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四章3:腹ペコと水着美少女とツインテール

 

 舟の医務室に続く扉をノックする。


「入っても大丈夫ですか?」

「どうぞ!」


 向こうからボックさんの声が聞こえたので、

扉を開けて、中へ入る。

 二床のベッドの上にはそれぞれ、

さっき海で溺れていたツインテールの女の子と、

髪が短い【モデルのように身体がすらりとしている女の子】が眠っていた。

 スタイルはシーツ越しでもはっきりわかるくらい整ってる。

だけど胸だけは少し残念だった。


――きっといつもエールやボックさんのとてつもなく大きいのをみてるからかな。


 そう思って一人苦笑い。


 丁度ボックさんはモデルみたいな女の子の手首を持って、

摩力の流れを確かめているところだった。


「どうですか?」


 そう聞くと、ボックさんは小さく首を横へ振った。


「この子はあまり芳しくありませんね。随分と衰弱しているようでして。ですが命に別状はありません」

「そうですか。もう一人の方は?」

「彼女の方は比較的良い方でしょう。ですがあちらの方も随分とお疲れなようです」


 隣のベッドを見てみれば、

ツインテールのまるで歌って踊れる【アイドルみたいに可愛い子】が、

静かな寝息をあげていた。

彼女も、隣で寝ているモデルみたい彼女のように、有るか無いか分からないくらいの

胸を上下させながら、静かに寝息を立てている。


――いやいや、今注目するのはそこじゃない。


 素人目で見てもツインテールのアイドルみたいに可愛い彼女の方が、

大丈夫そうだってのは分かる。

だからこそ、もう一人のモデルみたいな女の子が、まるで人形みたいに無表情で

僅かな寝息しか立てていないことが、少し怖く感じた。


「あの、チートさん、実は折り入ってお話があります」

「なんですか?」

「実はこの二人なのですが……」

「ッ!」


 その時、突然モデルみたいな彼女が”カッ”っと目を開いた。


「うひゃっ!」


 びっくりして尻餅をついちゃう俺。


「だ、大丈夫ですか!?」


 慌ててボックさんが立たせてくれる。


――やべぇ、情けねぇ……


 そんな俺をさておいて、

すらっとしたモデルみたいな女の子が、ガバッと勢いよく起き上がった。

 途端、彼女の腹の虫が盛大に音を鳴らす。


「腹減った……んっ……?」


 そう云う彼女は鼻をピクピク動かす。


「あ、あの、貴方……」


ボックさんが恐る恐る彼女に声を懸ける。


「飯、餌、ご飯!」

「きゃっ!」


 モデルのような彼女は突然、

ボックさんを弾いてベットから蒼いビキニ姿のまま飛び出した。


「ちょ、ちょっと君!?」


 俺の声なんてなんのその。

 彼女は医務室を物凄い勢いで飛び出してゆく。


「ボックさん、ここを頼みます!」


 俺はボックさんにそう告げて、医務室を飛び出した。

 廊下には既に彼女の姿は無い。


――腹の虫、飯、餌、ごはん……そっか!


