二章15:大逆転! チートとエールはコーンスターチを救う!
ブライトケイロンは俺を背中に乗せたまま、
巨大コボルトへ真っ直ぐ突き進んでゆく。
「スー、離れろッ!」
【ギャオオォォーンッ!】
それまで巨大コボルトに巻きついて動きを封じていた、
黒龍のスーが、飛び去ってゆく。
コ ボルトは急に拘束を解かれ、よろめいている。
その隙に俺は振り上げたバスターソードへ力を集中させた。
ブライトケイロンの全身から電撃が湧いて、バスターソードに収束してゆく。
【サセルカァー! ユケッ!】
体勢を立て直したコボルトが腕を突き出す。
すると、奴の周囲に浮かんでいた瓦礫が一斉に動き出して、
こっちへ向かって飛んでくる。
【グオオォォーッ!】
ブライトケイロンが、咆哮を上げた。
鬣から更に電撃が湧く。
それは、まるでバリアのようにブライトケイロンを包みこんだ。
バリアは次々と突き進んでくる瓦礫を粉砕し、ブライトケイロンには傷一つ付かない。
その隙に俺は、バスターソードの柄をより強く握りしめた。
【コシャクナ!】
巨大コボルトは刀を構え直し、
【シネェェェッ!」
を一気に振り落してくる。
その時、バスターソードに力が集まり切ったのか、
刀身が一層強い輝きを放った。
「そらっ!」
【ッ!!!】
片手で持ったバスターソードを横へ凪ぐ。
コボルトの刀の刀身はバスターソードの直撃を受けて、真っ二つに折れる。
コボルトの体勢が再び崩れた。
俺は両手でバスターソードの柄を掴み、一気に振り上げる。
ブライトケイロンもまた思いっきり飛び上がり、首を同じように振り上げた。
「ファイナルサンダースラッシュッ!」
【グオォォォーッ!】
ブライトケイロンの電撃を纏った角と、
俺のバスターソードが同時に巨大コボルトへ振り落された。
二つの金色に光る刃はコボルトを一瞬で真っ二つに切り裂く。
【ア、アニジャーッ!】
コボルトは爆発して、紫の塵となって消えた。
『少年! 皆が危ない! 早く裏世界から脱出するのだ! やり方は私が教える!』
そうブレスさんが叫ぶと、
不思議なことにどうすれば裏世界から脱出できるか分かった。
俺は光輝くバスターソードを逆手に持ち直した。
「いけぇーっ!」
勢いよくより巨大になったバスターソードを投げる。
するとバスターソードは壁も何も存在しない、空間に突き刺さった。
まるで壁があるかのように空間に罅が入る。
罅はすぐさま大きく広がって、空間を砕け散らせた。
その向こうにはギネース兵の猛攻に晒されているコーンスターチギルドのみんなの姿があった。
「スー、エール! みんなを助けるぞッ!」
【グオオォォーッ!】
【ギャオォォーン!】
俺の言葉に従って黒龍のスーと麒麟のエールは空間に空いた穴へ飛び込み、
表世界へ戻った。
【ギネース!】
【ギネース!】
【ギネース!】
スーとブライトケイロンが表世界の大地へ踏み込んだ途端、
ギネース兵が一斉に攻め寄ってくる。
「スー! ブレスだッ!」
俺が指示を出すと、スーは口を開き、目一杯に溜めた紫の炎を吐き出す。
紫の炎はあっという間に群がるギネース兵を飲み込んだ。
それでもギネース兵の進撃は止まらない。
【グルゥ……】
ブライトケイロンが唸りを上げて、
彼女が何を言っているのか分かった。
「分かった! 力を貸してくれエールッ!」
【グオォォォーッ!】
ブライトケイロンの咆哮が、地面を、空気を震わせた。
空間を割る際に無くなったエールのバスタソードが再び俺の手に握られる。
