三章17:ボックさんとみんなとバンディット
「おはようございます、マスター!」
朝起きてリビングに扉を開くとボックさんが迎えてくれた。
「おはようございます! ボックさん」
「さっそくですけど……」
ボックさんは少し頬を赤くして、ちょっと小さな声で呟く。
そんな様子を見て、俺も少し恥ずかしくなって、
「あっ、はい……お願いします……」
「し、失礼します……」
ボックさんの近くまで寄ってくるなり、俺の頭を掴んだ。
相変わらずボックさんの顔は少し赤い。
だけど彼女は俺の額に彼女の額を付けて、真剣に目を閉じていた。
今日もふんわりとボックさんから香るルプリンの、
優しい匂いに気持ちが癒される。
やがて彼女は俺から額を離した。
「マスターの摩力の流れは今日も正常です。安心してくださいね!」
「はい! ボックさんのお蔭ですよ」
心を込めてそう云うと、
ボックさんの顔が更に真っ赤に染まった。
「あ、えっと、その……ど、どういたしまして……」
「マス、ターッ!」
っと、ボックさんの後ろの食卓で、
先に朝ごはんを食べていたスーが立ち上がった。
少し眉間に皺が寄っている。
【ウーッ! ガルゥゥゥッ!】
スーの足元で一緒に朝ごはんを食べていたバンディットも、
歯をむき出しにして唸っていた。
ボックさんの眉間に皺が寄る。
彼女は俺から離れて踵を返すと、
「スー! バンディット! ご飯中に騒ぐんじゃありません! お行儀悪いですよ!」
ボックさんはそう強く叫んだ。
すると、
「にゅー……ごめん、なさい……」
スーは渋々って様子だけど、
静かに座りなおして、
【くぅうぅぅ~……】
バンディットも大人しく座りなおした。
どうもスーやバンディットはボックさんの、
【本気】をみて逆らうのはまずいと思ってるみたいだった。
だけどこの光景って、まるで……
――ボックさんってやっぱり【お姉さんかお母さん】みたいだよな。
確かにボックさんは色々と知ってて、優しくて、そして強い。
そんなボックさんがこれからも傍に居てくれる。
そう思っただけで、小躍り、いや大踊りをしたいぐらい嬉しかった。
だからこそキチンと言っておきたいというか、
決めておきたいことがあった。
この間からずっと考えて、
そうして欲しいと思っていたことを、今日こそ伝えるとき!
「ボックさん!」
「は、はい!?」
ちょっと声が大きすぎたのか、
ボックさんは驚きながら振り返ってくる。
「あ、あの、その……俺……」
「どうしたのですか?」
「マスターって呼び方は、その……は止めてください!」
「へっ……?」
ボックさんはハトが豆鉄砲を喰らったような表情をする。
「ボックさんは俺の恩人です! 例えエクステイマーで結ばれてたとしても、俺がボックさんのことを尊敬しているのは代わりありません! だから、お願いです。前みたいに俺のことは名前で呼んでください! お願いします!」
「マスター……宜しいのですか?」
「はい! だからもうマスターは止めてください !じゃないと俺、今度からは怒ります!」
そう言い放つとボックさんは満面の笑みを浮かべた。
「わかりました! では、その……チ、チートさん?」
「はい!」
ずっとそう呼ばれていたのに、
今初めてそう言ってもらえたような。
そんな嬉しさがあった。
だから俺の顔を真っ赤。
ボックさんも、やっぱり気恥ずかしいのか、
顔を赤にしていた。
『ふん! 何をデレデレしているのだ、いかがわしい! 大体朝っぱらから……ふぐっ!?』
嫉妬の権化、ブレスさんにはちょっと黙って貰いたくて、
手でテイマーブレスをがっちり掴んで黙らせた。
「おうおうおう! こっちが朝から頑張って鍛錬してる間になにやってんだよ、ボック?」
俺とボックさんは揃って玄関の方を見る。
そこには軽装で汗だくの、眉間を皺くちゃに寄せて、
鋭くボックさんを睨むエールの姿があった。
――やべぇ!あれマジもんのヤバい顔!?