 そのまま廊下を走り抜けてゆく。


 やがて廊下の向こうに【船内食堂】に続く扉が見えた。

 やっぱり予想通り扉には乱暴に開け放たれていた。


「て、てめぇ、いきなりなんだ! ああん!?」


 食堂の奥からエールの怒鳴り声が聞こえたのは予想外。

 慌てて食堂の中へ飛び込むと、


「あむ、むぐ、もぐ!」


 モデルのような彼女は、

何故かエールの前においてあったガレー飯を、

物凄い勢いで食べていた。


「おい、てめぇ! 聞いてんのか!」


 エールは今にも彼女へ殴りかかりそうな勢いで叫んでいる。

 だけど彼女はそんなの何のその。


「こんのぉ、てめぇ!」

「待って!」


 っと、そこでなんとかエールの手を取るのに成功する。


「マスター、止めんな! こいつはあたしのガレー飯を!」

「後でもう一杯奢るから! だからここで騒ぎ起こしちゃダメだって!」

「ああん!?」


 流石にこれだけ騒げば、周りの注目を集めるのは当然っちゃ当然。

 エールは渋々といった具合に、拳を収めて憮然と椅子に座り直した。

 その間に彼女はエールのレガ―飯を平らげると、


「じーっ……」

「にゅー?」


 今度はエールの正面に座って、

ラーメンみたいなものを食べていたスーをじっと見つめている。


「い、る?」


 コクリコクリコクリ、と彼女は激しく頷く。

 スーが丼ぶり差し出すと、


「あむ、むぐ、じゅるるー!」


またまた物凄い勢いで食べ始めた。


「おいこら、今度はスーのを! いい加減にしねぇと!」


 だけど彼女へ殴りかかりそうになったエールを、

珍しくスーが止めた。


「スー!?」

「良い、の。お腹、空いてるの、辛い、から」

「たっはー! ごっちそーさまー!」


 彼女はラーメンもどきもあっという間に平らげて、満足そうだった。

 すると何故か、彼女は背筋をピンと伸ばして、また辺りの匂いを嗅ぎ始める。

 やがて視線は何故かエールに傾いて、


「やっぱケイロンだぁ!」

「のわっ!?」


彼女は突然、エールに抱きついた。


「ひっさしぶりー! 元気にしてたぁー!? 僕は元気だったよー!」

「な、な、なんだよ、あたしはてめぇなんざ……?」


 エールも鼻をぴくぴく動かした。


「もしかしておめぇ、ブルーマーメイドか!?」

「そうだよー! 今は【ピルス】って名乗ってるんだ! ケイロンは今、なんて名乗ってるの?」

「あたしはエールだ! そっか、お前は無事だったんだな!」

「うん! 僕はこの通り元気だよー!」


 さっきまで眉間に皺を寄せていたエールは、

笑顔でピルスと抱擁しあっていた。


「こらピルス! あんたまた何やってのよ!!」


 後ろから高めの女の子の声が聞こえた。

振り返るとそこにはボックさんに肩を借りながら、

ピンクのTシャツとデニム風の短パンを履いて立っている、

ツインテールの【アイドルみたいに可愛い女の子】がいた。


「ラーン! おっはよー!」


 元気よくモデルのような彼女――ピルス――は、

エールから離れると今度はツインテールの女の子のところまで飛んで抱きついた。


「ちょ、ちょっとピルス!」

「ランが元気で良かったー! 良かったよー!」

「元気も何もピルスが無茶したから溺れたんでしょうが!」

「え? そだっけ?」


 ピルスはケロッとした顔で首を傾げて、


「あんたねぇ……」


 ツインテールの彼女は頭を抱えた。

するとピルスはまたまた鼻をひくつかせて、

今度はボックさんを見た。


「もしかして君、レオ?」

「え、ええ、まぁ……私はグリーンレオですけ……」

「やっほーい、レオ―! 久しぶりー!」

「うわっ!?」


 今度はボックさんに抱きつくピルスだった。

 なんだかあのピルスって女の子は見た目に反して、

スーとはまた違った意味で子供っぽいと思った。


『いきなり獣神に、しかも二体同時に出会えるとはな』

「全くですね。って、もしかしてあのツインテールの子も?」

『ああ。彼女はおそらく、風の獣神ローズフェニックスだろう』

「へぇ、ラッキーですね」

『全くだ』


 またブルーマーメイドこと【ピルス】へ視線を戻すと、


「レオ―! レオ―!」

「あ、ちょっと、んんッ!わ、私は今、ボックと、あん!」


 何故かピルスはボックさんの大きな胸へ顔をすりすりと何回も擦りつけていた。

ちょっとボックさんの顔が赤い。


『羨ましい……』

「ブレスさん、心の声出てますよ?」

『!! コホン! 羨ましくなんか無いぞ! 絶対にそんなことないんだからな!』


 相変わらず奥さんの大獣神さんにそっくりな、

ボックさんにべた惚れのブレスさんなのでした。


「ちょっと、ピルスいい加減にしなさいッ!」


 いい加減頭に来たのか風の獣神の化身の女の子は、

ピルスを思いっきり引っ張ってボックさんから引きはがした。


「あんたもあんたよレオ……今はボックだっけ? 嫌そうな声を上げながら喜ぶの止めてくれる!? あんたドMなわけ!?」


 ツインテールの女の子がそう云うと、


「なっ! フェニックス! こんなのところで何を言うのですか!?」

「事実を言ったまでじゃない! それと今の私はランビックなんで、そこんとこ宜しく」


――ああ、なるほどやっぱボックさんってそうだったんだ。


 納得する俺だった。


 ローズフェニックスことツインテールの彼女を改め【ランビック】は

一方的にボックさんへまくしたててピルスを強引に引っ張った。


「わーん! ラーン! まだ僕はレオとー!」

「それはあと! まずはきちんと礼を果たすの!」


ランビックはジタバタしているピルスを引っ張って、俺たちのところへ近づいてくる。


「ケイロン、それとお仲間の方々、私はランビック。で、こっちのバカがピルスです。この度は危ないところを助けて頂きありがとうございました! あと、うちのバカピルスがご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした!」