バスターソードが金色の壮絶な光を放って、元の人間が扱ってもおかしくない大きさに戻った。
俺はエールのバスターソードを片手にブライトケイロンから飛び降りた。
【ギネースッ!】
群がってくるギネース兵を見据えて、そして
「獣神! 雷鳴のブライトケイロンの力を見せてやる! ブゥライトォッ!」
刀身を地面へ叩きつける。
地面を割って、金色の光が物凄い勢いで吹き出した。
「サンダークラッシュッ!」
その輝きへ向けて、巨大なバスターソードを横へ凪いだ。
凪がれた金色の輝きはより一層膨らんで、地面の地層を抉りながら、
素早くギネース兵の大群へ向けて、突き進んでゆく。
【ギネェーーースッ!】
ギネース兵の叫びが聞こえたかと思うと、そこからは一瞬だった。
金色の輝きは迫っていた全てのギネース兵を一瞬で飲み込み、大地を抉る。
光が履けた先には既になんの存在もなく、
ただ焼けただれた岩肌がそこにあるだけだった。
「おのれ! 貴様良くも我が剣魔獣軍団をッ!」
「ッ!?」
鋭く、激しい殺意を感じた俺は反射的にバスターソードを掲げる。
イヌーギンの十字剣とバスターソードの間に火花が散った。
「諦めろ! お前にもう勝ち目はない!」
「ぬぐっ!?」
バスターソードを薙げば、イヌーギンの体が紙切れのように宙に舞う。
イヌーギンは空中で綺麗に身体を捻って、着地する。
しかし、着地した途端、膝を着いた。
奴の鎧の胸には僅かに紫電を帯びたバスターソードの切り傷が刻まれていた。
「お、おのれ……この屈辱忘れんぞ!」
イヌーギンはマントを翻して、姿を消す。
さっきまで騒がしかった戦場に一瞬の静寂が訪れる。
「「「ワァァァァァ! やったぞォォォォ!!!」」」
だけどすぐに俺の周りは歓声で包まれた。
みんな、勝利できたことに喜んで、叫びを上げている。
――よかった、みんな無事で……
だけど、視界の隅に気になることがあった。
【ギ、ギネ、ギネースゥ……】
勝利した人間の傍らでは、消滅は免れたものの、
酷い傷を負っている沢山のギネース兵がいた。
――確かにこいつらはエヌ帝国の魔獣だ。だけど……
するとテイマーブレスから僅かな光が湧いて出て、
俺の頭に流れ込んでくる。
――そっか、そういうこともできるんだ。
今、やりたいことができると確信した。
俺はエールのバスターソードを地面へ突き立てる。
『何をするのだ?』
俺はテイマーブレスを掲げて、願いを込めた。
「エターナルガトーッ!」
想いを込めて叫ぶと、テイマーブレスから光が溢れ出た。
その光は空に吹き上がり、雪のように舞う。
それは小さな飴玉に代わって、傷ついたギネース兵の口へ入ってゆく。
途端ギネース兵の傷が、まるで逆再生のように元へ戻ってゆく。
そして誰の口にも入らなかった飴玉は地面に落ちると溶けるように消える。
そこからは若々しい草木の新芽が沢山顔を出し始めた。
まるで傷ついた大地を癒すみたいに、エターナルガトーからでた飴玉は、
魔獣を、そして大地を次々と癒して行った。
『エクステイマーとエターナルガトーの合わせ技か。全く、君というやつは……』
少し呆れ気味といった具合のブレスさんの声が聞こえた。
「マズイですか?」
『その心意気は素晴らしいものだが、しかし……どうなっても知らんぞ……』
「チートッ!」
背中に凛とした声が響いて、心臓は大きく鳴り始めた。
鼓動を感じながら後ろを振り返ると、そこには顔を俯かせて、肩を震わせる
元の人間の姿に戻ったエールがいた。
――なんか、物凄く怒ってる?
