四章閑話3:その後の獣神飲み会
『この物語は本編から少し外れた、いわゆる閑話と言うやつだ!
なので、あえて読む必要はなく、読まなくても何の問題はないぞ!
しかし!
それでも敢えて読もうとしてくれているそこの君!
Thanks!
以上、テイマーぁブレぇスであった!
どうぞゆっくりと閑話を楽しみたまえ!
HAHAHAHA!』
――やらかしちゃった……獣神として恥ずかしい……
いや、それは体の良い言い訳だと、私自身は思っていた。
昨晩、酒の勢いとはいえあんなはしたないことを……
今でも、近くに感じたマスターの匂いと、ボタンを外された感触は
まるで今起こってることみたいに思い出せる。
いや、思い出さないようにしようとしても、勝手に記憶が蘇って
全身が熱を持つ。
「どうしよう……」
そう呟いてみたけど、誰も答えなんて返してきてくれない。
空は快晴だし、今私が一人、ぽんつと膝を抱えて座っている
川岸に生えている草木は優しい風に揺られて、青々しい爽やかな香りで、
私の鼻孔を突いてくる。
だけど私の内側は”酒の勢いでマスターに迫ってしまった”ことに
対する羞恥心と後悔でざわついていた。
想いは確かなもの。
私自身がそういうことを望んでいるのは分かっている。
だけど、ああいうやり方は良くない。
――もしできるなら、ちゃんと手順は踏みたいもの……
それにマスターの顔を前みたいに直視できるかどうか、自信が無かった。
マスターは凄く優しいから、たぶんいつもみたいに笑ってくれる。
でも、私はマスターの気持ちをちゃんと汲んで、きちんと誠意のある対応が、
できるか、どうかと問われると――正直、やっぱり自信が無かったのだった。
「どうしよう……」
「何がだ?」
不意に求めていなかった問いに、応答があってびっくりした。
視線を上げるとそこには、
「エール……?」
「おめぇも二日酔いか? いっつつ……」
脇に立っていたエールは少し青白い顔をながら、顔を顰めていた。
「別に私は……」
いつもなら無茶な飲み方をして、辛そうなエールを詰ってたんだろう。
だけど、そんなキレなんて今日は全然なくて、ただ言葉を詰まらせるだけだった。
エールはドスンと私の横へ座り込んできた。
「んだよ、今日は随分しおらしいじゃねか?」
「……別に」
冷たくするつもりは無かったんだけど、そんな言葉しか出なかった。
すると、突然エールが私の背中に手をまわした。
彼女に力いっぱい引き寄せられる。
「どうした? なんか悩んでるんだろ?」
「……」
「もしよ、よかったらで良いんだ。聞かせてくれねぇか? 一人でモヤモヤしてたって、どうにもならねぇときは、誰かに聞いてもらうと案外すっきりするもんだぜ?」
いつもの粗暴な印象とは打って変わった、
優しくて柔らかいエールの声に胸がドキンと鳴る。
――でも、内容が内容だからな……
みんなマスターのことが大好きだし、
昨日のことって、特に獣神達の中の誰かに聞かせるって凄く勇気がいる。
「大丈夫!」
エールはまるで私の気持ちを察しているみたいに、
笑顔を浮かべて私をより引き寄せた。
「あたしはこう見えても心の広い女だ! 受け止めてやっからよ、どーんと来い! どーんと!」
「……怒らない?」
恐る恐るそう聞くと、
「おうよ!」
エールは胸を叩いて答えた。
勇気が沸いた。
――エールになら話しても良いかも。
「あ、あのね、実は昨日……」
だから私は勇気を持って、エールを信じて、昨日自分がやらかしてしまったことを
そして、それに後悔していることを話して聞かせた。
「……てめぇ、殺すぞ?」
「やっぱ怒ってるじゃん!」
全部聞き終えたエールは、刃物みたいな目で睨みながら、ドスの利いた
低い声でそう云った。
だけどすぐに目つきは穏やかになった。
「まぁ、でもよ……なんだ、仕方ねぇよな」
「えっ?」
意外な二の句に、私は思わずエールへ視線を移す。
彼女はどこか遠くを見るような眼をして、目の前の川へ視線を落としていた。
「スーはマスターにべったりだし、ピルスだって自由奔放のキス魔。んで、しまいにゃ摩力だか何だか知らねぇけど、ボックもだろ? そんな連中の間に割って入る隙なんて、あたし等にはあんましねぇよな……」
エールの大きくて逞しい手が私の頭へ添えられる。
「まぁ、正直てめぇが昨日やらかしたことはあたしもムカつくけどよ! でも、もし同じ状況ならあたしだってありがたく状況を利用させてもらったと思うよ。だから、許す!」
「エール、貴方……」
「仕方ねぇから今回は協力してやる。だからちゃんとマスターには謝るんだぜ? 分ったな?」
エールは優しくそう聞いてくる。
「うん。わかったわ。エール」
「ん?」
「ありがとう、受け止めてくれて……」
私はエールへ身を寄せる。
「まっ、次抜け駆けしたときはマジで殺すからな?」
「それは私もよ? もし見つけたら、ハチの巣にしてあげる」
――エールってこんなに優しくて、頼り甲斐があるんだ。
初めてそう思った私なのだった。
そのうち内容を追加するかもです。