 丁寧にランビックは頭を下げた。

だけどピルスはランビックの横に座ったまま首を傾げている。


「あんたも頭下げなさいよ!」

「およ?」


 ランビックは強引にピルスの頭を押さえつけて頭を下げさせた。


「い、良いですよ、そこまでしなくても!」


流石に悪いと思った俺はそう声を掛けて、


「まっ、ブルーマーメイドはこんなんだから、化身も一緒って訳だ。元気な姿ってのがこれでわかったから今回はチャラにしてやるよ」


エールもまた許す姿勢を見せた。


「お腹、空くの辛い! わた、し、気に、しない!」


 スーもエールと同じ、といった具合だった。

 すると、突然ピルスが立ち上がった。

 再び鼻を引くつかせて、


「ありがとー!」

「のわっ!?」


 今度は何故か俺に抱きついてきた。

胸はあんまりないけど、すらっとした身体が、遠慮なくまとわりついてくる。

 こんなにスタイルの良い人に抱きつかれたことなんてない俺は、

正直どう対処したらいいか分からない。


「ありがとー! 君が助けてくれたんだよねー! ありがとー! ねぇねぇ君の名前はー!?」

「あっ、えっと、チートです……」

「チート! チート! ありがとー!君のお蔭でまたみんなにあえて、美味しいごはん食べられたよー! ありが……」


 突然それまで元気よく動いていた、

ピルスの動きがピタッと止まった。


「あ、えっ?」


 ピルスの体がずるずると俺から落ちて、

盛大になる腹の虫。


「腹減った……」

『ふむ、エネルギー切れらしいな。あの運動量だ、致し方あるまい』


 まぁ確かにブレスさんの言う通り、

あれだけピョンピョン飛んだり跳ねたりしてれば消費も激しそうって思う。

 だけど、このお腹の空き方って尋常じゃないと感じる。


 さっきまで元気よく飛んだり跳ねたりしていたピルスは、

電池が切れたみたいに床へぺたりと座り込んでいた。

 ちょっと、心配に思った俺は、


「じゃあ、その……ご飯食べる?」

「!! ホント!?」


 ピルス再起動。

 元気よく立ち上がって、目をキラキラさせて俺に迫る。


――つか近い!


 ちょっと顔を動かせば、

簡単にキスできそうな距離にピルスは詰めていた。


「ホントに、ホントに、ご飯くれるの!?」


 だけど当のピルスはそんなことなんて全然気にしていない風だった。


「あ、うん! 食べよう! ごはん!」

「わーい! チート大好きだ―!」

「ッ!!」


 ピルスが盛大に抱きついてきた。

 若干周りから不穏な空気を感じる。


「ピルスてめぇ、さすがにやりすぎだ! マスターから離れやがれ!」


 エールは眉間に皺をよせ、


「チ、チートさんの摩力の流れが悪くなります! ここは実力行使で!」


 ボックさんは何故か獅子拳レオマーシャルの構えを取っていた。


「マス、ターと、し、過ぎッ!」


 スーは杖を構えて先端に薄らと紫の炎を浮かべている。


「チート、チート! 好き好きー!」


 だけどピルスは周りの様子などなんのそのな様子だった。

 その時、船内に鐘の音が鳴った。


【ご案内いたします。まもなく本船は水の国ドラフトへ接岸いたします。皆さま下船の準備をお願いいたします。繰り返しご案内いたします。まもなく本船は……】


「ピ、ピルス! とりあえず船を降りよう! じゃないとご飯食べられないよ!」


 そう云うとピルスの動きが止まった。


「ホント?」

「ああ! もうここの食堂もおしまいだし、降りてみんなでご飯食べようよ、ねっ?」

「うん! 分かった!ご飯、ご飯~みんなでごは~ん! きゃっほーう!」


 ピルスは上機嫌で俺から離れると、

嬉しそうに踊りまわっている。


『既にエクステイマーを施したような感じになっているな』

「ですね」


――今回の獣神晶の修復って簡単かも?


冷静に考えると、そう思える俺なのであった。



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