そりゃ、怒るだろう。
だって勝つためとはいえ、俺はいきなりエールの……
エールはズンズンこっちへ進んでくる。
「あ、いや! さっきのは、だから!」
彼女は黙ったまま歩み寄ってきて、
そしていきなり俺の胸に飛び込んできた。
「エール!?」
「お前、本当は凄いやつなんだな」
「えっ?」
「ずっと★2って馬鹿にしててごめん。案外、ギルドの評価ってのも当てにならないんだな」
「……」
エールに褒められたことは正直嬉しい。
だけど、手放しでは喜べなかった。
俺は一旦、エールを胸から外す。
「エール、正直に話すよ」
「?」
「三番勝負からさっきの戦いまでの俺の力なんだけどさ。実はブレスさんに術で身体を強化して貰ってたんだ。本当の俺はギルドの評価通り★2しか無いよわっちぃ奴なんだ。ずっとエールのことを騙してたんだ。ごめんね……」
「それが? だから?」
エールは顔を真っ赤に染めながら、優しい笑顔を浮かべた。
「さっきあたしのこと命懸けで助けてくれたじゃん。あれだけでチートの本当の強さが伝わったよ。そんな勇気にさ……たぶん、やられちまったぜ、あたしはさ……」
エールは突然、少し離れると傅いた。
「雷鳴の獣神ブライトケイロンのエールはマスターに永遠の忠誠を誓うぜ! ……だ、だからさ……もうあたしは身も心もマスターのもん……だから……」
「エー、ちゃんッ!!」
そんな俺のエールの間へ人間に戻ったスーが割って入ってくる。
エールはゆっくりと立ち上がり、スーを見た。
「なんでスーがマスターのことを大好きなのかようやくわかったよ」
「エー、ちゃん……」
「その上で宣言するぜッ! たしかにあたしはスーのことも大好きだ。でもマスターはもっとだ。だから相手がスーだろうと誰だろうとあたしはこの想いに関しては一歩も引くつもりはないぜ!」
エールがそう強くスーへ向けて云う。
するとスーは何故か俺に抱きついてきた。
「マス、ター! エー、ちゃんと、わたし、どっち?」
スーは真剣な顔で問いかけてくる。
今度は横から、あったかい雰囲気を感じた。
「なぁ、マスター、聞かせてくれよ。あたしとスー、どっちが好みだ?」
何故かエールが腕に抱きついていた。
人生で初めての、二人の女の子に迫られてるこの状況。
正直、どう対処していいかわかんない。
「マス、ター!」
「答えてくれよ、マスター!」
「あ、あ、いや、だから!」
その時、スーとエールの体から光が溢れて、体がどんどん縮んでゆく。
気づくと、スーは黒のダックスフントに、
エールは逞しい彼女にピッタリなゴールデンレトリーバーに変化していた。
円な四つの目が、俺の方を見ている。
「そんなの……そんなの! 決められるわけないじゃないかぁ~!」
思わず犬になったスーとエールを抱きしめる。
モフモフな感触は抱きしめているだけで幸せで、ホント心が癒される。
【クゥ~!】
ダックスのスーは嬉しそうに擦り寄ってきて、
【ハッハッハッ!】
ゴールデンレトリーバーのエールは、ペロペロと俺の頬を舐め回してくる。
「スー、エール、擽ったいって! あははは!」
『全く君という奴は……人の姿の時でも素直に彼女たちの愛情を受け取れないのかね?』
呆れ気味のブレスさんの声。
――人の時じゃ、こんなことできませんって
【ギネース!】
「ッ!?」
突然、ギネース兵の声が聞こえて、身構える。
気が付くと俺の目の前には蠢く沢山のギネース兵と、そして、
「あ、兄者から参られよ!」
「何を言うか!お前から先へ行け!」
なんか倒したはずのウルフ兄弟がいた。
しかもちょっと顔が赤くて、モジモジしてる。
全く敵意を感じない。
「なんでウルフ兄弟が……?」
『さっき治癒能力を使ったじゃないか。だからウルフ兄弟も復活した。OK?』
「そ、そんなに効果強いんですかこれ!?」
