに分裂していた。

衣装も少し緑がかって、丸みを帯びる。

 そして、新しい戦士が顕現けんげんした。


「わたし、は、素面しらふの姫! スーRX!」


 凛々しいスーの姿に、うっかり見とれちゃう俺。


「行ってくるです! そしてボックとエールを泥酔よいから救うのです!」


 アルトは真面目な声を響かせて、

ボックさんとエールと指す。


「にゅっ!」


 スーは地面を蹴って飛んだ。

 彼女の目下には、バスターソードを構えたエールの姿が。


「スー、RXキックッ!」


 スーが空中で身体を器用に捻れば、

彼女の足が赤い輝きに包まれた。


「うおっ!?」


 赤い輝きを秘めた足がエールを打って、吹っ飛ばす。

 地面に倒れ込んだエールから小さな爆発が幾つも起こって、

それっきり起き上がらなくなった。


「うふふ! ウェーイ!」


 今度はボックさんがスーへ襲い掛かった。

 ボックさんは不気味な笑い声と共に、拳を繰り出す。

 さすがは拳士のボックさん。

 拳筋が素早く、スーRXは避けるので精一杯な様子。


「スー! オヒヤケインを使うんです!」


 アルトが叫ぶ。


「オヒヤ、ケイン!?」

「そうです! 選ばれしソウバ―ウォーリャーだけが持つことを許された聖なる杖です! 君のソウバ―ストーンだったらきっと真の力を解放できます! さぁ、その力使って泥酔者よっぱらいに目覚めの冷水を!」

「わかっ、た! にゅっ!」


 スーはボックさんの一瞬の隙をついて、

蹴りを放った。


「っ!?」


 虚を突かれたボックさんは少し後ろへ吹っ飛ぶ。

 ボックさんから距離を置いたスーは、手に握っている棒を

ベルトへ押し当てた。


「オヒヤ、ケインッ!」


 スーがそう叫ぶと、ベルトと棒の間に光が迸る。

 棒をベルトから外せば、

スーの手には青白く光り輝く長い棒が握られていた。


『ほうほう! 今度はリボ〇ケイン! 良いではないか、良いではないか!」


――なんかブレスさんが子供みたいにはしゃいでる……


「や、やらせません! ウェーイ!」


 ボックさんが拳を構えながら突進を仕掛ける。


「にゅっ!」


 スーはオヒヤケインでボックさんの拳を受け流して、後ろへ追いやる。

 だけど両者の闘志は未だ消えていない。

 振り向き様にスーのオヒヤケインとボックさんの拳が激しくぶつかり合う。


「にゅわーッ!」

「あっ!?」


 スーがオヒヤケインで、ボックさんの拳を弾き上げた。

 胴をガラッと晒されたボックさん。

 たわわな胸が、プルンと大きく震える……って、今見るべきところはそこじゃない。


「ボック、泥酔よいから、冷め、るッ!」

「ッ!?」

「オヒヤケイン、クラッシュ!」

「くわっぁっ!」


 スーのオヒヤケインがボックさんの体へ鮮やかな軌跡を描いた。

 ボックさんの全身が一瞬でびしょびしょに濡れる。

 ボックさんは膝をついて、地面へ倒れ込む。

 するとボックさんの体が一気に蒸気が噴き上がった。

 周囲に思いっきり漂うツンと感じるアルコールの匂い。


「あ、あれ……? 私は何を……?」


 目の色が元に戻ったボックさんはケロッと起き上がった。


「いっつつ……やべぇ、飲み過ぎた……」


 しかめっ面のエールも、起き上がる。

 そんなボックさんとエールをみつめながら、スーは静かに息を吐きながら、

オヒヤケインを降ろすのだった。


『ここに新たな戦士が誕生した! その名も素面戦士スーRX! しかし泥酔者よっぱらいが根絶されたわけではない。戦え! 負けるな! RX! 誰かが君を待っている!』


 ブレスさんの声が響く。


――なんかまた酔い覚ましが面倒なことになりそう……


 俺はぶっ倒れているピルスとランビックを、

葉っぱの団扇で仰ぎながら、そう思う。


「おーい、スーRXさんとやらー、こっちも頼むー」

「にゅー」


 スーはオヒヤケインを持って駆け寄ってくる。

 そんなスーの姿を、何故かアルトは高台に上って腕を組み、

満足そうな表情で見つめているのでした。


*仮面ラ〇ダーブラックを出したんだったらRXをと思いまして……(笑)

 ごめんなさい、趣味です。

 少しでも楽しんでもらえたなら幸いです。

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