四章閑話1:エールの酔い覚まし 炸裂! スーキィックッ!
『この物語は本編から少し外れた、いわゆる閑話と言うやつだ!
なので、あえて読む必要はなく、読まなくても何の問題はないぞ!
しかし!
それでも敢えて読もうとしてくれているそこの君!
Thanks!
以上、テイマーぁブレぇスであった!
どうぞゆっくりと閑話を楽しみたまえ!
HAHAHAHA!』
ある日の昼下がり。
事件が起こった。
「な、ない! 貴重な私の麦酒が!!」
ボックさんが、
随分と慌てた様子で騒いでいた。
「どうしたんですか?」
「チートさん! 無いんです!私が大事に秘蔵してた麦酒が!」
「あはー! ボック、飲んじゃったんじゃないの?」
ピルスは当然みたいにそう云って、
「まっ、ボックじゃあり得るわね。昨日だってヴァインを一人で空けてたじゃない。その勢いで飲んじゃったんじゃないの?」
ランビックは冷ややかにそう云った。
「違、う!」
だけどその中で唯一、
スーは意義を唱えた。
「ボック、違、う! ヴァイン、じゃ、あんなに、ならない! ビィスキー、飲んでたら、そうだったかも!」
「ちょ、ちょっとスー!」
ボックさんは顔を真っ赤に染めて、スーに文句を言う。
「説明しよう! ビィスキーとはビァルに原生する穀物を発酵させて、そのエキスを蒸留! 樽の中で一年以上熟成させて出荷されるアルコール度数がとっても高いお酒のことだ!」
『少年! 私の仕事を奪う出ない! でないと、私の出番がこれっきりになってしまうではないか!』
なんか大人の都合みたいなことを、
ブレスさんは言っていたけど、スルーで。
「にゅ!?」
その時、スーが鼻をぴくぴくと動かして、
背筋を伸ばす。
踵を返すとそこには、
「おらぁー! もっともってこーい!」
顔を真っ赤に染めて、茶色い小樽を持ったエールが現れた。
時間は昼間。
だけどエールからは、とっても濃いアルコールの匂いがする。
「エール! あなた私の麦酒を勝手に! 許せません! 着鋼!」
ボックさんは構えを取ると、
呪文を唱えて、プロテクターを装備した。
「獅子正拳!」
ボックさんは鋭くて、
綺麗な正拳突きを酔っぱらっているエールへ放つ。
「おらよっと!」
「なんですって!?」
エールはあっさりと、
ボックさんの鋭い正拳突きをバスターソードで受け止めた。
「あらよっと!」
「きゃっ!?」
エールがバスターソードを振れば、
ボックさんは紙切れのように吹きとぶ。
「ラン! 行くよ!」
「ええ!」
今度はピルスとランビックが飛びかかったが、
「じゃかしゃー!」
エールがバスターソードを薙ぐ。
ピルスとランビックは、
ボックさんと同じように紙切れのように吹っ飛んだ。
「酒~! よこせぇ~!」
三人を吹っ飛ばしても未だ元気なエールは、
バスターソードを振り回しながらこっちに迫ってくる。
すると、スーが俺の前へ立った。
「スー!? 危ないよ!?」
「大丈、夫!ここは、わたし、に、お任せ!」
スーはいつも持っている杖を投げ捨てて、
酔っ払いエールを指さした。
「出、た! ヨッパライ、怪人! 許さ、ない!」
スーは、両腕の拳を顔の横へ移動させて、
ギリギリと音がするくらいに握りしめる。
両腕を右斜め四十五度に構えて、ゆっくりと半回転。
「変、身ッ!」
『ほう! ブラック! 懐かしいな!』
スーとブレスさんの声が重なった。
スーの体から眩しい光が迸る。
「とぉー!」
光が吐けると、スーはジャンプして、少し高い岩の上へ飛び乗った。
何故かスーの腰には風車みたいなものが付いているベルトが巻き付いていた。
服もいつもより少し黒みが強まっているように見える。
「素面ウォーリヤー、スゥーッ!」
スーは力強く名乗って、ピシッと構えを取る。
『ほほう! 構えまでブラック! 懐かし&嬉しいぞスー!』
――つか、これ何?