別に俺が睨まれてるわけじゃないのに、
勝手に背筋が伸びる。
「お帰りなさい、エール。何って、私は日課のマスターの……いえ、チートさんの摩力の流れを確かめていただけですけど?」
だけどボックさんは至って、
平常通りだった。
「チート!? てめぇ、何マスターのことを名前で呼んでんだよ !失礼だろうがぁッ!」
エールは吠える。
でもボックさんはまるで勝ち誇ったように大きな胸を張った。
「失礼も何もチートさんから直々にそう言われましたから! 不敬には当たりません!」
「んだとぉ!?」
今度は俺をエールがじろりと睨む。
「あたしも同じ獣神で、マスターとの付き合いは長いからよぉ。あたしも良いよなぁー?」
――エールが、俺のことをチートって呼ぶって……
頭の中に、エクステイマーで結ばれる前の、
凶悪なエールの姿が一発で浮かんだ。
正直、記憶の中でも、やっぱりエールは怖い。
ってことで、
「ごめん、エールはマスターでお願い」
「んだとぉ!?」
エールは物凄く怒ってるような声を上げた。
「ひぃっ!?」
エールにガンを飛ばされて、マジで怖い。
エールはズカズカと、俺に近づいてくる。
が、俺とエールの間にボックさんが割って入った。
「んだよ、ボック?」
「エール! 親しき仲にも礼儀あり! チートさんへのその態度、見逃すわけには参りません!」
「へっ、調子づきやがって。なら、やるか?」
エールがニヤリとワルっぽい笑みを浮かべる。
するとボックさんは構えを取った。
「良いですとも! 売られた喧嘩は買う! これが私の主義です!」
「へっ、そうこなくちゃな! おいバンディットッ!」
突然、エールがそう叫ぶと、
大人しく座っていたバンディットが彼女の横に並んだ。
エールは少し屈んでバンディットの顎をさする。
バンディットは特に抵抗もせず、エールの撫でに甘んじていた。
「バンディット!? 貴方、どうして!?」
エールに懐いているバンディットを見て、ボックさんは驚く。
「なんてたって、あたしと此奴はマスターを思う同士だからよぉ……なぁ、バンディット良く聞け。お前のご主人は惚れた男のために、お前をここに置いてきぼりにして旅に出るつもりなんだ。おめぇもよ、一緒に行きたいのになぁ? よぉ?」
【グルゥー……】
バンディットは少し怒ったような視線を、
ボックさんへ投げかける。
「バンディット、堪えてください! チートさんと私の旅は危険を極めます。貴方には危険な目に遭ってほしくない! 置いてゆくのではありません。私が留守の間、この森とこの家を貴方に守ってほしいのです! それに貴方にはチートさんが従えたギネース兵を指揮してラガーを守るという大切な使命があるではありませんか!」
ボックさんはついこの間、
俺と話し合って決めたことをバンディットへ言って聞かせる。
ちなみに、この間の戦いの後、やっぱり胸がうずいてしまって、
闘魔獣軍団へエクステイマーとエターナルガトーの重ね掛けをやってしまった。
雑兵のギネース兵は傷の治療ができたけど結局、
副将のゴーレムとオークマスターだけはウルフ兄弟みたいにならなかった。
――拳士の意地ってやつなのかな……
真っ直ぐで拳に準じた二体の副将。
どうしても彼らの印象が、俺の頭の中に強く残っていた。
と、まぁ、そういう訳で復活したギネース兵は、
剣魔獣軍団の時と同じように俺の配下になってしまった。
だけど付きまとわられると、これからの旅に支障が出そうだってことで
同じく従えたバンディットを中心に密かに帝国からラガーを守るように、
命令をしたんだけど……
【ウー! ウー! ガルゥー!】
バンディットの唸りは止まない。
「あーあ、ボック、嘘バレバレだっての。バンディットはおめぇの本心見抜いてるぜ。あたしとスーはエクステイマーがあるからしゃあねぇとして、ライバルを一匹、いや一人でも減らそうって魂胆だろ?」
「なっ!?」
ボックさんの身体がビクンと震える。
「ははっ! 図星か! 当たりか! こりゃ飛んだ悪女だな、てめぇは!」
【ウーッ! ガルゥーッ!】
「くっ……!」
エールとバンディットは揃って鋭いガンを飛ばす。
対するボックさんは少したじろいでいた。
エール親指で玄関の外を指す。
「出ろ。今日こそ決着つけてやる」
【ガルゥーッ!】
「い、良いでしょう!」
エールとバンディットに続いて、ボックさんは表へ出て行く。
完全な臨戦態勢に、俺が間に入る暇は全くなかった。
――こりゃまた大喧嘩になるな。
エールとボックさんは仲が良いのか、悪いのか良くわかんない。
だけど今後はなるべく騒ぎを起こさないよう、切に願う俺だった。
「マス、ター!」
何故か、スーが俺の腕に抱きついてきた。
「なに?」
「わたし、は、? マス、ターの呼び、かた!」
「えっ?」
「マス、ター、チート、どっち?」
――ああ、なるほど。スーは俺に
”マスターかチートかどっちで呼んでほしい”か聞いてるんだ。
俺はスーの頭をポンポンと撫でる。
そして迷わず、
「スーもマスターで宜しく! その方が俺は嬉しい!」
「わかり、ました!」
スーは元気よく答えてくれる。
――スーはにはやっぱり【マスター】って呼ばれたい。
そっちの方が庇護欲的な、なんかでしっくりくる!
『少年よ、君はロリコンとマザコンどっちなのかね? 全く、最近の若い者ときたら何でもかんでも、食いっ散らかして……うぐっ!?』
とりあえず煩いブレスさんにはまたまた黙ってもらう。
そんなこんなで、
大地の獣神グリーンレオのボックさんを迎えた、
俺の旅はまだまだ続くのであった。
★三章:万能薬とエルフと緑の国 終わり!
【次章予告】
●次の国:水の国ドラフトを目指すチート一行は
海で溺れていた二人の美少女を助ける。
助けた二人は大海の獣神ブルマーメイドのピルス、
そして疾風の獣神ローズフェニックスのランビックだった。
一行の前に現れるエヌ帝国主力艦隊提督兼砲魔獣将キジンガ―!
しかし彼は何故かフレンドリーにピルスへ話しかける。
一体水の国ドラフトで何が?
大会って一体?
努力、根性、そして友情勝利の青春章!
第四章【大会と二人の水着美少女と水の国】
どうぞお楽しみに!
【お知らせ】
HAHAHA!テイマーブレスだ!
ここまでの拝読Thanks!
もしシトラス=ライス氏の作品を気に入ってくれたなら、以下の作品も是非読んでみてくれたまえ!
同じような匂いがしてきっと満足出来るはずだ。どれも『完結済』だから安心して読めるぞ!
良ければよろしく頼む。【小説情報】から下へスクロールさせればすぐにみつかるぞ。
以上、テイマぁーブレぇす!からのお知らせであった!HAHAHA!
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不殺の銃で戦う少年と少女達のヒロイックファンタジー
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架空日本での「巨大ロボ」vs「怪獣」 そして少年と少女の心の交流
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