序章5:恐怖の軍団 エヌ帝国の光景 ~剣魔獣軍団~
【異世界ビアル】
この世界には表裏が存在する。
エヌ帝国の侵略を受け占領されたビアルの中心に位置する【巨大大陸アルデヒト】
その中心には巨大な穴が穿たれたように空いている。
そしてその奥にある世界こそ、【ビアルの裏世界】であった。
永遠の闇に閉ざされ、不毛の大地が広がるビァルの裏世界。
そこの中心に禍々しい城がそびえ立っていた。
そして今日も、その城の中では表世界を狙う軍勢が、声高らかに王の名を叫んでいた。
【エヌ!エヌ!エヌ!……】
【エヌ!エヌ!エヌ!……】
【エヌ!エヌ!エヌ!……】
魔城の中にある禍々しい帝王の間には、
スライム型のギネース兵を中心として様々な魔獣が整然とした隊列を組んで、
声高らかに彼らの王の名前を叫んでいた。
やがて帝王の間に鋭い稲妻が走り、
禍々しい形状の玉座へ、彼らの王が浮かび上がるように姿を現す。
無表情の鉄仮面に、二つの尖った耳のような構造物を持つ兜。
全身は鋼鉄の鎧に覆われていて、その上からは緋色のマントを羽織っている。
「余は裏世界の唯一神! 帝王エヌ」
帝王エヌは仮面越しに、やや曇った声音で宣言する。
すると、帝王の間に集っていた魔獣達は狂喜乱舞し、
より一層の声を張って帝王の名前を、狂ったように叫び続けた。
「鎮まれッ!」
突然、帝王の間に鋭い声が響いた。
魔獣達は一斉に叫ぶのを止める。
帝王の間の右手にある凶暴な獣の口を象ったような回廊から、
鈍重な足音が聞こえ始めてきた。
そこから姿を現したのは、犬のように口が飛び出した形状の鉄仮面で顔を覆う騎士だった。
犬の様な鉄仮面を付けた騎士は魔獣達の先頭、帝王エヌの玉座の前へ傅く。
「剣魔獣将イヌーギン、参上いたしました」
続いては左手の回廊から鈍い足音が聞こえ始めた。
そしてそこから現れたのは、人と同じ大きさの鎧を着たキツネザルだった。
しかしその顔は精悍でたくましさが伺え、
右目に装着されている機械のような眼帯は鈍色の光を放っている。
鎧を着たキツネザルもまたイヌーギンと並んで帝王エヌへ傅いた。
「闘魔獣将サルスキー、ここに」
最後に帝王の間に上から鋭い風が吹きつけてきた。
帝王の間を覆う天井がゆっくりと開いた。
そこから人間のように手足を持ち、
他の魔獣将と同じように鎧を着た鳥人が王座の前へ降り立ち、同じく膝を突く。
「砲魔獣将キジンガ―、帰還いたしました」
鳥人のキジンガ―の声を聞き、
それまで玉座で微動だにしなかったエヌが衣擦れを起こす。
「キジンガ―よ、コーンスターチ侵攻の首尾はどうか?」
「は、ははっ、それが……」
キジンガ―が言い淀むと、王座の間の空気が一瞬で凍りついた。
鉄仮面で表情を覆っている帝王エヌだが、
帝王の間にいる誰もが、帝王の不満を感じ背筋を伸ばす。
「ほ、報告致します! コーンスターチへ進軍中だった我が方の斥候部隊ですが、その……全滅をいたしました……」
一斉に帝王の間に動揺のどよめきが走る。
「鎮まれ! 帝王の御前であるぞ!」
しかし犬の鉄仮面騎士イヌーギンが再び叫びを上げ、
王座の間のどよめきは一瞬で鎮まった。
「どういうことだキジンガ―?」
帝王エヌが静かに問う。
キジンガ―は背筋を伸ばした。
「は、ははっ! 先ごろよりコーンスターチでは黒き龍とギルドが我らの侵攻を邪魔をしておりました。黒き龍の排除を優先すべきとの私の判断から此度、黒き龍の討伐作戦を立案・実行し、後一歩のところにまで追いつめたのですが、何故か息を吹き返した奴にやられ、今に至ります……」
キジンガーの背中に生えている二枚の翼が小刻みに震えている。
「ほう、黒き龍とな? まさか獣神以外で表世界に組する獣が他にもおろうとはな」
しかしエヌの意外な程穏やかな声音を聞き、キジンガーの翼の震えは収まった。
「ま、まったくもって帝王の仰る通りで……奴の正体は不明です。ですが数か月前からコーンスターチに住みつくようになり、表世界の連中を支援しておりました。奴は間違いなく我らがエヌ帝国に仇名す敵! 排除すべき対象と具申致します!」
「斥候部隊の全滅は大きな損失だが、代わりに有益な情報を得られた。キジンガ―、此度の失敗は黒き龍の情報を持って免除する。損失分の補填を急げ!」
「おお! 寛大なるご処遇に感謝致します帝王閣下!」
帝王エヌは玉座で座り直し、そして視線を傅くイヌーギンへ落とした。
「剣魔獣将イヌーギン」
「ははっ!」
名指しされたイヌーギンはより深く頭を下げる。
「貴様と貴様の剣魔獣軍団にコーンスターチギルドと黒き龍の討伐と侵攻の指揮を命じる。目標攻略後、すぐさまコーンスターチの攻略に乗り出せ」
帝王の命令を聞き、再び王座の間がどよめきに包まれた。
エヌ帝国を支える三魔獣将と、剣・闘・砲の三軍団。
中でも帝国のナンバー2であるイヌーギンが率いる剣魔獣軍団は帝王の懐刀、
名実ともに最強の軍団であることに相違ない。
「帝王のご意志とあらば!」
イヌーギンの凛然とした了承の言葉が帝王の間に響き、どよめきが収まる。
イヌーギンは一人立ち上がり、腰元に帯刀していた十字剣を鞘から抜き放つ。
そして煌めく刀身を帝王エヌへ差し出して見せた。
「この剣に代えましてもコーンスターチの攻略は必ずや!」
イヌーギンの勇ましい宣言を聞き、帝王エヌは静かに頷くのだった。
【次章予告】
●テイマーブレス、スーと共に光の国コーンスターチへ向かうチート。
そこで出会ったのは巨剣を携えた目つきの鋭い女戦士エールだった。
スーを巡る三番勝負、侵攻を開始するエヌ帝国剣魔獣軍団!
果たしてチートの運命は如何に!?
次回、第二章【チェーンとヤンキーと光の国】
どうぞお楽しみに!
【お知らせ】
HAHAHA!テイマーブレスだ!
ここまでの拝読Thanks!
もしシトラス=ライス氏の作品を気に入ってくれたなら、以下の作品も是非読んでみてくれたまえ!
同じような匂いがしてきっと満足出来るはずだ。どれも『完結済』だから安心して読めるぞ!
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以上、テイマぁーブレぇす!からのお知らせであった!HAHAHA!
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架空日本での「巨大ロボ」vs「怪獣」 そして少年と少女の心の交流
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