『説明しよう! 素面ウォーリャースーとは、スーのもう一つの姿! 可憐で孤独な戦士のことである!』
「それ、マジっすか?」
『適当だ! こういうのはノリと勢いが大切!』
「はぁ……?」
「とぉー!」
良く分かってない俺を完全に置いてきぼりにして、
結構真面目な顔をしたスーは岩の上から飛び降りた。
「酒、よこせやぁ~!」
すっかり酔っぱらっているのか、
エールはいつも可愛がってるスーだろうと、
遠慮なくバスターソードを振り上げる。
だけど、スーはいつもの様子から全く想像できない俊敏さで、
エールの斬撃をかわす。
「おら~!」
エールは渾身の一撃を地面を放つ。
「にゅっ!」
スーは寸前のところで高くジャンプして、斬撃を交わした。
スーは綺麗に着地した。
「ソウバ―、ストーン、フラッ、シュ!」
スーは腰のベルトの風車へ力強く両手を添える。
すると、ベルトから眩しい光が噴出した。
「あ、ぐ、うわっ!」
エールは光を浴びて、眩しいのかよろめく。
『ソウバ―ストーンとは素面ウォーリャースーの力の源である! スーはその力を自在に開放し、敵を圧倒することが可能となるのだ!』
「ブレスさん、仕事沢山できて良かったですね」
『有無! さぁ、やるのだ! 素面ウォーリャー! 今こそ泥酔者へ素面の鉄槌を!」
「にゅーッ!」
スーは高くジャンプした。
「スー、パァンチッ!」
光り輝くスーのジャンピングパンチがエールをぶん殴る。
「う、うぐわぁ~」
スーよりも遥かに身長の大きいエールが吹っ飛んで、綺麗に転げる。
だけど、麦酒の樽は大事に抱えていた。
そんなエールを目の前に捉えて、スーは切れの良い構えを取る。
そして、高くジャンプした。
空中でスーは右足を思いっきり突き出して、
「止、め! スー! キィックッ!」
結構勇ましい声の調子でスーは叫びながら、
足を突き出したまま急降下した。
スーの右足は的確にエールの頭へぶつかった。
「ぎゃー!?」
エールはスーに蹴っ飛ばされて、結構大げさに転げる。
よろよろと起き上がったエールだったけど、
「ぬああぁぁ~~~あああ~~~!!」
なんかエールの身体から赤い炎みたいのが沸いて、
彼女の体を包み込んでいた。
炎は暫くするとと打ち上げ花火みたいな爆発を起こす。
爆発が終わると、エールは水蒸気を体から上げながら大の字で倒れ込んだのだった。
「すぅー……はぁー……」
地面に降り立ったスーはボックさんみたいに呼吸を整えてた。
「あ、あれ? あたし何やってたんだ?」
エールの顔からすっかりと赤みが消えていて、
彼女は辺りを不思議そうに見渡していた。
『説明しよう! 素面ウォーリャースーの素面石の力を込めた渾身の飛び蹴りは、エールの酔いを一瞬で覚まさせる効果があるのだ!』
「なんかすごいですね。でも、なんでエヌ帝国の時にスーはこの力を使わないんですか?」
『素面ウォーリャースー! それは素面石の力を自在に操って、泥酔者を酔いの悪夢から解放する対ヨッパライ専用形態のことである! 戦え!負けるな素面ウォーリャースー! 全ての泥酔者を悪夢から解放するその日まで戦い続けるのだ!』
ブレスさんの開設で大体の状況はつかめたけど、
今目の前で何が起こったのか良く分かんない俺。
――これってもしかして仮〇ライダーのパロディ?
なんとなくそう思う。
「さぁて、もうちっと飲み直し……」
「エー、ちゃん、もう、めっ!」
またボックさんの麦酒に手を付けようとしていたエールを
スーは注意した。
ちなみにこのめんどくさそうなエールの酔い覚ましは度々行われたのでした。
*酔った勢いで書きました。元ネタが分る方とはうまい酒が飲めそうです(笑)