『なにせ大獣神が直接渡した力だからな。治癒に関して言えば、最強クラスなのだ!』
「チート殿ッ!」
突然ウルフ兄弟のワーウルフの方が、
思いつめたような叫びを上げた。
「あ、はい!」
思わず背筋を伸ばして反応。
ウルフ兄弟は、ちょっと気色悪く手を取り合って、
「「我らウルフ兄弟と剣魔獣軍団は既にチート殿、あいやマスターのもの! 我らを殺すも、愛でるもあなた次第! そしてその愛を我らが魂にお与えください!」」
「あ、えっ?」
「行け! 剣魔獣軍団! マスターをお迎えするのだ!」
コボルトが叫ぶと
【ギネース!】
【ギネース!】
【ギネース!】
何故か、一斉にギネース兵が俺へ向けて動き出した。
物凄く気色悪く感じた俺は咄嗟に逃げ出す。
「な、なんだよ、これ!?」
いくら逃げてもウルフ兄弟とギネース兵は追っかけてくる。
『説明しよう! 治癒能力=エクステイマーなのだ。エクステイマーとは愛の力ということを忘れたか? つまり、少年に治癒をされた人間以外のあらゆる生物は君を愛するようになるのだ!』
「ま、マジっすか!?」
『だから私は先ほど”どうなっても知らんぞ”と言ったではないか。それに少年はスーの時にエクステイマーの能力を目の当たりにしているのだ。これぐらいの事態は想定できないのかね?』
「今更そんなこと言われても!!」
【ギネース!】
「「マスター!その愛を我が兄弟に!」」
【クゥーッ!】
【ハッ! ハッ! ハッ!】
ギネース兵、ウルフ兄弟に、ダックスのスーと、
ゴールデンレトリーバーのエールが必死に俺を追いかけてくる。
いくら逃げても、どんなに走っても、獣軍団は俺を追い掛け回してくる。
『HAHAHA! まさにハーレム! 羨ましい限りじゃないか!』
ブレスさんはそう云う始末。
「ハーレムじゃないですよ! こんなの! なんとかしてくださいよ!」
『無理だね! 私はあくまで……テイマぁーブレぇスッ! ナビゲートや説明、簡単な術はかけられるが、それら以外はただの役立たずさ、HAHAHAHA!」
「マジ使えねぇー!」
どんなに走っても獣軍団の追跡は終わらない。
――とんでもない力を授かっちゃった
「誰か助けてぇー!」
だけど俺の心からの願いは、あっという間に消えてなくなるのだった。
★二章:チェーンとヤンキーと光の国 終わり!
【次章予告】
●逃亡を図ったチートは緑の国ラガ―の森の中へ迷い込む。
彼はそこでエルフの美女・治癒士ボックに出会う。
エクステイマーの強力な力に困っていたチートは、ボックから治癒士の
知識学びたいと思い、その願いが聞き入れられる。
張り切るチートだったが、前世の悪夢が彼を苦しめていた。
そんな中緑の国ラガ―へ侵攻を開始するエヌ帝国闘魔獣軍団。
ラガ―に危機が迫った時、ボックは失われた力を目覚めさせた!
次回、第3章【万能薬とエルフと緑の国】
どうぞお楽しみに!
【お知らせ】
HAHAHA!テイマーブレスだ!
ここまでの拝読Thanks!
もしシトラス=ライス氏の作品を気に入ってくれたなら、以下の作品も是非読んでみてくれたまえ!
同じような匂いがしてきっと満足出来るはずだ。どれも『完結済』だから安心して読めるぞ!
良ければよろしく頼む。【小説情報】から下へスクロールさせればすぐにみつかるぞ。
以上、テイマぁーブレぇす!からのお知らせであった!HAHAHA!
★『ビーンズメーカ― ~荒野の豆鉄砲~】
不殺の銃で戦う少年と少女達のヒロイックファンタジー
★『アーマドギガス』
架空日本での「巨大ロボ」vs「怪獣」 そして少年と少女の心の交流
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異色席取りバトルコメディ




